
製薬企業が決算で公表した製品別売上高などをもとに、2024年度の国内売上高が50億円以上の医療用医薬品185品目をランキングしました。トップはMSDのがん免疫療法薬「キイトルーダ」で、2位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」。サノフィの抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」は40%増で1000億円を突破し、3位に浮上しました。
1000億円超えは6製品
医療用医薬品の国内売上高は、2年連続でMSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ」がトップとなりました。2024年5月に胃がんや胆道がんの1次治療に適応拡大したことに加え、24年度は薬価改定の影響を受けなかったこともあり、薬価ベースで前年度比16.3%増の1918億円(IQVIA調べ)を売り上げました。
2位は、売上高1330億円(15.1%増)の第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」。3位はサノフィの抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」で、アトピー性皮膚炎での処方が堅調に推移したほか、24年2月の慢性蕁麻疹への適応拡大も売り上げ拡大に貢献。同年11月には3度目の市場拡大再算定で薬価引き下げを受けたものの、前年比40.5%増の1218億円を売り上げました。
4位は小野薬品工業の抗PD-1抗体「オプジーボ」(1203億円、17.3%減)。市場拡大再算定の共連れによる薬価引き下げの影響を数量増でカバーし切れず、2桁減となりました。5位はアストラゼネカの肺がん治療薬「タグリッソ」(1111億円、3.7%増)で、6位は同社の抗PD-L1抗体「イミフィンジ」(1032億円、14.5%減)。イミフィンジも薬価引き下げの影響で2桁減収となっています。
今回のランキングで売上高1000億円を超えたのは6製品。前年2位の新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」(MSD)が935億円で1000億円製品から外れた一方、新たにデュピクセントが加わりました。
【注意事項】ランキングは▽国内製薬会社の25年3月期決算資料(一部24年12月期)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とワクチン。販売元と製造販売元がそれぞれ売り上げを公表している場合は販売元の数値を記載。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります。薬価ベースで売り上げを算出している製品(IQVIAのデータが該当)は、仕切価格をベースに算出している製品(国内製薬会社の決算発表が該当)より売り上げの額が大きくなるのが一般的です |
エンレストが初のトップ10
トップ3以外で2桁増となったのは、9位のSGLT2阻害薬「フォシーガ」(896億円、17.7%増)、10位の心不全・高血圧症治療薬「エンレスト」(799億円、45.0%増)、11位のSGLT2阻害薬「ジャディアンス」など。エンレストは、24年2月の小児心不全への適応拡大もあり、売上高は前年から250億円近く増加。昨年18位から大きく順位を上げました。
一方、オプジーボ、イミフィンジのほかにトップ20で売り上げを落としたのは、ラゲブリオ(27.0%減)や田辺三菱製薬の「ステラーラ」(13.2%減)など。ステラーラは薬価改定とバイオシミラーの参入が響きました。
マンジャロは前年比5倍の276億円
集計対象の185品目のうち、前年度からの伸びが10倍以上となったのは、エーザイのアルツハイマー病治療薬「レケンビ」(3542.1%増)と中外製薬の乳がん治療薬「フェスゴ」(3400.0%増)、田辺三菱製薬の5種混合ワクチン「ゴービック」(1187.6%増)。いずれも23年末から24年3月にかけて発売された製品で、前年度の販売期間が短かったこともあって大幅な伸びとなりました。597.4%増だったキッセイ薬品工業の透析そう痒治療薬「コルスバ」も同様です。
日本イーライリリーの糖尿病治療薬「マンジャロ」(23年4月発売)は403.2%増の276億円。大塚製薬のアトピー性皮膚炎治療薬「モイゼルト」(193.4%増、22年6月発売)、大鵬薬品工業の抗がん剤「リトゴビ」(163.4%増、23年9月発売)も2倍以上の伸びとなりました。
ツムラの漢方薬「防風通聖散」と「牛車腎気丸」はそれぞれ約50%の増加。24年4月の薬価改定で不採算品再算定の適用を受け、薬価が上昇したことが寄与しました。
一方、昨年から売り上げが半分以上減ったのは、武田薬品工業の高血圧症治療薬「アジルバ」(64.9%減)と日本新薬の血液がん治療薬「ビダーザ」(50.8%減)。薬価改定と後発品の浸透が響きました。リリーの「サインバルタ」(36.4%減)や協和キリンの「ジーラスタ」(35.7%減)なども、後発品やバイオシミラーの影響を受けました。
中外の乳がん治療薬「パージェタ」は、同「ハーセプチン」との皮下注合剤であるフェスゴの売り上げ拡大に伴い40.5%の減少となりました。
年間売上高50億円以上の全185品目のランキング
ここからは、2024年度に国内で50億円以上を売り上げた医療用医薬品185品目のランキングです。
【注意事項】ランキングは▽国内製薬会社の25年3月期決算資料(24年12月期、25年2月期の企業もあり)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とワクチン。販売元と製造販売元がそれぞれ売り上げを公表している場合は販売元の数値を記載。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
あわせて読みたい
関連キーワード
オススメの記事
-
キッセイ、米社から甲状腺眼症治療薬を導入/参天、緑内障・高眼圧症薬ネタルスジルメシル酸塩を申請 など|製薬業界きょうのニュースまとめ読み(2025年7月30日)
-
製薬業界 2025年下半期の転職市場トレンド予測―求人数は上半期から横ばいの見通し…メディカルやバイオベンチャーの研究などで募集活発
-
【工場探訪:くすりづくりの現場を歩く】中外製薬工業・宇都宮工場―日本最大級のバイオ医薬品製造施設はDXの先進地
-
【2025年版】国内製薬会社ランキング―トップ3は今年も武田・大塚・アステラス、海外好調で軒並み増収
-
【2025年版】製薬会社世界ランキング―トップ3はロシュ、メルク、ファイザー…リリーがトップ10入り
人気記事

【無料】製薬業界専門転職サポート