
(写真:ロイター)
2025年5月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】アッヴィの抗c-Met ADC「Emrelis」やモデルナの次世代コロナワクチンなど
がん
Avmapki Fakzynja Co-Pack|米Verastem Oncology
「Avmapki Fakzynja Co-Pack」は、中外製薬が創製したRAF/MEK阻害薬「Avmapki」(一般名・avutometinib)と、ファイザーが創製したFAK阻害薬「Fakzynja」(defactinib)の配合パック。「KRAS変異陽性の再発低悪性度漿液性卵巣がん」の適応で迅速承認を受けました。RAF/MEKの阻害によって起こるFAK(薬剤耐性の主要な仲介因子)の活性化をFAK阻害薬で抑え、抗腫瘍効果を発揮します。日本でも同適応で2剤の併用療法の臨床第2相(P2)試験が進行中です。
Emrelis|米アッヴィ
「Emrelis」(telisotuzumab vedotin)は、アッヴィ創製の抗c-Met抗体薬物複合体(ADC)。「c-Metタンパク過剰発現を伴う進行非小細胞肺がん(NSCLC)」の適応で、P2試験の結果をもとに迅速承認されました。対象は、全身療法による前治療を受けた局所進行または転移性の非扁平上皮NSCLC成人患者。進行性EGFR野生型の非扁平上皮NSCLCでは、患者の約25%にc-Metタンパク過剰発現が認められますが、予後不良で治療選択肢も限られます。現在は検証的P3試験が進行中で、日本も同試験に参加しています。
眼
Tryptyr|スイス・アルコン
「Tryptyr」(acoltremon)は、ドライアイ治療薬。ファースト・イン・クラスのTRPM8受容体アゴニストで、角膜の感覚神経を刺激して自然な涙の産生を迅速に増加させます。P3試験では、早ければ投与開始1日目から涙の産生を示しました。
ワクチン
Nuvaxovid|米ノババックス
新型コロナウイルスワクチン「Nuvaxovid」は、米国で正式承認を取得しました。65歳以上の成人と、重症化リスクを高める基礎疾患を持つ12~64歳が対象。同ワクチンは2022年7月に緊急使用許可を得ています。欧州や日本でも承認済みです。ノババックスは仏サノフィと新型コロナ・インフルエンザ混合ワクチンの共同開発に関するライセンス契約を結んでおり、同契約に基づき米国での今後のNuvaxovidの商業化はサノフィが行う予定です。
mNEXSPIKE|米モデルナ
「mNEXSPIKE」は、米モデルナの次世代新型コロナ向けmRNAワクチン。対象は、65歳以上の成人とCDCの定義する基礎疾患を有する12~64歳の個人。約1万1400人が参加したP3試験では、モデルナの既存のmRNAワクチン「Spikevax」に対する非劣性が確認されました。日本ではP3試験段階にあります。
【適応拡大】英GSK「Nucala」のCOPDなど
がん
Welireg|米メルク
HIF-2α阻害薬「Welireg」(belzutifan)は、「局所進行、切除不能または転移性の褐色細胞腫または傍神経節腫(パラガングリオ―マ)」に適応拡大しました。同薬は、米国で21年にフォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍に対する治療薬として承認。23年に腎細胞がんに適応拡大しました。日本ではこの2つの適応で申請中です。
Zynyz|米インサイト
抗PD-1抗体「Zynyz」(retifanlimab)は、進行肛門がんの1次治療に適応拡大。承認されたのは、▽手術不能・局所進行または転移性の肛門管扁平上皮がん(SCAC)患者に対するプラチナベース化学療法carboplatin、paclitaxelとの併用療法▽プラチナベース化学療法に不耐または治療中に進展した、局所進行または転移性SCAC患者に対する単剤療法――。同薬は米国で23年、欧州で24年にメルケル細胞がん治療薬として承認。欧州と日本では現在、肛門がんの適応で申請中です。
その他
[眼] Susvimo|米ジェネンテック
眼科用VEGF阻害薬ranibizumabの埋め込み型インプラント製剤「Susvimo」は、糖尿病網膜症に適応拡大しました。従来の眼内注射よりも長い治療間隔となる、9カ月に1回の薬剤補充で効果が期待されます。日本では現在、加齢黄斑変性と糖尿病黄斑浮腫の適応でP1/2試験が進行中です。
[呼吸器] Nucala|英グラクソ・スミスクライン
喘息などの治療薬として承認されている抗IL-5抗体「Nucala」(mepolizumab)は、新たに慢性閉塞性肺疾患(COPD)の追加維持療法として承認されました。対象は、コントロール不十分な、好酸球性表現型COPDの成人患者。プラセボ対照のP3試験では、増悪の年間発生率を有意に減少させました。COPDの適応では欧州と中国で申請中です。
[皮膚] Zoryve|米アーキュティス
PDE4阻害薬roflumilastのフォーム製剤「Zoryve」は尋常性乾癬に適応拡大。同適応ではクリーム製剤が22年に承認されており、治療選択肢が拡大します。フォーム製剤は脂漏性皮膚炎、クリーム製剤はアトピー性皮膚炎でも承認済み。日本では24年に佐藤製薬がこれら3つの適応症を含む皮膚疾患を対象にライセンスを取得しています。
【バイオシミラー】バイオセラのustekinumab
Starjemza|中国バイオセラ・ソリューションズ
「Starjemza」は、米国で8番目となる「Stelara」(ustekinumab)のバイオシミラー。米国での商業化は、21年にライセンス契約を結んだ英ヒクマ・ファーマシューティカルズが担います。