国内の主要製薬会社の2016年3月期決算が出そろいました。東証1部上場の主要企業の業績を集計すると、売上高は前期に比べ3.9%増加。営業利益は、前期赤字だった武田薬品工業が黒字転換したこともあり、前期比59.9%増の大幅増益となりました。
AnswersNewsでは、16年3月期を中心に各社の直近の決算を集計し、「売上高」「研究開発費」「海外売上高比率」「次期売上高予想」の4つの切り口でランキングを作成。東証1部上場の新薬メーカーに加え、その他の東証1部上場企業が手がける医薬品事業も対象としました。
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INDEX
売上高ランキング―上位陣には変動なし、塩野義がトップ10入り
売上高トップは武田薬品工業で、1兆8074億円。海外で販売する潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が好調で、1.7%の増収でした。一方、2位の大塚ホールディングスは、最主力品の抗精神病薬「エビリファイ」の特許切れが響き、8.1%の減収。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が伸びる3位アステラス製薬は10.1%の増収で、大塚HDとの差を詰めました。
「アバスチン」などの抗がん剤が軒並み好調な中外製薬は5000億円の大台が目前。前期11位だった塩野義製薬は、英ヴィーブ・ヘルスケアに導出した抗HIV薬などのロイヤリティー収入が1000億円を突破し、大正製薬ホールディングスを抜いて10位に順位を上げました。
前期から順位を2つ以上上げたのは、明治ホールディングス(医薬品事業は子会社Meiji Seika ファルマが展開)と、小野薬品工業。明治HDは主力の抗うつ薬「リフレックス」や後発医薬品が伸びたほか、15年2月に買収したインドの後発品企業メドライクの売り上げが加わったことで16.4%の大幅増収。前期16位から13位にランクアップしました。
小野薬品工業は、がん免疫療法剤「オプジーボ」が伸び、過去最高の業績に。売上高は18.1%増え、17位から15位に浮上しました。
営業利益トップはアステラス
営業利益1位はアステラスで、2490億円。前期営業赤字に転落した武田薬品は1308億円を確保し、黒字を回復しました。子会社や事業の売却益を計上した参天製薬やエーザイは大幅な増益。小野薬品も営業利益を倍増させました。
研究開発費ランキング…1000億円超は5社、大日本など2桁増
研究開発費のトップは、売上高首位の武田薬品。売上高の19.1%に当たる3459億円を投じました。武田薬品を含む上位5社は、研究開発費が1000億円を超えています。
前期に比べて研究開発費を大幅に増やしたのは、大日本住友製薬や参天製薬、持田製薬など。逆に、大塚ホールディングスや科研製薬は2桁の減少となりました。
海外売上高比率ランキング―1位アステラスは64%、準大手の上昇目立つ
売上高に占める海外売上高の割合は、アステラス製薬が63.8%でトップ。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が米国を中心に伸び、海外売上高は前期から17.0%増加。海外売上高比率も3.8ポイント増加上昇しました。
大日本住友製薬は、海外売上高比率が初めて50%を突破。抗精神病薬「ラツーダ」の売上高は北米で1000億円を超え、ブロックバスターに成長。海外売上高は23.0%増えました。
塩野義製薬は海外売上高を開示していませんが、「輸出・海外子会社」の売上高に、高脂血症治療薬「クレストール」と抗HIV薬のロイヤリティー収入を合算してAnswersNewsで算出。その結果、海外売上高は前期比43.8%の大幅増で、海外売上高比率は8.0ポイント増加しました。
国内苦戦の裏返し、円安も貢献
「エビリファイ」の特許切れで海外売上高比率を下げた大塚ホールディングスを除けば、各社とも軒並み海外売上高比率を上昇させました。各社ともグローバル品が好調ですが、海外売上高比率の上昇は国内市場での苦戦の裏返しであるとも言えます。
15年度は薬価改定のない年だったにも関わらず、大日本住友製薬は国内医療用医薬品の売上高が6.4%減。武田薬品も3.5%減少しました。国内で新製品が多くそろう第一三共でも2.9%増にとどまり、アステラスや塩野義製薬もほぼ横ばいでした。
円安も追い風になりました。例えばアステラスは円安効果で売上高を261億円積み増し。第一三共も129億円、大日本住友製薬も171億円の増収効果を受けました。
次期売上高予想ランキング―アステラスが2位に浮上、小野薬品が15位→12位に
2017年3月期は、薬価改定や円高の影響で減収を見込む企業が多くなっています。
17年3月期も武田薬品がトップをキープする見通しです。「エビリファイ」の売り上げが激減する大塚ホールディングスは3位に後退し、アステラス製薬が2位に浮上。海外事業が好調な大日本住友製薬が7位に順位を上げ、田辺三菱製薬が8位に下がります。
16年3月期に順位を大きく上げた小野薬品工業は、「オプジーボ」がさらに売り上げを拡大する見通しで、売上高は2500億円を突破すると予想。17年3月期は12位までランクアップする見込みです。一方、参天製薬と明治ホールディングス、久光製薬は、順位を1つずつ落とすと予想されます。
「アバスチン」が特例拡大再算定の対象となった中外製薬は、5000億円の大台を前に足踏みとなります。
営業利益では小野薬品が6位に
営業利益では、アステラスが引き続きトップ。武田薬品との差をさらに広げます。
上位陣では、大塚HDや第一三共、中外製薬などが大幅な営業減益を予想。一方、小野薬品は2倍以上の増益となり、営業利益ランキングでは6位にジャンプアップする見通しです。
【AnswersNews編集部が製薬会社を分析!】 |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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