製薬各社が決算で公表した製品別売上高などをもとに、2021年度の国内売上高が50億円以上の医療用医薬品187品目をランキングしました。トップ3は免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(MSD)、同「オプジーボ」(小野薬品工業)、抗がん剤「タグリッソ」(アストラゼネカ)で、昨年度と同じ顔ぶれ。上位20製品では、中外製薬の「テセントリク」や田辺三菱製薬の「ステラーラ」、日本ベーリンガーインゲルハイムの「オフェブ」などが売り上げを大きく伸ばしました。
オプジーボ、再算定でも売り上げ14%増
2021年度の国内医療用医薬品売上高のトップとなったのは、MSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」。薬価ベースで前年度から1.1%増の1195億円を売り上げ(IQVIA調べ)、3年連続の首位となりました。
2位は小野薬品工業の同「オプジーボ」で、仕切価格(医薬品卸への販売価格)ベースの売上高は前年度比13.8%増の1124億円。非小細胞肺がんの1次治療で普及が進んだほか、昨年11月に適応拡大の承認を取得した胃がんの1次治療でもシェアを急拡大させました。キイトルーダとオプジーボは昨年8月、中外製薬の同「テセントリク」の類似品として市場拡大再算定を受け、11.5%の薬価引き下げを受けましたが、販売数量の増加で補った形です。
3位はアストラゼネカの肺がん治療薬「タグリッソ」。EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの1次治療で処方シェアトップを維持し、薬価ベースで1037億円(前年度比9.1%増)を売り上げました。4位の消化性潰瘍治療薬「タケキャブ」(武田薬品工業)は、逆流性食道炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制で使用を広げ、946億円(13.6%増)を販売。5位は前年度比19.5%増となる925億円を売り上げた抗凝固薬「リクシアナ」(第一三共)で、昨年の9位から4つ順位を上げました。市場での売り上げシェアは39.3%まで拡大しています(22年1~3月期)。
なお、IQVIAが薬価ベースで集計した21年度の国内医療用医薬品売上高トップ10では、▽1位オプジーボ(1254億円、11.1%増)▽2位キイトルーダ(1195億円、1.1%増)▽3位タケキャブ(1140億円、13.0%増)▽4位リクシアナ(1044億円、18.7%増)▽5位タグリッソ(1037億円、9.1%増)――の順となっています。
ロナプリーブがトップ20入り
上位20製品をみると、中外の新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」が9位にランクイン。同薬は昨年7月に特例承認を受け、21年12月期に政府への販売額として774億円を計上しました。同社からは、テセントリクも65.9%増の622億円で13位にランクイン。肝細胞がんへの適応拡大により市場浸透が加速しました。
このほか、上位20製品で売り上げが2桁増となったのは、田辺三菱製薬の乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」(515億円、59.9%増)、日本ベーリンガーインゲルハイム(NBI)の抗線維化薬「オフェブ」(510億円、29.8%増)、アステラス製薬の抗がん剤「イクスタンジ」(472億円、17.3%増)など。
一方、売り上げを落としたのは5製品で、日本イーライリリーの抗うつ薬「サインバルタ」(501億円、21.4%減)や武田の高血圧症治療薬「アジルバ」(763億円、7.2%減)は大幅な売り上げ減。サインバルタは昨年6月の後発医薬品の参入が響きました。
「エンスプリング」7.5倍、「デエビゴ」6.4倍
集計対象となった187品目のうち、前年度からの増加率が最も大きかったのは、中外が2020年8月に発売した視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬「エンスプリング」。前年度比7.5倍の97億円を売り上げました。同年7月に発売された不眠症治療薬「デエビゴ」(エーザイ)は6.4倍、同年5月発売の抗がん剤「ベレキシブル」(小野)は3.0倍の売り上げ増となりました。
住友ファーマの抗精神病薬「ラツーダ」(188.1%増)や武田の抗うつ薬「トリンテリックス」(167.2%増)なども処方の拡大に伴い売り上げが大幅に増加。119.5%増となった第一三共の抗がん剤「エンハーツ」は、HER2陽性乳がんと胃がん(いずれも3次治療)で順調にシェアを伸ばしています。このほか、20年11月に慢性心不全、21年8月に慢性腎臓病への適応拡大が承認された「フォシーガ」(小野)や、21年4月に新型コロナの適応を取得した「オルミエント」(リリー)なども販売を伸ばしました。
反対に、売り上げの減少率が大きかったのは、エーザイの不眠症治療薬「ルネスタ」(50.8%減)や、アステラスの過活動膀胱治療薬「ベシケア」(45.9%減)、リリーの骨粗鬆症治療薬「フォルテオ」(39.7%減)など。ルネスタとベシケアには昨年、後発品が参入し、フォルテオにも19年にバイオシミラーが発売されています。
[ランキング]年間売上高50億円以上の187品目
ここからは、2021年度に国内で50億円以上を売り上げた医療用医薬品187品目のランキングです。
【注意事項】
ランキングは▽国内製薬会社の22年3月期(21年12月期、22年2月期の企業もあり)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とバイオシミラー、オーソライズド・ジェネリック。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります。薬価ベースで売り上げを算出している製品(IQVIAのデータが該当)は、仕切価格をベースに算出している製品(国内製薬会社の決算発表が該当)より売り上げの額が大きくなるのが一般的です。 |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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