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ニュース解説

新型コロナウイルスは国内製薬企業の業績にどんな影響を与えているのか

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は製薬企業の業績にどんな影響を与えているのか。各社の4~6月期決算をまとめました。

 

受診抑制響く

8月7日までに発表された東証1部上場製薬企業の2020年4~6月期決算を集計したところ、24社中16社が前年同期から減収となりました。営業利益が前年同期を下回ったのは11社で、いずれも2ケタの大幅な減益。4月に行われた薬価改定に加え、COVID-19の感染拡大が重しとなりました。

 

【国内製薬企業/20年4~6月期業績と通期業績予想】 *は20年12月期第2四半期、**は20年9月期第3四半期、***は21年2月期第1四半期(3~5月期)、無印は21年3月期第1四半期▽実績、予想とも営業利益は一部コアベース▽業績予想の矢印は、上向きが上方修正、下向きが下方修正、横向きは据え置き▽久光製薬とゼリア新薬工業は未定としていた業績予想を公表▽日本ケミファの営業利益実績、田辺三菱製薬とキッセイ薬品工業の営業利益予想は赤字。/(単位:%)(社名/4~6月期売上高/営業利益/通期業績予想売上高/営業利益): 武田薬品工業/▲5.6/270.4/▲1.3/→/293.4/↑ |大塚HD*/3.6/22.3/1.0/↓/14.4/↑ |アステラス製薬/▲8.1/▲21.1/▲3.4/↓/▲9.6/↓ |第一三共/▲4.9/▲40.1/▲1.2/→/▲42.4/→ |エーザイ/7.5/24.4/3.4/→/▲29.9/→ |中外製薬*/13.7/39.2/7.8/→/22.3/→ |大日本住友製薬/13.9/▲42.4/2.5/↓/▲71.2/→ |田辺三菱製薬/▲6.5/83.6/1.0/→/―/→ |塩野義製薬/▲11.6/▲19.1/▲3.0/→/▲15.6/→ |協和キリン*/6.1/19.6/2.3/↓/1.1/↓ |小野薬品工業/1.3/35.3/3.6/→/3.2/→ |大正製薬HD/24.5/12.8/0.3/→/▲5.4/→ |参天製薬/▲2.7/▲13.3/▲2.7/→/4.4/→ |沢井製薬/▲6.8/▲22.6/9.7/→/0.2/→ |久光製薬***/▲14.9/▲61.2/▲9.9/―/▲43.2/― |キョーリン製薬HD/▲4.1/27.8/5.0/→/29.3/→ |持田製薬/3.4/1.7/0.2/→/▲11.4/→ |科研製薬/▲19.1/▲25.0/▲7.1/→/▲21.5/→ |キッセイ薬品工業/▲0.2/▲20.8/3.6/→/―/→ |ゼリア新薬工業/▲11.8/▲20.3/0.9/―/5.0/― |あすか製薬/▲2.0/7.2/0.9/→/32.7/→ |鳥居薬品*/▲10.7/48.7/▲4.9/↓/158.6/↑ |富士製薬工業**/▲9.6/▲61.2/▲6.8/→/▲38.4/→ |日本ケミファ/▲13.3/―/3.9/→/64.5/→ |※HDはホールディングス。各社の決算短信をもとに作成

 

8.1%の減収、21.1%の営業減益となったアステラス製薬は、COVID-19の影響で前期末に欧州で流通在庫を積み増した反動が出たほか、感染リスクを警戒した患者の受診抑制によって過活動膀胱治療薬「ベシケア」「ベタニス」など一部製品の売り上げが減少しました。同社は、5月の前期決算発表時に織り込んでいなかったCOVID-19の影響を反映し、21年3月期の通期業績予想を下方修正。COVID-19は売上収益で350億円、コア営業利益で130億円のマイナス要因になるといいます。

 

受診抑制による医薬品需要減少の影響は広範に及んでいます。

 

第一三共は、北米で販売している貧血治療薬「インジェクタファー」「ヴェノファー」の売り上げが20%以上減少。両剤はいずれも注射の鉄剤で、通院を避けるために経口薬への切り替えが広がったといいます。塩野義製薬は感染症治療薬(抗菌薬や抗ウイルス薬)が40%以上減り、協和キリンは抗アレルギー薬が受診抑制の影響を受けました。久光製薬は主力の消炎鎮痛薬「モーラステープ」が16%の減少。外出自粛や訪日外国人の減少により、国内の一般用医薬品(OTC)も44%の減収となりました。

 

新薬の市場浸透にも遅れ

COVID-19によって、新薬の市場浸透にも遅れが出ています。

 

中外製薬は売上収益、コア営業利益とも1~6月期として過去最高を更新しましたが、通期の国内販売計画に対する進捗率は、免疫チェックポイント阻害薬「テセントリク」が37.2%、血友病A治療薬「ヘムライブラ」が38.2%にとどまりました。COVID-19による営業活動の自粛や患者数の減少が影響したといいます。協和キリンもFGF23関連疾患治療薬「クリースビータ」などグローバル戦略品の市場浸透の減速が懸念されるとし、20年12月期通期業績予想を下方修正しました。

 

4大卸 売り上げ3.6%減

IQVIAは、COVID-19の感染拡大によって2020年度の国内医療用医薬品市場は2530~3030億円のマイナス影響を受けると予測。20年度の国内市場は前年度比マイナス3.1%~マイナス2.1%と落ち込む見込みです。

 

特に4~6月期はCOVID-19の影響が大きく出ており、医薬品卸大手4社の医療用医薬品卸売事業の売上高は、合計で前年同期から4.1%減少。スズケンは営業赤字を計上し、ほかの3社も3~6割の減益となっています。

 

【医薬品卸/20年4~6月期業績と通期業績予想】(数値は上段が連結、下段が医療用医薬品卸売事業(医薬品卸売事業)▽業績予想の矢印は、上向きが上方修正、下向きが下方修正、横向きは据え置き▽メディパルHDは未定としていた業績予想を公表▽スズケンとバイタルケーエスケーHD、ほくやく・竹山HD(医薬品卸売事業)は営業赤字。)(単位:%)(社名/4~6月期売上高/営業利益/通期業績予想売上高/営業利益): |メディパルHD(連結)/▲2.1/▲13.6/▲1.1/―/▲19.0/― |メディパルHD(医薬品卸売事業)/▲2.7/▲30.1/▲1.6/―/▲38.6/― |アルフレッサHD(連結)/▲4.0/▲59.7/▲2.5/↓/▲56.1/↓ |アルフレッサHD(医薬品卸売事業)/▲4.1/▲62.6/▲2.3/↓/▲59.2/↓ |スズケン(連結)/▲5.5/―/未定/→/未定/→ |スズケン(医薬品卸売事業)/▲5.3/―/未定/→/未定/→ |東邦HD(連結)/▲4.4/▲48.2/未定/未定/→ |東邦HD(医薬品卸売事業)/▲4.4/▲35.2/未定/未定/→ |バイタルケーエスケーHD(連結)/▲5.3/―/未定(取り下げ) |バイタルケーエスケーHD(医薬品卸売事業)/▲5.8/未定(取り下げ) |ほくやく・竹山HD(連結)/▲3.7/▲92.2/未定(取り下げ) |ほくやく・竹山HD(医薬品卸売事業)/▲2.2/―/未定(取り下げ) |※HDはホールディングス。各社の決算短信をもとに作成

 

患者戻らず

COVID-19の影響は、7~9月期以降は小さくなるとみられていますが、市場の先行きは決して明るくありません。メディカル・データ・ビジョンが6月末から7月上旬にかけて行ったアンケート調査(124病院が回答)では、緊急事態宣言の解除後に患者の受診状況が「回復した」(患者数が戻っている)と答えた病院は4割にとどまりました。半数は「現状維持」(減少したまま)、1割は「悪化した」(さらに減少した)と答え、合わせて6割の病院では患者数が元に戻っていません。

 

メディパルHDは、受診抑制などCOVID-19の影響は少なくとも20年度いっぱい続くと想定。スズケンと東邦HDは21年3月期業績予想を「未定」としたままで、バイタルケーエスケーHDとほくやく・竹山HDは5月の前期決算発表時に公表した業績予想を取り下げました。

 

製薬企業の多くは期初の予想を据え置きましたが、COVID-19の感染は国内外で再拡大しており、下振れのリスクは残っています。

 

(前田雄樹)

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