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アステラス製薬

優等生が初の2年連続減収 2度目の崖を克服なるか

2018/10/18 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央

利益重視の効率的な経営で「製薬業界の優等生」と言われるアステラス製薬。05年に設立以来好調に業績を伸ばしてきたものの、17年度は合併後初の2年連続減収となりました。19年度には過活動膀胱治療薬「ベシケア」の特許切れも控えており、2度目のパテントクリフが目前に迫っています。

17年度は合併後初の2年連続減収

17年度のアステラス製薬の業績は、売上高が1兆3003億円(前年度比0.9%減)、営業利益が2133億円(18.2%減)と減収減益に沈みました。

減収となるのは、国内の薬価改定や為替の影響を受けた前年度に続き2年連続。05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラスが誕生以来、初めての連続減収です。

アステラス製薬の主な業績指標の推移の棒グラフ。【売上高】2016年度:13,117億円、2017年度:13,003億円(前年度比マイナス0.9パーセント)、2018年度予想:12,780億円(前年度比マイナス1.7パーセント)。【国内】2016年度:4,527億円、2017年度:3,834億円(前年度比マイナス15.3パーセント)、2018年度予想:3,653億円(前年度比マイナス4.7パーセント)。【ミカルディス】2016年度:932億円、2017年度:463億円(前年度比マイナス50.3パーセント)、2018年度予想:177億円(前年度比マイナス61.7パーセント)。【営業利益】2016年度:2,608億円、2017年度:2,133億円(前年度比マイナス18.2パーセント)、2018年度予想:2,650億円(前年度比24.3パーセント)。

主な要因は、国内の売り上げ減少です。17年度は薬価改定がない年にもかかわらず、国内の売上高は前年度を15.3%下回る3834億円に。前年度は国内医療用医薬品の売上高が第一三共、武田薬品工業に次ぐ3位でしたが、17年度は2つ順位を落とし5位となりました。

国内の最主力製品だったARB「ミカルディス」は17年6月に後発品が参入し、売り上げは463億円と前年度から半減。17年4月に長期収載品をLTLファーマ売却したことも響きました。

利益重視の「優等生」 収益力にも影

これまでアステラスが優等生と称されてきたゆえんは、盤石な収益基盤にあります。毎年確実に利益を生み出すことで、3000億円を上回る現預金を保持。外部資源の獲得にかかる費用も自己資金でまかなっており、無借金経営を続けています。12年度には営業利益で国内最大手の「武田超え」を達成しました。

収益力の高さを示すROE(自己資本利益率。一般的な基準では10~15%で優良企業とされる。)は、合併後に16.6%まで上昇。免疫抑制剤「プログラフ」と排尿障害改善薬「ハルナール」の特許切れで10年度は6.6%に落ち込みましたが、11年に発売した自社創製の過活動膀胱治療薬「ベタニス」(海外製品名・ミラベトリック/ベットミガ)と、12年に発売(米国)した前立腺がん治療薬「XTANDI」(日本製品名・イクスタンジ)の売り上げ拡大で、16年度には過去最高の17.2%を記録しました。

アステラス製薬のROEの推移の折れ線グラフ。

ところが、17年度のROEは前年度から4.2ポイント減の13.0%。売上高の減少が、収益力にも影響を及ぼしました。

19年度までに相次ぐ特許切れ 18年度も減収見込み

プログラフ、ハルナールの特許切れからV字回復を果たしたアステラスですが、次なるパテントクリフが目前に迫っています。

ブロックバスターとなった過活動膀胱治療薬「ベシケア」をはじめ、国内で主力の疼痛治療薬「セレコックス」、喘息・COPD治療薬「シムビコート」も19年度までに相次いで特許切れを迎えます。「大型製品の特許が切れる瞬間に穴を埋めるような新製品の導入は不可能」(安川健司社長)な状況で、さらなる減収は避けられそうにありません。18年度の売上高の予想は1兆2780億円で、3年ぶりに1兆3000億円台を下回る見通しです。

重点6品目はピーク時1兆円予想 成長軌道に回帰目指す

アステラスは19年度を業績の底と見ており、18~20年度の経営計画は、パテントクリフからの回復に主眼が置かれています。

力を入れているのは、XTANDIとベタニス/ミラベトリック/ベットミガの売り上げ最大化と、パイプラインに控える6つの重点後期開発品の発売。20年度には連結売上高を17年度の水準に戻し、再び成長軌道に乗せたい考えです。

XTANDIは早期の前立腺がんにも適応を広げ、ピーク時に4000~5000億円の売り上げを見込んでいます。18年7月に非転移性去勢抵抗性前立腺がんへの適応拡大が米国で承認。欧州でも申請中です。さらに2つの適応で臨床第3相(P3)試験が行われています。

アステラスは中計で、XTANDIに加え、更年期に伴う血管運動神経症状治療薬フェゾリネタント、急性骨髄性白血病(AML)治療薬ギルテリチニブなど6品目を重点後期開発品としと位置付けています。

中でもギルテリチニブは、日本で「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、18年9月に「ゾスパタ」の製品名で承認。米国でも申請中で、欧州やアジアではP3試験を行っています。アステラスは、後期重点開発品6品目で年間1兆円の売上高(10年以内のピーク時)を期待しています。

アステラス製薬の重点後期開発品の売上高予想と申請予定時期の表。【エンザルタミド】<ピーク時売上高:4,000~5,000億円>適応:非転移性去勢抵抗性前立腺がん、申請時期:申請中。適応:転移性ホルモン感受性前立腺がん、申請時期:19~20年度。適応:非転移性生化学的再発前立腺がん、申請時期:21年度~。【フェゾリネタント】<ピーク時売上高:2,000~3,000億円>適応:更年期に伴う血管運動神経症状、申請時期:21年度~。【zolbetuximab】<ピーク時売上高:1,000~2,000億円>適応:胃腺がんと食道胃接合腺がん、申請時期:21年度~。【enfortumab vedotin】<ピーク時売上高:500~1,000億円>適応:転移性尿路上皮がん、申請時期:19~20年度。【ギルテリニチブ】<ピーク時売上高:500~1,000億円>適応:AML(再発性・難治性)、申請時期:申請中。適応:AML(造血幹細胞移植後の維持療法)、申請時期:21年度~。適応:AML(寛解導入化学療法後の維持療法)、申請時期:21年度~。適応:AML(新規診断、寛解導入化学療法との併用)、申請時期:21年度~。【ロキサデュスタット】適応:慢性腎臓病の貧血透析期、申請時期:18年度(日)。適応:慢性腎臓病の貧血保存期、申請時期:19~20年度(日)。適応:慢性腎臓病の貧血透析・保存期、申請時期:19~20年度(欧)。

パテントクリフを前にリストラにも着手

組織体制の見直しにも余念がありません。パテントクリフを控え、4年ぶりとなる早期退職を行います。

18年度中に、子会社「アステラス営業サポート」「アステラスリサーチテクノロジー」の業務を終了し、「アステラス総合教育研究所」は事業を縮小。これら3社の従業員を対象に、600人の早期退職を募集します。あわせて、「アステラス分析科学研究所」を海外企業に売却。ほかにも業務プロセスの効率化などを進めることで、20年度には300億円以上の利益改善を見込んでいます。

2度目のパテントクリフも乗り越えることができるのか。「優等生」の真価が問われます。

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