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第一三共

第一三共は2005年に第一製薬と三共が合併して誕生した製薬企業で、売上高は国内4位。循環器領域に強みを持ち、高血圧症治療薬オルメサルタンや抗凝固薬エドキサバンなどが主力。最近はがん領域の研究開発に力を入れています。

【第一三共】主力のオルメサルタンが特許切れ 「がんに強いグローバル企業」へ正念場

2016年度、武田薬品工業を抜いて国内医療用医薬品で売上高トップに立った第一三共。新製品が伸びる国内事業は好調ですが、最主力品のARBオルメサルタンの特許切れに直面しています。「がんに強みを持つ先進的グローバル製薬企業」を中長期ビジョンに掲げる同社。パテントクリフを乗り越え、次なる成長基盤を手にすることはできるのでしょうか。

17~18年度が業績の底

第一三共の2017年3月期(16年度)決算は、売上高が前年度比3.2%減、営業利益が31.8%減の減収減益に沈みました。

最大の要因は、海外で特許切れを迎えたARBオルメサルタンの売り上げ減です。同剤は第一三共にとって最大の主力品ですが、後発医薬品の影響で売上高は2割以上減少。ワクチンを手がける子会社・第一三共北里ワクチンで開発プロジェクトに遅れが生じ、219億円の減損損失を計上したことも追い打ちをかけました。

第一三共の業績指標の図。【売上高】2015年度:9864億円、2016年度:9551億円、2017年度予想:9300億円【オルメサルタン売上高】2015年度:2841億円、2016年度:2180億円(前年度比23.3%減)、2017年度予想:1340億円(前年度比38.5%減)<日本>2015年度:921億円、2016年度:869億円(前年度比5.6%減)、2017年度予想:630億円(前年度比27.5%減)<アメリカ>2015年度:1116億円、2016年度:664億円(前年度比40.5%減)、2017年度予想:140億円(前年度比78.9%減)<ヨーロッパ>2015年度:589億円、2016年度:432億円(前年度比26.7%減)、2017年度予想:260億円(前年度比39.8%減)<その他>2015年度:216億円、2016年度:215億円(前年度比0.4%減)、2017年度予想:310億円(前年度比44.2%増)【エドキサバン売上高】2015年度:150億円、2016年度:373億円(前年度比148.5%増)、2017年度予想:650億円(前年度比74.1%増)<日本>2015年度:130億円、2016年度:250億円(前年度比92.6%増)、2017年度予想:390億円(前年度比56.0%増)<アメリカ>2015年度:4億円、2016年度:19億円(前年度比317.0%増)、2017年度予想:20億円(前年度比6.6%増)<ヨーロッパ>2015年度:15億円、2016年度:97億円(前年度比525.7%増)、2017年度予想:220億円(前年度比127.5%増)<その他>2016年度:8億円、2017年度予想:20億円(前年度比155.9%増)【営業利益】2015年度:1304億円、2016年度:889億円、2017年度予想:750億円

17年度は海外での特許切れが年間を通して効いてくる上、日本でも後発品が参入。パテントクリフの影響は本格化します。17年度の業績予想は売上高が2.6%減、営業利益は15.7%減。オルメサルタンの売上高は15年度の半分以下まで減り、好調な抗凝固薬エドキサバンや国内事業をもってしてもその穴は埋め切れません。

「今年度を乗り越えれば、来年度はもっと乗り越えやすいというか、未来がはっきりしてくると思う。そういう意味では今年度しっかりやることが大事だ」

5月の決算説明会で中山譲治会長兼CEOは強調しました。第一三共は17年度が業績の底と見ていますが、アナリストからは「18年度までボトムは続く」との声も漏れます。いずれにしても「来年度も厳しい」(中山会長兼CEO)のは確か。正念場は続きます。

「ハイブリッド」旗降ろし新薬路線に回帰

過去5年、第一三共はなかなか業績を伸ばせずにきました。

売上高は円安による押し上げで1兆円を超えた13年度を除けば、9000億円台後半で足踏み。営業利益は、前年に行った1500人規模の人員削減の効果があった15年度以外はむしろ減少傾向にあります。14年度は子会社プレキシコンが開発した抗がん剤「ゼルボラフ」の収益性低下で350億円、16年度はワクチン子会社・第一三共北里ワクチンの開発プロジェクトの遅れで240億円と、多額の減損損失を計上したことが響きました。

第一三共の主な業績指標の推移表。【売上高】2012年度:9979億円、2013年度:1兆1182億円、2014年度:9194億円、2015年度:9864億円、2016年度:9551億円。【営業利益】2012年度:1005億円、2013年度:1116億円、2014年度:744億円、2015年度:1304億円、2016年度:889億円。【経常利益】2012年度:991億円<br />
、2013年度:998億円、2014年度:799億円、2015年度:1224億円、2016年度:878億円。【純利益】2012年度:666億円、2013年度:609億円、2015年度:823億円、2016年度:535億円。【ネットキャッシュ】2012年度:1048億円、2013年度:805億円、2014年度:1515億円、2015年度:5111億円、2016年度:5161億円

この5年で第一三共の経営に大きな影響を与えたできごとといえば、08年に子会社化したインドの後発品企業ランバクシーを手放したことでしょう。「新薬と後発品」「先進国と新興国」にまたがる「ハイブリットビジネス」を目指し、5000億円近い巨費を投じて買収しましたが、品質問題が相次いで発覚。サンファーマ(インド)に実質売却し、15年に経営から撤退しました。

これが数字となって表れているのが、純利益が3221億円に膨らんだ14年度。第一三共はこの年、ランバクシーの売却に絡んで3602億円もの子会社合併差益を計上しました。インドの株高も背景に、第一三共が保有するランバクシーの株価が上がったためです。

第一三共はランバクシー株を譲渡するかわりに取得したサンファーマの株式も15年度にすべて売却。「ハイブリッドビジネス」の旗を降ろす一方、株の売却で得た4000億円近いキャッシュも元手に、新薬に集中する路線に転換しました。

がん事業の成否が中長期の成長を左右

中長期ビジョンに掲げる通り、第一三共は次なるビジネスの柱として、がん領域の強化を進めています。2020年度までの中期経営計画では、がん事業の立ち上げを戦略目標の1つに掲げており、25年度には3000億円規模の事業に育てるとしています。

がん領域の柱になるのは、パイプラインに複数の新薬候補が控える「白血病」と「抗体薬物複合体(ADC)」。白血病治療薬のキザルチニブは臨床第3相試験まで進んでおり、18年度の承認・発売を予定。ピーク時にはグローバルで1000億円規模の売り上げを期待しています。

独自技術に自信を持つADCでは、臨床段階に2品目、前臨床段階に4品目を保有。最も開発が進んでいる、HER2を標的とした「DS-8201」は米FDA(食品医薬品局)からブレークスルーセラピー(画期的治療薬)の指定を受けており、乳がんなどを対象に臨床第2相試験が進行中です。

パテントクリフの克服には、オルメサルタンにかわる主力品候補エドキサバンの成長も欠かせません。売り上げは急速に伸びており、現在、日本と欧州を中心に上位製品を追い上げています。経口抗凝固薬市場自体も伸びており、20年度までに1200億円以上に引き上げたい考え。ランバクシーを手放したことやオルメサルタンの特許切れにより、海外売上高比率は39%と同業他社を大きく下回っており、海外でどう稼いでいくかもポイントです。

収益力に課題

収益力も大きな課題です。16年度の営業利益率は9.3%と上場新薬メーカーの平均(13.6%)を下回っており、ROEも優良企業の目安とされる10%の半分にも達していません。総資本回転率も低く、数字からは経営効率の低さが浮き上がってきます。

第一三共の営業利益率とROEの推移の折れ線グラフ。【営業利益率】2012年度:10.1%、2013年度:10.0%、2014年度:8.1%、2015年度:13.2%【ROE】2012年度:7.3%、2013年度:6.2%、2014年度:24.7%、2015年度:4.5%

現行の中期経営計画では、最終年度に営業利益率15%、ROE8%以上が目標。「利益創出力の強化」を掲げ、生産体制の効率化や調達の強化によるコスト削減、保有株式の売却による資産のスリム化に取り組んでいます。ただ、自社品で利益率の高いオルメサルタンの特許切れは、利益率向上の足かせとなります。

第一三共は現行の中期経営計画の5年間で、累計1兆4000億円を成長投資の枠として用意。がん領域の製品・パイプライン獲得を最優先に、エドキサバンの成長や米国事業の拡大などに投資する方針です。

がん領域に強い、高収益の企業に生まれ変われるのか。まずは、直面するパテントクリフを乗り越えなければなりません。

【PickUp】後発品事業にも注力 オーソライズド・ジェネリックとバイオシミラーで

ランバクシーを手放してグローバルな後発医薬品事業からは手を引いたものの、国内では後発品にも力を入れており、今後も主要事業の1つとして規模を拡大させていく方針です。

オーソライズド・ジェネリック(AG)を中心に事業の強化を図っています。これまで承認を取得したAGは、抗菌薬レボフロキサシン(先発品名・クラビット)や高血圧症治療薬オルメサルタン(オルメテック)、同テルミサルタン(ミカルディス)、高脂血症治療薬ロスバスタチン(クレストール)など。国内企業で随一の品揃えを誇ります。

また、国内の新薬大手では唯一、バイオシミラーの開発も手がけています。関節リウマチ治療薬エタネルセプト(エンブレル)のバイオシミラーは商用生産が確立できず開発を中止しましたが、2016年7月には米アムジェンとバイオシミラー9品目の日本での商業化で提携を結びました。

第一三共の主要製品

第一三共の主要製品別売上高(2016年度)。【グローバル製品】オルメサルタン(高血圧症治療薬):2180億円(前年比23.3%減)、プラスグレル(抗血小板薬):416億円(前年比29.2%増)、エドキサバン(抗凝固薬):373億円(前年比148.5%増)【国内】ネキシウム(抗潰瘍薬):840億円(前年比1.9%増)、オルメテック(高血圧症治療薬):694億円(前年比6.0%減)、メマリー(アルツハイマー型認知症治療薬):469億円(前年比10.4%増)、ロキソニン(消炎鎮痛剤):374億円(前年比22.3%減)、テネリア(2型糖尿病治療薬):242億円(前年比46.1%増)、リクシアナ(抗凝固薬):250億円(前年比92.6%増)、レザルタス(高血圧症治療薬):175億円(前年比3.5%減)、プラリア(骨粗鬆症治療薬):180億円(前年比44.1%増)、ランマーク(がん骨転移による骨病変治療薬):139億円(前年比12.4%増)、イナビル(抗インフルエンザウイルス薬):196億円(前年比39.3%増)、クラビット(抗菌薬):151億円(前年比17.8%減)、オムニパーク(造影剤):142億円(前年比15.9%減)、ユリーフ(排尿障害治療薬):114億円(前年比3.4%減)、アーチスト(高血圧・狭心症・慢性心不全治療薬):106億円(前年比29.3%減)、メバロチン(高コレステロール血症治療薬):104億円(前年比22.2%減)、エフィエント(抗血小板薬):104億円(前年比112.7%増)、第一三共エスファ:202億円(前年比9.2%増)、ワクチン:385億円(前年比4.7%増)、第一三共ヘルスケア:667億円(前年比25.0%増)

第一三共のパイプライン

第一三共の領域・フェーズ別パイプラインリスト。【がん】<フェーズ2>ギザルチニブ(日本/急性骨髄性白血病)、パトリズマブ(ヨーロッパ/頭頚部がん)、ペキシダルチニブ(アジア/c-KITメラノーマ)、DS-8201(日米欧/乳がん)、ペキシダルチニブ(アメリカ/膠芽細胞腫)、DS-1647(日本/膠芽腫)、ペキシダルチニブ(アメリカ/固形がん、メラノーマ)、DS-8201(日亜/胃がん)<フェーズ3>デノズマブ(日本/乳がん術後補助療法)、ベムラフェニブ(米欧/メラノーマ術後補助)、ギザルチニブ(米欧亜/急性骨髄性白血病)、ペキシダルチニブ(米欧/腱骨膜巨細胞腫)、ニモツズマブ(日本/胃がん)【循環代謝】<フェーズ3>エドキサバン(日本/高齢AF)、プラスグレル(日本/虚血性脳血管障害)、エサキセレノン(日本/高血圧症)、エサキセレノン(日本/糖尿病性腎症)<申請中>エドキサバン(ASCA/AF/VTE)【その他】<フェーズ3>ミロガバリン(米欧/線維筋痛症)、ミロガバリン(日亜/糖尿病性末梢神経障害疼痛)、ミロガバリン(日亜/帯状疱疹後神経痛)、ラニナミビル(日本/インフルエンザ)<申請中>ヒドロモルフォン(日本/がん疼痛)【ワクチン】<フェーズ3>5種混合(日本)、MMR(日本)<申請中>インフルエンザ(日本/皮内用)、インフルエンザ(日本/経鼻)

第一三共の年収

第一三共の年度別平均年収の推移グラフ。2012年度:998.2万円、2013年度:1036.3万円、2014年度:1111.9万円、2015年度:1092.3万円、2016年度:1133.5万円

第一三共の年度別平均年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数の推移表。【平均年収(単体)】2012年度:998.2万円、2013年度:1036.3万円、2014年度:1111.9万円、2015年度:1092.3万円、2016年度:1133.5万円【平均年齢(単体)】2012年度:41.8歳、2013年度:42.3歳、2014年度:42.5歳、2015年度:43.0歳、2016年度:43.4歳【平均勤続年数(単体)】2012年度:17.3年、2013年度:17.7年、2014年度:18.1年、2015年度:18.5年、2016年度:18.8年【従業員数(単体)】2012年度:5771人、2013年度:5744人、2014年度:5306人、2015年度:5206人、2016年度:5310人【従業員数(連結)】2012年度:32229人、2013年度:32791人、2014年度:16428人、2015年度:15249人、2016年度:14670人

第一三共の基本情報

2017年12月

社名 第一三共株式会社(DAIICHI SANKYO COMPANY, LIMITED)
本社所在地 東京都中央区日本橋本町3-5-1
設立 2005年9月28日
資本金 500億円
上場 東証1部
代表者名 眞鍋淳(代表取締役社長)
主な事業所所在地 【支店】札幌市、仙台市、東京都中央区・千代田区、千葉市、さいたま市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市
【研究所】東京都品川区、東京都江戸川区
【工場】神奈川県平塚市、大阪府高槻市、福島県いわき市、群馬県千代田町、神奈川県小田原市

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