主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2020年5月1日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・疾患領域別にまとめました。
P3~申請のパイプラインが10を超えるのは17社
集計対象としたのは、内資系企業27社、外資系企業18社。2020年5月1日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを疾患領域別にまとめました。
疾患領域は、▽がん▽呼吸器▽循環器・代謝・腎▽消化器▽皮膚▽骨・関節▽その他免疫・炎症▽中枢神経・筋▽眼▽疼痛▽血液▽感染症・ワクチン▽その他――の13に分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。
集計対象とした45社のうち、臨床第3相(P3)試験から申請にかけてのパイプラインが10(新規有効成分と適応拡大の合計)を超える企業は、内資系6社・外資系11社の計17社。武田薬品工業やアステラス製薬といった国内大手のほか、ファイザーやノバルティスなど海外の大手が並びます。
「がん」や「免疫」が目立つ
疾患別に見てみると、パイプラインが最も豊富なのはがん領域。小野薬品工業やMSD、アストラゼネカなど、幅広いがん種への効果が期待されるがん免疫療法を開発中の企業でパイプラインの多さが目立ちます。
対象疾患の幅広さという点では、免疫系の疾患もパイプラインが豊富。アッヴィは抗TNFα抗体「ヒュミラ」やJAK阻害薬「リンヴォック」、抗IL-23抗体「スキリージ」の適応拡大で開発数が多くなっています。武田は抗α4β7インテグリン抗体「エンタイビオ」の適応拡大や短腸症候群治療薬teduglutideなどで注力領域である消化器領域のパイプラインが充実しています。
がん領域の開発数はここ数年で著しく拡大しました。医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出された薬効別の治験計画の届出件数を見てみると、2014年度から18年度にかけてがん領域の件数は約2倍に増加。一方、循環器領域や呼吸器領域は減少しつつあります。
内資系企業27社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
国内の大手製薬はいずれもがん領域に注力しており、そのことは各社のパイプラインからもよくわかります。がん免疫療法や抗体薬物複合体(ADC)の開発が活発で、特にアステラス製薬や大塚ホールディングス(HD)、第一三共、小野は早期のパイプラインを多く抱えています。
武田は、注力領域である消化器領域やシャイアー買収で獲得した血液疾患の開発が目立ちます。アステラスは神経・筋疾患や免疫・炎症の領域でP1~P2に多くの開発品を揃えているほか、大日本住友製薬は得意の中枢神経系領域で開発品が豊富。塩野義製薬やMeiji Seikaファルマ、富士フイルム富山化学は感染症・ワクチンのパイプラインが多くなっています。
パイプラインの数は大手・準大手と中堅以下で開きがありますが、中堅以下では▽帝人ファーマ▽日本新薬▽キッセイ薬品工業▽富士フイルム富山化学▽JCRファーマ▽マルホ――の6社は、新規有効成分で5つ以上の開発パイプラインを持っています。キッセイ薬品は申請間近の脊髄小脳変性症治療薬ロバチレリンなど希少疾病治療薬を開発。マルホはすべて皮膚領域です。
外資系企業18社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
外資系企業は、全体的に内資系企業と比べてパイプラインが豊富で、がん以外では「循環器・代謝・腎」「消化器」「皮膚」「骨・関節」といった領域が目立ちます。
「消化器」「皮膚」「骨・関節」といった領域が多くなっているのは、アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎・クローン病、関節リウマチといった免疫系の疾患を標的とした薬剤の開発が活発だからです。こうした疾患では、ファイザーやアッヴィ、日本イーライリリーなどが多くのパイプラインを抱えています。
一方、「循環器・代謝・腎」では、バイエル薬品やアストラゼネカ、ノボ ノルディスクファーマが複数のパイプラインを開発中。心血管疾患や糖尿病、腎臓病などのほか、サノフィは代謝性の希少疾患をターゲットとした開発を進めています。
(亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・アステラス製薬
・協和キリン
・武田薬品工業
・キョーリン製薬ホールディングス(杏林製薬/キョーリンリメディオ)
・久光製薬
・参天製薬
・エーザイ
・小野薬品工業
・大日本住友製薬
・第一三共
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)
・田辺三菱製薬
・大正製薬ホールディングス
・塩野義製薬