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小野薬品工業

オプジーボの成功で変わる研究環境 手にした資金で次を生めるか

2019/3/11 AnswersNews編集部 前田雄樹・亀田真由

2018年、本庶佑・京都大特別教授のノーベル賞受賞で改めて注目を集めた小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(一般名・ニボルマブ)。本庶氏の研究成果から生まれた同薬は、高額批判による薬価引き下げを受けながらも、適応を広げて販売を拡大。オプジーボがもたらす資金を元手に、がん領域の強化を図っています。

薬価の影響乗り越え17年度は増収

小野薬品工業の17年度の業績は、売上高2618億円(前年度比7.0%増)、営業利益607億円(16.0%減)でした。代名詞ともいえるオプジーボは、数量ベースでは45%の大幅増だったものの、売り上げは13.1%減の901億円。17年2月に、薬価が50%引き下げられたことが響きました。国内では伸び悩んだ一方、ロイヤリティ収入は前年度比49.1%増の398億円と好調です。

オプジーボの適応拡大に向けた臨床試験で研究開発費は688億円(19.7%増)まで膨らみ、販管費も増加。ただし、16年度にあった米メルク(日本はMSD)からの訴訟関連収入がなくなった影響を除くと、実質的には増益(5.6%増)。薬価に翻弄されるオプジーボですが、小野薬品に大きな成長をもたらしています。

がん治療と小野薬品を変えたオプジーボ

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞による免疫抑制を阻害し、免疫細胞ががんを攻撃できるようにする薬剤。その作用機序から、さまざまながんに効果を示す可能性があると考えられており、手術、放射線治療、化学療法に続くがん治療の第4の柱として急速に普及しています。

オプジーボは、本庶氏の研究成果を世界に先駆けて日本で実用化したもので、14年に悪性黒色腫を対象に発売。15年末の非小細胞肺がんへの適応拡大を期に、売り上げは爆発的に拡大しました。現在は世界60カ国で販売されており、適応は日本で7つ、米国で8つに拡大。この間、売上高は約1300億円増加するなど、同社は大きく飛躍しました。

オプジーボの売上高推移と適応拡大の流れのグラフ。【2014年度】売上高:25億円。【2015年度】売上高:212億円。【2016年度】売上高:1030億円、ロイヤリティ:267億円。【2017年度】売上高:901億円、ロイヤリティ:398億円。【2018年度予想】売上高:900億円。<適応拡大>2014年7月:悪性黒色腫。2015年12月:非小細胞肺がん。2016年8月:腎細胞がん。2016年12月:ホジキンリンパ腫。2017年3月:頭頚部がん。2017年9月:胃がん。2018年8月:悪性胸膜中皮腫。

小野薬品を全く別の会社にしたと言ってもいいオプジーボですが、国内では薬価が高額だとして、これまでたびたび薬価が引き下げられています。18年11月には3度目となる再算定を受け、薬価は収載時から76.2%も下がりました。適応拡大などによる数量増でカバーしていますが、18年度のオプジーボの売り上げは900億円と横ばいを見込みます。

一方、適応拡大に向けた開発は続いており、食道がんや尿路上皮がんなど8つの適応で臨床第3相(P3)試験が進行中。ブリストル・マイヤーズスクイブの抗CTLA-4抗体「ヤーボイ」(イピリムマブ)との併用療法では、悪性黒色腫と腎細胞がんで承認されたほか、非小細胞肺がんなどでもP3試験が行われています。さらに、分子標的薬との併用療法の開発では、エーザイや武田薬品工業などと提携しています。

オプジーボの主な単剤・併用開発状況(国内)の表。適応症:食道胃接合部がんと食道がん、開発段階:単剤P3。適応症:食道がん、開発段階:単剤P3・併用P3。適応症:肝細胞がん、開発段階:単剤P3。適応症:非小細胞肺がん、開発段階:単剤承認・併用P3。適応症:小細胞肺がん、開発段階:単剤P3・併用P3。適応症:膠芽腫、開発段階:単剤P3。適応症:尿路上皮がん、開発段階:単剤P3・併用P3。適応症:卵巣がん、開発段階:単剤P3。適応症:悪性胸膜中皮腫、開発段階:単剤承認・併用P3。適応症:胃がん、開発段階:単剤承認・併用P3。適応症:頭頚部がん、開発段階:単剤承認・併用P3。適応症:大腸がん、開発段階:単剤P2/3。適応症:膵がん、開発段階:単剤P2・併用P2。適応症:多発性骨髄腫、開発段階:単剤P2。適応症:中枢神経系原発リンパ腫/精巣原発リンパ腫、開発段階:単剤P2。適応症:固形がん(子宮頸がん・子宮体がん・軟部肉腫)、開発段階:単剤P2。適応症:ウイルス陽性・陰性固形がん、開発段階:単剤P1/2・併用P1/2。

独特の研究体制がもたらした大型化

オプジーボは小野薬品にとって12年ぶりの自社創製新薬。いち早く画期的新薬の開発に成功できたのは、「化合物オリエント」という独自の開発体制があったからです。疾患領域を決めず、シーズとなる化合物をベースに治療薬への活用を考えるこの体制があったからこそ、長く医療者の間でも懐疑的だった免疫療法を実用化できました。

小野薬品はもともと売上高に占める研究開発費の割合が高く、17年度も26.3%と国内製薬会社の中でトップクラス。アカデミアへの出向などオープンイノベーションに約半世紀前から取り組んでおり、本庶氏の研究室にもPD-1分子の発見前から研究員を送り込んでいました。現在も国内外の研究機関と200件を超える共同研究が進んでおり、コンピュータ創薬技術や中分子化合物など新たな技術・知見を取り込みながら創薬研究を行っています。

がんの会社へ 拡大する投資と提携

開発リスクの高さと引き換えに、疾患領域を定めず研究開発を進めてきた小野薬品。「化合物オリエント」という基盤は大切にしつつも、今後は特にがん領域を強化していく考えを示しています。

免疫チェックポイント阻害薬は、世界で大手製薬会社が激しい開発・販売競争を繰り広げています。米メルクの抗PD-1抗体「キイトルーダ」が急速に売り上げを拡大しているほか、国内でも17~18年度に相次いで新薬が発売。各社がしのぎを削っている状況です。

国内で開発中の免疫チェックポイント阻害薬の表。<ニボルマブ(オプジーボ)>承認済みの主な適応:胃がん・腎細胞がん・ホジキンリンパ腫、国内発売日:2014年9月、社名:小野薬品工業・BMS。<イピリムマブ(ヤーボイ)>承認済みの主な適応:悪性黒色腫・腎細胞がん、国内発売日:2015年8月、社名:BMS・小野薬品工業。<ペムプロリズマブ(キイトルーダ)>承認済みの主な適応:非小細胞肺がん・高頻度マイクロサテライト不安定性がん、国内発売日:2017年2月、社名:MSD。<アベルマブ(バベンチオ)>承認済みの主な適応:メルケル細胞がん、国内発売日:2017年11月、社名:メルクセローノ・ファイザー。<アテゾリズマブ(テセントリク)>承認済みの主な適応:非小細胞肺がん、国内発売日:2018年4月、社名:中外製薬(ロシュ)。<デュルバルマブ(イミフィンジ)>承認済みの主な適応:非小細胞肺がん(ステージ3)、国内発売日:2018年8月、社名:アストラゼネカ。<トレメリムマブ>、社名:アストラゼネカ。

オプジーボはまだまだ拡大の余地はありますが、小野薬品は次を担う新薬の発売に向け、がん領域で外部提携を中心に開発投資を加速させています。

がん免疫療法の分野では、CAR-T細胞療法の開発にも参入。16年7月からベルギー・セリアドとNK(ナチュラルキラー)細胞NKG2Dを用いた治療法を、18年9月から米バイオベンチャーとiPS細胞由来の他家細胞を用いた治療法を共同研究しています。

さらに、米アレイ・バイオファーマから導入したMEK阻害薬「メクトビ」とBRAF阻害薬「ビラフトビ」は19年2月に発売。16年には、米オニキス・ファーマシューティカルズ(現アムジェン)から導入した多発性骨髄腫治療薬「カイプロリス」も発売しました。

提携によるがん領域の強化の表。【導入】詳細:抗CD4抗体の評価・ライセンス交渉、提携先:IDAC、発表:2016年5月。詳細:CAR-T細胞用法(NKR-2)の日韓台での開発。商業化、提携先:ベルギー・セリアド、発表:2016年7月。詳細:MEK阻害薬ビニメチニブとBRAF阻害薬エンコラフェニブの日韓での開発・商業化(2019年2月発売)、提携先:米アレイ、発表:2017年5月。詳細:XPO1阻害薬の日韓台・香港・ASEANでの開発・商業化、提携先:米かリオファーム、発表:2017年10月。詳細:Pol-theta阻害薬の日韓台・香港・マカオ・ASEANでの開発・商業化、提携先:カナダ・Repare、発表:2019年1月。【開発提携】詳細:オプジーボとレンビマの併用療法開発(肝細胞がん)、提携先:エーザイ、発表:2017年9月。詳細:オプジーボとcabozantinibの併用療法開発、提携先:武田薬品、発表:2018年8月。詳細:オプジーボとルカパリブの併用療法開発、提携先:米Clovis、発表:2018年8月。【創薬提携】詳細:抗がん剤初期創薬・がんバイオマーカー探索、提携先:国立がんセンター、発表:2016年9月。詳細:DNA標識ライブラリ技術を用いた新規低分子制御薬創薬、提携先:米X-Chem、発表:2017年3月。詳細:がn免疫領域での多重特異性抗体の創製、提携先:スイス・Numab、発表:2017年3月。詳細:iPS細胞由来他家CAR-T細胞治療薬の創薬、提携先:米Fate、発表:2018年9月。

18年12月には、長期収載品11品目を丸石製薬に継承。経営資源を新薬、特にがん領域の新薬開発に集中させています。オプジーボで手にした資金をいかにうまく活用して、次の新薬を生み出せるか。がんに強い会社を目指し、挑戦は続きます。

 

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