国内の主要製薬企業の2022年度決算を、さまざまな角度からチャートを使って解説します。
【チャートで見る】国内製薬2022年度決算
(1)売り上げ・利益 |
35社中17社が増収増益、減収減益は9社
東証プライム上場の主な製薬企業35社の2022年度(22年9月期、22年12月期、23年2月期、23年3月期)決算は、およそ半数の17社が増収増益となりました。
前年度比で売上高の伸び率が最も大きかったのは、38.8%増となった田辺三菱製薬。営業利益が前年度赤字で伸び率が算出できないため上のチャートには記載されていませんが、スイス・ノバルティスとの係争で収益認識できていなかった多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤリティを一括計上し、営業利益も黒字に転換しました。
増収率で田辺三菱に続いたのは、塩野義製薬(27.3%増)、東和薬品(26.2%増)、中外製薬(26.0%増)、小野薬品工業(23.8%増)、第一三共(22.4%増)。塩野義は新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」が貢献し、小野薬品や第一三共は主力の抗がん剤が好調でした。
営業利益の伸び率が最も大きかったのは65.1%増の第一三共で、ゼリア新薬工業(41.6%増)、小野薬品(37.6%増)、塩野義(35.1%増)、協和キリン(32.0%増)と続きました。ゼリア新薬は好調な海外事業が利益拡大に貢献。伸び率は算出不能ですが、田辺三菱とサワイグループホールディングス(HD)は前年度の赤字から黒字に転じました。
一方、減収減益となったのは9社。エーザイは前年度に提携先からの契約一時金を計上した反動で25.5%の営業減益となり、帝人や持田製薬は主力品への後発医薬品参入が影響。JCRファーマはアストラゼネカから受託していた新型コロナワクチンの製造を終了したことで売り上げ・利益とも大幅に前年度を下回りました。
営業利益率 中外42%、塩野義35%
営業利益率が最も高かったのは42.3%の中外製薬。2位は塩野義(34.9%)、3位は小野薬品(31.7%)で、以下、協和キリン(21.8%)、日本新薬(20.8%)と続いています。
売上高5000億円超の大手8社では、武田、中外、田辺三菱を除く5社が営業利益率10%を下回っており、住友ファーマは減損損失の計上によって営業赤字に転落。営業赤字となった企業は同社を含めて全体で5社あり、例年に比べて目立ちました。
円安影響、武田4866億円
22年度の決算は、海外事業の比重が大きい大手を中心に円安の影響を大きく受けました。
武田薬品工業は為替変動によって売上高でプラス4866億円、営業利益でプラス386億円の影響があり、アステラス製薬も売上高で1644億円、コア営業利益で401億円のプラス効果がありました。武田薬品は12.8%の増収、6.4%の営業増益となりましたが、為替の影響を除くと売上高は0.8%減、営業利益は1.8%減となります。
一方、円安は海外での費用増につながることもあり、第一三共は65億円、エーザイは75億円の減益要因となりました。