国内の主な製薬企業の2018年3月期第3四半期決算が出そろい、各社の業績予想から今期の着地が見えてきました。
AnswersNewsが国内主要製薬企業13社の業績予想を集計したところ、18年3月期通期の売上高は前期比2.0%増、営業利益は0.9%増となる見通し。海外事業が好調だった反面、国内は薬価改定がない年にもかかわらず不振でした。
13社中9社が増収 オプジーボ半額下げの小野も
AnswersNewsが、2018年3月期に連結売上高1000億円以上を予想する国内製薬企業13社の業績予想を集計したところ、13社の売上高予想は前期比2.0%増となりました。
各社とも海外事業が好調です。武田薬品工業は潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」が第3四半期時点で1495億円と前年同期から45.5%増加。通期では2000億円の大台が視野に入ります。米国で特許が切れた多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」も、後発医薬品のシェア拡大が想定より小さく、連結売上高予想を従来予想から250億円、営業利益予想を187億円上方修正しました。
塩野義 HIV薬ロイヤリティーが1000億円突破へ
大日本住友製薬は北米で抗精神病薬「ラツーダ」が1780億円(前期比31.0%増)に達する見通し。利益で過去最高業績の更新を見込む塩野義製薬は、抗HIV薬のロイヤリティー収入が1033億円(40.9%増)となる見通しで、ロイヤリティー収入は全体で1500億円を突破します。
小野薬品工業は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」の米ブリストル・マイヤーズスクイブからのロイヤリティー収入が拡大。第3四半期時点で284億円を計上しました。オプジーボは今年2月、日本で薬価が半額に引き下げられましたが、ロイヤリティー収入でその減少を補い、通期の連結売上高は6.2%の増収を見込んでいます。
自社創製の肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」のロイヤリティー収入が伸びる日本新薬は今期、同社として初めて連結売上高が1000億円を超える見通しです。
小野や第一三共、アステラスなど2ケタ減益
営業利益は13社全体で0.9%増と微増。武田薬品や大日本住友が大幅な増益となりますが、小野薬品やアステラス製薬、第一三共など5社が2ケタの減益となります。
小野薬品は、オプジーボの薬価引き下げに加え、研究開発費や新薬発売に伴う販売費の増加が利益を押し下げ、24.6%の大幅減益。第一三共は、米国で鎮痛薬の商業化を中止したことで減損損失を計上したことが響きます。
国内医療用 薬価改定なしでも3%減
一方、国内事業は薬価改定のない年にもかかわらず苦戦が続きます。国内医療用医薬品の売上高予想は開示した8社の合計で前期比2.9%減。8社中4社が減収を見込んでおり、3社が伸び率1%未満とほぼ横ばいの見通しです。
減収幅が14.5%と最も大きいアステラス製薬は、ARB「ミカルディス」の特許切れとLTLファーマへの長期収載品譲渡が影響。8.8%の減収を見込む塩野義も高脂血症治療薬「クレストール」への後発品参入が響き、キョーリン製薬ホールディングスも抗アレルギー薬「キプレス」の特許切れで6.0%の減収を見込みます。
17年3月期まで8年連続で国内売上高を減らしていた大日本住友は、2型糖尿病治療薬「トルリシティ」の拡大で減収に歯止めがかかったものの、伸び率は0.6%にとどまる見通し。エーザイや田辺三菱製薬も0.4%増と伸びは小幅です。
第一三共 今期も国内医療用トップへ
国内事業が大きく伸びたのは第一三共と参天製薬。第一三共はARB「オルメテック」が特許切れで売り上げを大きく減らす一方、抗凝固薬「リクシアナ」など新製品が伸び、国内医療用医薬品は通期で5360億円(5.8%増)となる見通し。17年3月期に武田薬品から奪った国内医療用医薬品トップの座を今期も守りそうです。
IQVIA(旧クインタイルズIMS)によると、17年度の国内医療用医薬品市場は、第1四半期(4~6月)が前年同期比0.8%減、第2四半期(7~9月)が1.0%増。薬価改定のなかった15年度(第1四半期7.9%増、第2四半期7.4%増)や13年度(3.7%増、4.9%増)と比べると今期の市場成長率の低さが際立ちます。
18年3月期の決算は、国内市場の停滞と海外展開の事業の重要性を改めて印象付ける決算となりそうです。