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田辺三菱製薬

米国進出へ10年越しの一歩 「国際創薬企業」への変貌は

2018/10/1 AnswersNews編集部 前田雄樹・亀田真由

2007年の合併以降、業績の停滞が続く田辺三菱製薬。多額のロイヤリティ収入をもたらした多発性硬化症治療薬「ジレニア」の特許切れが迫るなか、17年8月に米国で筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカヴァ」を発売。念願の米国進出を果たしました。長く続いた停滞を海外展開で打破できるか、正念場を迎えます。

「ラジカヴァ」がようやく拓いた米国市場

17年度、田辺三菱製薬の売上高は合併以来最高となる4339億円(前年度比2.3%増)に達しました。16年度からスタートした中期経営計画で掲げた4本柱の1つ、「米国事業展開」が好調な滑り出しを見せたためです。

増収の最大の要因は、8月に米国で発売したALS治療薬「ラジカヴァ」(日本製品名・ラジカット)。ALS治療薬としては米国で約20年ぶりの新薬となった同薬は、販売開始から約半年で123億円を売り上げ、18年8月には投与患者数が3000人を超えるなど順調に拡大しています。

さらに、17年10月にはイスラエルのニューロダーム社を買収しラジカヴァに続く米国事業の柱としてパーキンソン病治療薬を獲得。ステリック再生医科学研究所の買収では、炎症性腸疾患に対する核酸医薬をパイプラインに追加しました。米国事業の成長に向け、パイプラインの拡充を進めています。

海外市場の開拓は合併当初からの悲願。10年越しに、ようやくスタートラインに立ちました。

業績停滞の10年間 合併のシナジーは見えず

田辺三菱にとって合併後の10年間はまさに「停滞の10年」でした。

07年度から16年度の売上高成長率はわずか3.5%。当初に合併3年後の目標として掲げた「売上高4800億円・営業利益1000億円」という数字には、10年たった今も達していません。

田辺三菱製薬の業績推移の折れ線グラフ。売上高の合併3年後目標は、4,800億円。それに対して、2007年度(合併年度):4,094億円、2016年度:4,240億円、2017年度:4,339億円。営業利益の合併3年後目標は、1,000億円。それに対して2007年度(合併年度):725億円、2016年度:941億円、2017年度:773億円。

合併時、田辺三菱が掲げた基本戦略は「国際創薬企業の地位の早期確立」「国内市場でのプレゼンス向上」「ジェネリック事業・個別化医療への挑戦」の3つ。これらを通じて業績の拡大を図る方針でしたが、多くの想定外がそれを阻みました。

海外展開では、グローバル製品と位置付けていた自社パイプラインの開発を中止。国内では、薬価制度の見直しと後発品の普及で長期収載品が打撃を受けました。そこに追い打ちをかけたのが度重なる不祥事です。

10年、同社は子会社・バイファが製造していた遺伝子組換え人血清アルブミン製剤「メドウェイ注」で承認申請データに改ざんがあったとして薬事法(現・医薬品医療機器等法)に基づく行政処分(業務停止・改善命令)を受けました。さらに、11年、12年にも別の工場や子会社で品質管理の問題が浮上。13年にもメドウェイをめぐり行政処分を受け、対応に追われました。

信頼回復を優先せざるを得ない状況で、海外進出を目指す動きは当然ながら鈍りました。厚生労働省に提出した業務改善計画に沿った組織体制の改革など進め、ようやく米国進出にたどり着いたのが17年。合併の”シナジー”はまだ見えてきません。

立ち位置を支える確かな創薬力

こうした状況の中、田辺三菱を支えてきたのは、確かな創薬力です。

いずれも自社創製の多発性硬化症治療薬「ジレニア」とSGLT2阻害薬「インヴォカナ」は、それぞれスイス・ノバルティスと米・ヤンセンに導出し、ともにブロックバスターに成長。特にジレニアは15年度以降、年間500億円を超えるロイヤリティ収入をもたらし、田辺三菱の業績を支えました。

田辺三菱製薬の海外売上高の棒グラフとロイヤリティ収入折れ線グラフの推移の図。【海外売上高】2007年度:373億円、2011年度:283億円、2014年度:779億円、2017年度:1,129億円。【ジレニア】2011年度:56億円、2014年度:439億円、2017年度:577億円。【インヴォカナ】2014年度:98億円、2017年度:139億円。

ジレニア、インヴォカナはいずれも世界初の新規作用機序を持つ医薬品。田辺三菱の創薬力は海外でも高く評価されています。

国内では11年から15年の間に7種類の新薬を発売。17年度には、DPP-4阻害剤「テネリア」とSGLT2阻害剤「カナグル」の配合剤である「カナリア」を発売しました。15年度に導入した開発品も順調にステージを進めつつあり、腎性貧血を対象とする「バダデュスタット」は20年、遅発性ジスキネジアを対象とする「バルベナジン」は21年の承認を見込んでいます。

迫るジレニアクリフ 避けられない海外事業の拡大

田辺三菱にとって目下の課題となっているのが、19年に迫るジレニアの特許切れ。中期経営計画では、「国内の事業環境が一層厳しくなり、世界的に新薬候補品の獲得競争が激化する中、ジレニアクリフを克服し、米国を中心に成長する」とうたっています。薬価制度改革により国内事業も苦しくなる中、海外での収益拡大は避けて通ることはできません。

同社の海外売上高比率(ロイヤリティ収入を含む)は17年度時点で26%。中計ではこれを20年度に40%まで引き上げる目標を掲げています。海外売上高は18年度に315億円を見込むラジカヴァの拡大などで増加する見通しですが、中計で目指す「20年度に米国売上高800億円」を達成するには、第2、第3の弾が必要です。

ラジカヴァとともに米国事業の柱となるパーキンソン病治療剤「レボドパ/カルビドパ」(ニューロダーム買収で獲得)は、19年の発売を目指して開発に向けた準備を進めてきましたが、現在は開発計画の見直し中。一方、米FDA(食品医薬品局)からファストトラック指定を受けた皮膚科用剤「MT-7117」は臨床第2相試験が始まり、植物由来インフルエンザVLPワクチンも申請準備中です。パイプラインの拡大に向けて新たな買収も検討しています。

米国以外の海外展開も動き出しており、ラジカヴァは欧州やカナダで申請中。17年10月には日本のジェネリック事業をニプロに譲渡するなど、構造改革も進んでいます。

合併から10年がたち、ようやく踏み出した海外展開。目標とする海外売上比率40%を達成し、国際創薬企業の仲間入りを果たせるか。田辺三菱の挑戦は始まったばかりです。

 

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