JCR、てんかん薬の開発・商業化でイタリア企業と提携…最大657億円のマイルストン
JCRファーマは5月11日、同社の血液脳関門通過技術を適用したてんかん向け生物学的治療薬の開発・商業化で、イタリアのアンジェリーニファーマと提携したと発表した。両社はINDに向けた開発で協業。アンジェリーニは臨床開発を進め、日本以外の国で商業化する独占的ライセンスのオプション権を取得する。JCRはアンジェリーニから研究費の償還を受け、契約一時金を受領。研究開発と販売のマイルストンとして最大5億550万ドル(約657億円)を受け取るほか、売上高に応じたロイヤリティを受け取る権利を持つ。
大塚「レキサルティ」認知症アジテーションへの適応拡大が米国で承認
大塚製薬は5月11日、抗精神病薬「レキサルティ」(一般名・ブレクスピプラゾール)について、米国で「アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション)」への適応拡大が承認されたと発表した。米国で同適応を持つ初の抗精神病薬となる。承認は、プラセボとの比較で統計学的に有意な症状改善を示した2本の臨床第3相(P3)試験のデータに基づく。
沢井製薬、澤井社長が代表権返上し副会長に「業界活動に専念」
沢井製薬は5月11日、澤井健造社長が代表権のない取締役副会長に就任し、後任に木村元彦常務執行役員生産本部長が昇格する人事を発表した。人事は6月27日付。澤井氏は持株会社サワイグループホールディングス(HD)の代表取締役副会長も退く。11日のHDの決算説明会で澤井氏は「ジェネリック医薬品ビジネスを持続可能なものとするための業界活動に専念する」と述べた。HDでは末吉一彦社長も退任し、澤井光郎会長が社長を兼ねる。代表取締役を1人にすることで意思決定の迅速化を狙う。
「レキスキャン」特許訴訟、控訴審がアステラスの再審査請願却下
アステラス製薬は5月11日、米国で販売している心機能検査補助剤「レキスキャン」に関する特許訴訟で、米連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が控訴審を正式に終了する最終判決を出したと発表した。アステラスは同薬の特許切れ前に後発医薬品の承認申請を行った米ホスピーラを提訴したが、一審・デラウエア州連邦地裁判決は特許侵害を否定。二審のCAFCも地裁の判断を支持した。アステラスは判決を不服としてCAFCに再審査の請願と大法廷での再審査の請願を提出したが、却下された。
田辺三菱、ALS薬「ラジカヴァ」経口剤がスイスで承認
田辺三菱製薬は5月11日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカヴァ」(エダラボン)の経口懸濁剤がスイスで承認されたと発表した。ラジカヴァ経口懸濁剤の承認は、米国、カナダ、日本に続いて4カ国目。
杏林製薬が新中計、25年度まで年平均2%の売上高成長
杏林製薬は5月11日、2023~25年度の中期経営計画を発表した。年平均2%以上の売上高成長を目指し、研究開発費控除前営業利益の売上高比率を16%以上に引き上げる。中計は23~32年度の長期ビジョンの第1段階の位置付け。新薬創出力や導入品獲得力の強化などに取り組む。
決算
武田薬品工業(2023年3月期、5月11日発表)
売上収益4兆274億7800万円(前期比12.8%増)、営業利益4905億500万円(6.4%増)。前期比34.7%増の7027億円を売り上げた潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」や、40.4%増の4593億円を販売したADHD治療薬「ビバンセ」など、主力品が好調だった。日本の売上収益は22.3%減の5120億円。前年に糖尿病治療薬の譲渡額を計上した反動で減収となった。24年3月期の業績予想は売上収益3兆8400億円(4.7%減)、営業利益3490億円(28.8%減)。「ビバンセ」(米国)や高血圧症治療薬「アジルバ」(日本)の特許切れと、新型コロナウイルスワクチンの収益貢献がなくなることが響く。
参天製薬(2023年3月期、5月11日発表)
売上収益2790億3700万円(前期比4.8%増)、営業利益30億9000万円の赤字(前期は358億8600万円の黒字)。昨年11月に改良製剤を投入した角結膜疾患治療薬「ジクアス」や抗アレルギー薬「アレジオン」などが伸び、日本の医療用医薬品は前期比1.9%の増収。新型コロナウイルスの影響を受けた中国を除くアジアやEMEAも主力品が堅調に推移した。一方、利益は米子会社や開発品に関する減損損失の計上によって各段階で赤字となり、最終利益は149億4800万円の赤字を計上した。24年3月期は売上収益2730億円(2.2%減)、営業利益320億円を予想している。
サワイグループHD(2023年3月期、5月11日発表)
売上収益2003億4400万円(前期比3.4%増)、営業利益169億8400万円(前期は358億8800万円の赤字)。国内で21年度以降に発売した新製品が収益を支え、経費削減によって米国事業も黒字化した。24年3月期は売上収益2172億円(8.4%増)、営業利益151億円(11.1%減)を予想。原材料価格の上昇や、生産能力増強・新規事業の先行コスト増加が利益を圧迫する。
明治HD(2023年3月期、5月11日発表)
医薬品セグメントの売上高は1972億円(前期比4.9%増)、営業利益217億円(16.4%増)。国内医薬品事業は抗菌薬「スルバシリン」や抗アレルギー薬「ビラノア」が売り上げを伸ばし、前期比10.4%増の1001億円。受託製造事業を行うインド子会社の増収などが寄与した海外医薬品事業も27.4%の増収と好調だった。24年3月期の医薬品セグメントの業績予想は、売上高2155億円(9.2%増)、営業利益250億円(15.1%増)。申請中の新型コロナウイルスワクチン「ARCT-154」は下期の業績貢献を見込む。
帝人(2023年3月期、5月11日発表)
ヘルスケアセグメントの売上高は1524億円(前期比13.0%減)、営業利益235億円(45.7%減)。後発医薬品が参入した痛風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」の売上高が前期を243億円下回る145億円に落ち込んだ。24年3月期はヘルスエアセグメントで売上高1400億円(8.1%減)、営業利益165億円(29.8%減)を予想。引き続きフェブリクが後発品の影響を受ける。
日本新薬(2023年3月期、5月11日発表)
売上収益1441億7500万円(前期比4.9%増)、営業利益300億4900万円(8.8%減)。肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」(105億4300万円、25.5%増)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(143億4100万円、85.0%増)などが伸びた一方、前期に優先審査バウチャーの売却収入を計上した反動で減益となった。24年3月期は売上収益1450億円(0.5%増)、営業利益320億円(6.5%増)を見込む。
杏林製薬(2023年3月期、5月11日発表)
売上高1132億7000万円(前期比7.3%増)、営業利益51億2300万円(2.3%増)。過活動膀胱治療薬「ベオーバ」(49.8%増の129億円)や抗アレルギー薬「デザレックス」(20.6%増の85億円)などが伸びた。24年3月期の業績予想は売上高1162億円(2.6%増)、営業利益60億円(17.1%増)。
ゼリア新薬工業(2023年3月期、5月11日発表)
売上高683億8300万円(前期比14.9%増)、営業利益90億1400万円(41.6%増)。医療用医薬品事業の売上高は431億4500万円(16.6%増)。海外で潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」や炎症性腸疾患治療薬「エントコート」などが好調だった。24年3月期の業績予想は売上高730億円(6.8%増)、営業利益91億円(0.9%増)。
あすか製薬HD(2023年3月期、5月11日発表)
売上高604億6100万円(前期比6.8%増)、営業利益51億800万円(6.5%増)。子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「レルミナ」などが好調だった。24年3月期は売上高620億円(2.5%増)、営業利益54億円(5.7%)を見込む。
JCRファーマ(2023年3月期、5月11日発表)
売上高343億4300万円(前期比32.8%減)、営業利益49億7500万円(75.0%減)。アストラゼネカからの新型コロナウイルスワクチン原液の受託製造が終了したことが影響した。24年3月期は売上高369億円(7.4%増)、営業利益56億円(12.5%増)を予想している。
大正製薬HD(2023年3月期、5月11日発表)
売上高3013億8100万円(前期比12.4%増)、営業利益230億1800万円(114.3%増)。海外市場を中心にセルフメディケーション事業が好調だったが、医療用医薬品を含む医薬事業は前期比2.3%減の377億円にとどまった。24年3月期は売上高3145億円(4.4%増)、営業利益185億円(19.6%減)を見込んでおり、医薬事業は7.0%増の403億円を計画している。
富士製薬工業(2022年10月~23年3月期、5月11日発表)
売上高192億2500万円(前年同期比8.5%増)、営業利益18億2400万円(32.7%減)。不妊治療の保険適用などを背景に、女性医療領域の製品が伸びたが、販管費の増加が利益を圧迫した。23年9月期の通期業績予想(売上高433億1100万円、営業利益40億4800万円)は据え置いた。