国内主要製薬企業の2021年3月期第3四半期決算が出そろい、今期の着地が見えてきました。AnswersNewsが主要企業の業績予想を集計したところ、今期は薬価改定や新型コロナウイルスの影響もあり売上高は前期比2.4%減となる見込み。大手を中心に大幅な営業減益を見込む企業が多いものの、武田薬品工業が前期比4倍超の営業利益を予想しており、全体では7.5%増益での着地となりそうです。
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営業利益は7.5%増
2021年3月期に連結売上高1000億円以上を予想する国内主要製薬企業12社の業績予想を集計したところ、売上高は前期比2.4%減、営業利益は7.5%増となりました。
各社ともおおむね主力品が堅調に推移したものの、薬価改定の影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化したことで一部製品の販売が減少。特許切れや事業売却、販売提携終了の影響を受けた企業もあり、売上高は前期を下回る見通しです。全体では増益となる営業利益も、特殊要因で前期の4.3倍を見込む武田薬品を除くと30.2%の減益となる予想です。
期中に業績予想を3度修正した武田薬品は、最終的に売上高3兆2000億円(前期比2.8%減)、営業利益4340億円(332.2%増)で着地する見込み。主力とする消化器領域などの売り上げは堅調ですが、シャイアー買収による債務の圧縮のために行っている事業売却や、一部製品への後発医薬品参入が響きます。一方、営業利益は、ノンコア資産の売却益計上などで大幅な増加を予想しています。
3.4%の減収、13.7%の営業減益を見込むアステラス製薬は、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」や国内の新製品などが伸びたものの、過活動膀胱治療薬「ベシケア」や消炎鎮痛薬「セレコックス」の特許切れや販売提携の終了が影響。新型コロナの拡大に伴う営業活動自粛や臨床試験中断による費用の減少はあった反面、重点開発品にかかる費用の増加などで2桁の減益となります。
第一三共は、新型コロナの影響で抗インフルエンザウイルス薬「イナビル」や鉄注射剤「インジェクタファー」などの売り上げが減少しました。エーザイは、新型コロナが長期化し、影響が当初の想定を上回っているとして主力品の売り上げ予想を下方修正。これに伴い、米メルクから支払われる抗がん剤「レンビマ」の販売マイルストンの計上を来期以降に先延ばししました。研究開発への投資も膨らんでおり、両社とも5割を超える営業減益を見込んでいます。塩野義製薬も、感染症領域の製品が落ち込み、2期連続の減収減益となる見通しです。
一方、好調なのは小野薬品工業と日本新薬。小野薬品は免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が伸びるほか、同薬に関連するロイヤリティ収入も増加し、営業利益は21.3%の増益となる予想です。日本新薬も肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」のロイヤリティ収入やマイルストン収入が寄与し、11期連続の増収となります。
国内は第3四半期時点で6.1%減
国内医療用医薬品の20年4~12月期の売上高は、数字を公表している10社の合計で前年同期比6.1%減。21年3月期の予想は、開示している8社の合計で3.8%減となっています。増収を見込むのは大日本住友製薬だけで、残る7社は減収を予想しています。
大日本住友は、19年11月から取り扱いを開始した糖尿病治療薬「エクア/エクメット」が通期で寄与し、8.2%の増収で着地する見通し。昨年6月に国内で発売した抗精神病薬「ラツーダ」は22億円の売り上げを見込んでいます。
一方、通期予想で前期からの減収幅が最も大きいのはアステラス。喘息・COPD治療薬「シムビコート」と高血圧症治療薬「ミカルディス」の販売提携が終了したことや、セレコックスへの後発品参入が響きます。薬価改定で抗凝固薬「リクシアナ」が特例拡大再算定による引き下げを受け、アルツハイマー型認知症治療薬「メマリー」に後発品が参入した第一三共は9.0%の減収を予想。「ゾフルーザ」などのインフルエンザ領域の製品群が前期比7割減に落ち込む塩野義も7.5%の減収となる見通しです。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・武田薬品工業
・アステラス製薬
・第一三共
・エーザイ
・大日本住友製薬
・田辺三菱製薬
・小野薬品工業
・塩野義製薬
・参天製薬
・キョーリン製薬ホールディングス(杏林製薬/キョーリンリメディオ)