主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2020年11月25日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・創薬モダリティ別にまとめました(2020年5月時点の情報をまとめた「疾患領域編」はこちら)。
外資系企業 バイオが全体の半数超
新たなモダリティの登場で、新薬開発のトレンドは変化しつつあります。
日本製薬工業協会(製薬協)のシンクタンクである医薬産業政策研究所の調査によると、今年9月時点でグローバルで開発中の新有効成分含有医薬品4881品目のモダリティは、▽低分子化合物64.1%▽抗体医薬(抗体薬物複合体を含む)18.6%▽核酸医薬2.9%▽遺伝子治療(ゲノム編集、腫瘍溶解性ウイルスなど)4.5%▽遺伝子細胞治療(CAR-T細胞療法など)4.3%▽細胞治療(間葉系幹細胞や細胞シートなど、遺伝子改変されていない細胞を使った治療)5.6%――。一方、すでに承認・発売されている2201品目では、9割超が低分子化合物です。
AnswersNewsが今回集計対象としたのは、内資系企業28社、外資系企業19社。2020年11月25日時点で各社がホームページなどで公表している国内開発パイプラインを創薬モダリティ別にまとめました。
モダリティは、▽低分子化合物▽抗体医薬▽その他バイオ医薬品(タンパク製剤、ワクチンなど)▽核酸医薬▽細胞治療(医薬品医療機器等法の「細胞加工製品」に該当するもの)▽遺伝子治療(同法の「遺伝子治療用製品」に該当するもの)▽その他・不明――の7つに分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。
集計対象とした47社のうち、主要内資系企業10社と外資系企業19社で新規有効成分のモダリティの比率を比較すると、外資系企業では、「抗体医薬」と「その他バイオ医薬品」が合わせて52.8%となった一方、主要内資企業では34.5%にとどまりました。「核酸医薬」「細胞治療」「遺伝子治療」の割合は、主要内資が計8.6%、外資は計3.7%でした。
内資系企業28社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
大手企業やそれに次ぐ準大手企業では、モダリティが多様化している様子がうかがえます。
武田薬品工業は、注力する消化器系疾患や希少疾患、血液疾患の領域でバイオ医薬品の開発が活発。抗体薬物複合体(ADC)に力を入れる第一三共や、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の適応拡大が進む小野薬品工業、免疫療法を中心にがん領域の強化を図るアステラス製薬も、抗体医薬品の比率が高くなっています。バイオを強みとする協和キリンも、パイプラインの半分以上がバイオ医薬品です。
一方、大塚ホールディングス(HD)、エーザイは低分子が多め。大日本住友製薬や塩野義製薬も低分子中心のパイプラインとなっています。
遺伝子治療や細胞治療では、第一三共が米カイト(現在は米ギリアド傘下)から導入したCAR-T細胞療法を申請中。武田や大塚HDもCAR-T細胞療法の開発を進めています。遺伝子治療と再生医療を重点領域に定めるアステラスも複数の品目がパイプラインにあり、大日本住友も再生医療の事業化に向けて研究を進めています。
他方、中堅以下の企業では開発品の約7割が低分子。低分子以外のパイプラインを複数持っているのは、帝人ファーマとJCRファーマだけです。
外資系企業19社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
外資系企業は、全体的にバイオ医薬品の割合が高め。特に、免疫チェックポイント阻害薬を持つ▽中外製薬▽MSD▽アストラゼネカ▽ブリストル・マイヤーズスクイブ――や、自己免疫疾患を対象とした抗体医薬を開発している▽ヤンセンファーマ▽ノバルティスファーマ▽アッヴィ▽日本イーライリリー――などは、抗体医薬が多くなっています。
糖尿病に対する注力するノボ・ノルディスクファーマや、がん免疫療法に使う融合タンパク製剤の開発を進めるメルクバイオファーマでは、抗体以外のバイオ医薬品がパイプラインの大部分を占めています。
細胞治療や遺伝子治療では、ノバルティスやセルジーン、ヤンセンがCAR-T細胞療法を開発中。中外製薬は、オンコリスバイオファーマから導入した腫瘍溶解性ウイルスを開発しています。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
・武田薬品工業
・アステラス製薬
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)
・第一三共
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・田辺三菱製薬
・塩野義製薬
・協和キリン
・小野薬品工業
・大正製薬ホールディングス
・参天製薬
・久光製薬
・キョーリン製薬ホールディングス(杏林製薬/キョーリンリメディオ)
・中外製薬