製薬企業が決算で公表した製品別売上高などをもとに、2023年度の国内売上高が50億円以上の医療用医薬品190品目をランキングしました。トップはMSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」で、2年ぶりに首位に返り咲き。2位は同社の新型コロナウイルス感染症治療薬「ラゲブリオ」で、昨年1位だった小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が3位。アストラゼネカの同「イミフィンジ」は前年から倍増し、1000億円を突破して4位に入りました。
1000億円超は6製品
2023年度に国内で最も売れた医療用医薬品は、MSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ」。薬価ベースで前年度比22.5%増の1649億円(IQVIA調べ)を売り上げ、2年ぶりに首位となりました。2位は同社の新型コロナ治療薬「ラゲブリオ」。同薬は22年9月に一般流通を開始し、前年4位の同「ベクルリー」(ギリアド・サイエンシズ)に代わって市場に浸透。1487億円(前年度比116.4%増)を売り上げました。
3位は、2.2%増の1455億円を売り上げた小野薬品工業の抗PD-1抗体「オプジーボ」。胃がんや食道がんの1次治療、食道がんの術後補助療法で使用が広がり、新規処方シェアはそれぞれ81%、45%、51%に達しています。
4位はアストラゼネカの抗PD-L1抗体「イミフィンジ」で、薬価ベースで前期比116.0%増の1207億円を売り上げました。22年末に承認を取得した胆道がんと肝細胞がんへの適応拡大が大きく貢献し、急速に売り上げを伸ばしています。アストラゼネカは6位の肺がん治療薬「タグリッソ」(1071億円、3.6%減)も1000億円を超えています。
5位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」(1156億円、9.9%増)。市場での売り上げシェアは47.2%に達しました。
1000億円の大台を超えたのは6製品。前年度から1製品増えました。
【注意事項】ランキングは▽国内製薬会社の24年3月期決算資料(一部23年12月期)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とワクチン、バイオシミラー(BS)、オーソライズド・ジェネリック(AG)。一般流通していない新型コロナ治療薬は除いています。販売元と製造販売元がそれぞれ売り上げを公表している場合は販売元の数値を記載。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります。薬価ベースで売り上げを算出している製品(IQVIAのデータが該当)は、仕切価格をベースに算出している製品(国内製薬会社の決算発表が該当)より売り上げの額が大きくなるのが一般的です。 |
デュピクセントとフォシーガ、初のトップ10入り
初めてトップ10に入ったのは、サノフィの抗IL-4/13受容体抗体「デュピクセント」(8位)と小野薬品のSGLT2阻害薬「フォシーガ」(10位)。デュピクセントの売上高は薬価ベースで866億円。アトピー性皮膚炎を中心に処方が増え、前年度から38.9%の伸びとなりました。フォシーガは、21年に追加された慢性腎臓病の適応で使用を広げ、34.7%増の761億円を販売。順位も昨年の14位から4つ上げました。
このほか上位20製品で2桁増となったのは、15位のSGLT2阻害薬「ジャディアンス」(592億円、32.3%増)や16位の抗がん剤「ベージニオ」(580億円、48.0%増)、18位の心不全・高血圧症治療薬「エンレスト」(551億円、96.8%増)など。ジャディアンスは心不全の適応で売り上げを増やしました。今年2月には慢性腎臓病への適応拡大も承認されており、売り上げ拡大に拍車がかかりそうです。エンレストは昨年8月に市場拡大再算定で15%の薬価引き下げを受けたものの、高血圧症の適応で処方を伸ばし、前年度のほぼ倍額を売り上げました。
一方、トップ20で前年から売り上げを落としたのは、タグリッソ(3.6%減)とバイエル薬品の抗凝固薬「イグザレルト」(774億円、3.6%減)、田辺三菱製薬の乾癬・炎症性腸疾患治療薬「ステラーラ」(653億円、1.3%減)、日本イーライリリーの抗がん剤「サイラムザ」(501億円、2.6%減)の4製品。後発医薬品が参入した武田薬品工業の高血圧症治療薬「アジルバ」や大塚製薬の利尿薬「サムスカ」などはトップ20から姿を消しました。
「イナビル」「タミフル」、流行拡大で需要増
集計対象となった190品目のうち、前年度からの伸び率が最も大きかったのは第一三共の抗インフルエンザウイルス薬「イナビル」で、売上高は前年度比17.7倍の159億円。中外製薬の同「タミフル」も前年度比9倍の99億円を売り上げました。23/24シーズンは早期に流行が始まり、患者数も多かったため、治療薬への需要も大きく増加しました。
キッセイ薬品工業が22年6月に発売した顕微鏡的多発血管炎/多発血管炎性肉芽腫症治療薬「タブネオス」は前年度から5倍。コントロール不十分な患者への処方を拡大させています。武田のADHD治療薬「インチュニブ」は、23年4月に塩野義製薬から日本でのライセンスを買い戻した影響で3.7倍。田辺三菱のALS治療薬「ラジカット」は、同年4月に発売した経口懸濁液が寄与し前年比2.5倍となりました。
一方、売り上げの減少率が最も大きかったのは、武田の高血圧症治療薬「アジルバ」。昨年6月に後発品が参入し、売り上げは53.9%減少しました。持田製薬の抗うつ薬「レクサプロ」(53.0%減)や大塚の利尿薬「サムスカ」(52.4%減)なども後発品の影響で売り上げを落としています。
リリーの2型糖尿病治療薬「トルリシティ」は、昨年3月から今年4月まで限定出荷を行った影響で、投与患者数が大幅に減少。売り上げは3割減となりました。
【ランキング】年間売上高50億円以上の190品目
ここからは、2023年度に国内で50億円以上を売り上げた医療用医薬品190品目のランキングです。
【注意事項】ランキングは▽国内製薬会社の24年3月期決算資料(23年12月期、24年2月期の企業もあり)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とワクチン、バイオシミラー(BS)、オーソライズド・ジェネリック(AG)。国内企業の一部製品には海外での販売分が含まれています。販売元と製造販売元がそれぞれ売り上げを公表している場合は販売元の数値を記載。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります。 |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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