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国内製薬23年3月期、営業赤字の企業が増加…中堅企業、事業環境の悪化が収益直撃

更新日

穴迫励二

国内製薬企業の2023年3月期決算が出そろいました。今回の決算発表で目を引いたのは、営業利益が赤字となった企業が例年に比べて多かったことです。減損損失やマイルストン収入の期ずれといった個々の事情がある一方、大型製品の特許切れや薬価改定による原価率上昇など、構造的な要因が収益を圧迫しています。

 

 

住友ファーマ、多額の減損響く

開示された決算を全体的に眺めてみると、主力製品の成長と円安を背景に大手の海外事業が拡大したことで売上高は前期から2桁増となった一方、営業利益はほぼ横ばい。医療用医薬品事業で営業赤字を計上した企業が6社に上りました。過去をさかのぼってみると、15年3月期に武田薬品工業が糖尿病治療薬「アクトス」の発がんリスクをめぐる訴訟の和解金支払いで1239億円の赤字となったことが目立つものの、今回のようなケースは近年では初めてです。

 

【23年3月期決算で営業赤字となった企業】(単位:百万円)<社名/23年3月期/24年3月期予想>住友ファーマ/▲76,979/▲78,000/コアベース/16,364/▲62,000|大正製薬HD(医薬事業)/▲4,513/▲7,900|参天製薬/▲3,090/32,000/コアベース/44,242/46,000|キッセイ薬品工業/▲1,129/4,200|日本ケミファ/▲241/200|ヤクルト本社(医薬品製造販売事業)/▲192/ー|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

営業赤字となった企業を見ていくと、住友ファーマは769億7900万円の損失を計上。最大の要因は20年に米国で発売したパーキンソン病治療薬「キンモビ」の不振です。当初はピーク時に5億ドル規模の売り上げを期待していましたが、実際は20年度200万ドル、21年度も500万ドルと低迷。収益予想を見直した結果、554億円の減損損失の計上を余儀なくされました。減損損失などの非経常的な損益を除いたコアベースでは営業利益163億円を確保しましたが、それでも利益率は2.9%にとどまります。

 

深刻なのは今期で、屋台骨として業績を支えてきた抗精神病薬「ラツーダ」の特許切れが直撃し、フルベースで780億円、コアベースでも620億円の営業赤字を予想。野村博社長が「2年連続の(コア営業利益の)赤字はなんとしても避けたい」と話すように、25年3月期に黒字転換できるかが勝負で、米国で販売する「基幹3製品」(過活動膀胱治療薬「ジェムテサ」、前立腺がん治療薬「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「マイフェンブリー」)に業績回復を託しますが、会社側が示す成長予測にはアナリストから疑問の声も聞かれます。

 

関連記事:ラツーダクリフに直面する住友ファーマ、中計で描いた「V字回復」の現実味

 

大正製薬HDも赤字拡大

大正製薬ホールディングスは、医療用医薬品を扱う医薬事業が43億1300万円の営業赤字。22年3月期(13億1900万円の赤字)に続き、2期連続で利益を出せていません。医薬事業の売上高はここ数年で急激に減っており、23年3月期は全体の12.5%まで低下しました。

 

今期は、抗リウマチ薬「ナノゾラ」や、中外製薬から承継した骨粗鬆治療薬「ボンビバ」の貢献で7.0%の増収を見込みますが、営業赤字は過去最大の79億円を予想しています。パイプラインのうち高リン血症と不眠症の適応を目指す2品目が開発の佳境を迎えており、「投資が増大するここ1~2年は非常に厳しい状況」(北谷脩取締役)。黒字化のめどは立っていません。

 

関連記事:大正製薬HD、7年ぶり新薬「ナノゾラ」で医薬事業立て直しなるか

 

ヤクルト本社、事業継続の判断迫られる局面に

事業規模が小さい中堅クラスでは、経営環境の悪化にあらがえないケースも出ていています。後発医薬品が主体の日本ケミファは、薬価改定による原価率の悪化が利益を圧迫しました。今期は2億円の黒字を予想していますが、まさにギリギリのライン。医療用医薬品の収益は毎年改定の影響を跳ね返すことができず、診断機器・試薬の販売や受託試験事業でどうにか帳尻をあわせる状況です。

 

ヤクルト本社は、事業継続の可否を判断する局面に立たされています。主力の抗がん剤「エルプラット」をはじめ、製品の販売は低調で、業績浮揚の見通しは立っていません。全体の売り上げに占める医薬品製造販売事業部門の割合は2.6%まで下がり、同部門の業績は今期から化粧品やプロ野球興行などとともに「その他事業部門」に組み込まれることになりました。同社は医薬品事業の将来について「あらゆる可能性を検討している」としています。

 

収益確保、一層厳しく

このほか、参天製薬も買収した米アイバンスの業績不振で減損損失を計上。構造改革費用もかさんで30億9000万円の営業赤字、149億4800万円の最終赤字となりました。ただ、売上高は過去最高を更新し、コアベースの営業利益は442億円を確保。今期の営業利益はコアベースで460億円、フルベースで320億円を見込んでいます。キッセイ薬品工業の営業赤字はマイルストン収入の期ずれが主な要因ですが、原価率は当初の予想より悪化して着地しました。22年3月期も14億円の営業赤字を出しており、2期連続です。

 

関連記事:突然の社長辞任から半年あまり…参天製薬、前社長の“負の遺産”米国事業の立て直しは

 

後発品を含め、中堅企業では薬価改定による利幅の縮小と原価率の上昇が利益を圧迫しています。これらマイナス要因の影響を吸収できる成長ドライバーを持てなければ、今後、収益確保はより一層難しくなりそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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