主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2021年11月22日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・創薬モダリティ別にまとめました。(昨年11月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|モダリティ編」はこちら)
バイオ医薬品 主要内資3割、外資5割
集計対象としたのは、内資系企業30社、外資系企業18社。2021年11月22日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを創薬モダリティ別にまとめました。(いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合があります。)
モダリティは、▽低分子化合物▽抗体医薬▽その他バイオ医薬品(タンパク製剤、ワクチンなど)▽核酸医薬▽細胞治療(医薬品医療機器等法の「細胞加工製品」に該当するもの)▽遺伝子治療(同法の「遺伝子治療用製品」に該当するもの)▽ペプチド医薬(インスリンを除く)▽その他・不明――の8つに分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。
集計対象とした48社のうち、主要内資系企業10社と主要外資系企業16社で新規有効成分に占めるモダリティごとの比率を算出したところ、いずれも「低分子化合物」の割合が最も大きく、主要内資では約50%が低分子化合物。一方、「抗体医薬」と「その他バイオ医薬品」の合計は、主要内資で31%だったのに対し、主要外資では47%となりました。
低分子以外のモダリティは国内でもここ5年ほどで大きく増加しており、日本製薬工業協会(製薬協)のシンクタンクである医薬産業政策研究所が英エバリュエートファーマのデータをもとに行った調査によると、今年1~8月に承認された医薬品の約半数が低分子以外のモダリティとなっています。
内資系企業30社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
売上高2500億円以上の大手・準大手企業では、国内開発品の48%が低分子化合物、38%がバイオ医薬品(「抗体医薬」「その他バイオ医薬品」)となりました。大塚ホールディングス(HD)やエーザイ、大日本住友製薬などは低分子が多め。一方、抗体薬物複合体(ADC)に注力する第一三共や、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の適応拡大を進める小野薬品工業のパイプラインはバイオ医薬品が多めとなっています。
新規のモダリティが比較的多いのは、武田薬品工業やアステラス製薬、第一三共など。アステラスは遺伝子治療と再生医療を重点領域に定めており、買収や共同開発を通じて複数の品目を開発しています。核酸医薬では、第一三共が先駆け審査指定制度の対象品目である「DS-5141」や新型コロナウイルス向けmRNAワクチンを開発中。武田もCAR-T細胞療法の開発を進めています。
売上高2500億円未満の中堅以下の企業では、開発品の66%が低分子。低分子以外のパイプラインを複数持っているのは、傘下のKMバイオロジクスでワクチン事業を手掛ける明治HDや、ライソゾーム病に対する酵素製剤を開発するJCRファーマ、細胞治療に力を入れているロート製薬などです。
外資系企業18社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
外資系企業では、国内パイプラインの約半数がバイオ医薬品。特に独自の抗体エンジニアリング技術を持つ中外製薬は、抗体医薬が開発品の73%を占めています。
自己免疫疾患を対象に抗体医薬を開発しているグラクソ・スミスクラインやサノフィ、UCBジャパンなどもパイプラインの半分以上が抗体医薬。ファイザー、MSD、ブリストル・マイヤーズスクイブ、アストラゼネカなど、がん免疫療法の抗体医薬を持っている企業もバイオ医薬品が多くなっています。ノボ・ノルディスクファーマでは、ペプチド医薬セマグルチドの適応拡大に向けて複数のプロジェクトが進行中です。
モダリティの多様化も進んでいて、ノバルティスやヤンセンファーマ、ブリストル、アムジェンなどが核酸医薬を開発中。ノバルティスとヤンセン、ブリストルはCAR-T細胞療法も手掛けています。