主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2021年6月4日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・疾患領域別にまとめました。(昨年5月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|疾患領域編」はこちら)
P3~申請のパイプラインが10を超えるのは18社
集計対象としたのは、内資系企業29社、外資系企業18社。2021年6月4日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを疾患領域別にまとめました。
疾患領域は、▽がん▽呼吸器▽循環器・代謝・腎▽消化器▽皮膚▽骨・関節▽その他免疫・炎症▽中枢神経・筋▽眼▽疼痛▽血液▽感染症・ワクチン▽その他――の13に分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。なお、いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もあります。
集計対象とした47社のうち、臨床第3相(P3)試験から申請にかけてのパイプラインが10(新規有効成分と適応拡大の合計)を超える企業は、内資系6社・外資系12社の計18社。武田薬品工業、アステラス製薬といった国内大手や、ファイザー、ノバルティスなどの海外大手企業が並びました。昨年5月時点の集計と比べると1社増えており、12の後期開発プロジェクトを持つノボ ノルディスクファーマが加わりました。
領域別でパイプラインが最も豊富なのはがん領域です。小野薬品工業や中外製薬、MSD、アストラゼネカなど、幅広いがん種への効果が期待されるがん免疫療法を開発中の企業でパイプラインの多さが目立ちます。
「消化器」「皮膚」「骨・関節」といった領域にまたがる免疫系の疾患もパイプラインが豊富。消化器疾患では武田やアッヴィなど、皮膚疾患ではアッヴィやファイザー、日本イーライリリーが複数の後期開発プロジェクトを進めています。
内資は「中枢神経・筋」、外資は「循環器・代謝・腎」
開発初期~中期(P1~P2)のパイプラインも含めて内資系、外資系それぞれのプロジェクト数を数えてみると、内資系企業では「中枢神経・筋」、外資系企業では「循環器・代謝・腎」が多いことがわかります。神経変性疾患や、心不全、腎不全、非アルコール性脂肪肝炎といった疾患では、複数の企業が競合しています。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、新規有効成分に占める「感染症・ワクチン」の割合も増えています。
内資系企業29社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
国内の大手製薬はいずれもがん領域に注力しており、そのことは各社のパイプラインからもよくわかります。がん免疫療法や抗体薬物複合体(ADC)の開発が活発で、特にアステラス製薬や大塚ホールディングス(HD)、第一三共、小野がP1~P2のパイプラインを多く抱えています。
武田はシャイアー買収で獲得した希少遺伝子疾患や血液疾患のほか、湘南研究所で生まれた中枢神経領域のプロジェクトなどが進行中。エーザイは、グループ会社のEAファーマが開発する炎症性腸疾患のパイプラインを複数持っています。エーザイや大日本住友製薬、田辺三菱製薬は、中枢神経系領域の開発品が豊富です。
パイプラインの数は大手・準大手と中堅以下で開きがありますが、中堅以下では▽日本新薬▽持田製薬▽キッセイ薬品工業▽富士フイルムHD▽マルホ――の5社が、新規有効成分で5つ以上の開発パイプラインを持っています。日本新薬やキッセイ薬品工業、富士フイルムHD、マルホは複数の自社創製品を開発中です。
外資系企業18社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
外資系企業は、全体的に内資系企業と比べてパイプラインが豊富です。最多はアストラゼネカで、新規有効成分と適応拡大あわせて72のプロジェクトを進行中。ノバルティスやファイザー、日本イーライリリーなどは、対象とする疾患領域の幅が広いのが特徴です。
「循環器・代謝・腎」では、アストラゼネカやバイエル薬品、ノボ ノルディスクファーマが心血管疾患や糖尿病、腎臓病などを対象に複数のパイプラインを開発中。サノフィはさらに、ライソゾーム病などの希少疾患をターゲットに開発を進めています。