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久光製薬

久光製薬は、東京と佐賀に本社を構える、1847年創業の製薬企業です。「貼って治す」貼付剤に特化しており、消炎鎮痛剤「モーラステープ」は発売から20年以上経った現在でも、国内で処方されている医療用第2世代貼付剤で4割近くのシェアを持ちます。

【久光製薬】連続増収は16年でストップ OTC「サロンパス」注力で業績回復なるか

2000年度に連結決算を公表以来、16年連続で増収を記録していた久光製薬。しかし、それを支えてきた消炎鎮痛剤「モーラステープ」は後発医薬品の浸透と薬価の引き下げで売り上げを落とし、16年度は一転して減収減益に沈みました。今年度からスタートした新たな中期経営計画では、「サロンパス」など一般用医薬品に注力する方針を掲げた同社。業績回復はなるのでしょうか。

「モーラステープ」売り上げ減が加速

久光製薬の2016年度の業績は、売上高が1459億円(前年度比9.8%減)、営業利益が263億円(5.1%減)と減収減益。2000年度に連結決算の公表をはじめてから続いていた連続増収記録は、16年でストップしました。

久光製薬の売上高の推移の棒グラフと、モーラステープ群の折れ線グラフ。【売上高】2000年度:652億円、2005年度:1027億円、2010年度:1372億円、2015年度:1619億円。

要因は、主力の医療用医薬品事業の不振。95年の発売以来、久光の主力製品として業績を支えていた消炎鎮痛剤「モーラステープ」群の売り上げが大きく減少したことが影響しました。

モーラステープ群は12年度、777億円を売り上げ、久光の売上高全体の半分以上を稼いでいましたが、後発医薬品の普及と薬価改定の影響を受けて16年度は527億円とピーク時の3分の2にまで落ち込みました。

貼付剤は「貼り心地」などの点で後発品に切り替わりづらいのが特徴で、久光によると17年7月時点で「(モーラステープの成分の)ケトプロフェン製剤の後発医薬品の比率が直近でようやく20%超えた」(中冨一榮社長)状況。依然として高いシェアを保っているものの、薬価の引き下げを背景に売り上げの減少は加速しています。18年4月には長期収載品の薬価を後発品に近い水準まで引き下げる新たなルールが導入。「モーラステープ等の既存の外用消炎鎮痛貼付剤の売り上げ維持は困難」(久光)で、さらなる売り上げ減は避けられません。

久光製薬の主な業績指標の推移の表。【売上高】2015年度:1619億円、2017年度予想:1470億円(前年度比0.7%増)【モーラステープ群】2015年度:645億円、2016年度:527億円(前年度比18.3%減)、2017年度予想:499億円(前年度比5.4%減)【営業利益】2015年度:277億円、2017年度予想:241億円(前年度比8.4%減)

米子会社の業績悪化 海外の足場も不安定に

海外の医療用医薬品事業も振るいません。16年度の売上高は230億円 で、前年度比26.7%減と大幅な減収となりました。

09年に米ノーベン・ファーマシューティカルズを買収して足場を築いた米国では、13年に成長ドライバーと期待していた閉経に伴うほてり向けの非ホルモン経口製剤「Brisdelle」を発売。翌年には婦人科領域を重点とする塩野義製薬の米子会社とコ・プロモーションを開始しました。しかし、販売は思うように伸びず、16年には抗うつ経口製剤「Pexeva」とともにセベラに売却。営業部門も閉鎖し、貼付剤の生産と研究開発に集中する方針に変更しました。

OTC 売り上げ倍増を計画

モーラステープの売り上げ減が想定を上回ったことや、米国事業が期待通りの成果を出せなかったことを受け、久光は前の中期経営計画を2年前倒しで切り上げ、17~21年度の新たな中計を策定しました。

新たな中計 で主軸に据えたのは、一般用医薬品(OTC)事業の強化。16年度は売上高全体の3割程度だったOTCの売り上げを、21年度には5割にまで引き上げていく方針です。21年度の売上高目標は1700億円。この半分をOTCで稼ぐとなると、OTCの売り上げは16年度(438億円)から倍増となる計算です。

久光製薬の売上構成の推移の積み上げグラフ。【医療用医薬品】2014年度:1160億円、2015年度:1181億円、2016年度:988億円、2017年度見込み:932億円、2021年度目標:850億円。【一般用医薬品】2014年度:376億円、2015年度:404億円、2017年度見込み:510億円、2021年度目標:850億円。

OTCは医療用医薬品とは対照的に好調。世界100カ国以上で販売されている消炎鎮痛剤「サロンパス」群(16年度売上高232億円)など主要6製品群全てが売り上げを伸ばし 、17年度もさらなる拡大が見込まれています。中計ではサロンパスの海外販売に力を入れ、海外拠点とその周辺国を中心に営業活動を強化していく方針。21年度にはサロンパス群の売上高を450億円まで引き上げる計画です。

「貼って治す」新薬開発は貼付剤に特化

一方、医療用医薬品の売上高は16年度の988億円から21年度には850億円に縮小する見通し。研究開発は、強みを生かした貼付剤に特化しています。

「貼付剤による治療文化を世界へ」を理念に掲げる久光は、パイプラインに控える製品も全て貼付剤。貼付剤は薬物の血中濃度を安定して保てるため副作用の軽減が期待でき、副作用が発現しても、はがすだけで投与を中断できます。内用薬を飲みづらい小さな子どもや高齢者でも簡単に治療でき、投与したかを目で確認できるため飲み忘れ防止になるというメリットもあります。

国内では、抗アレルギー薬の貼付剤としては世界初となる「アレサガテープ」が承認間近。臨床第3相(P3)試験を実施中の経皮吸収型パーキンソン病治療剤「HP-3000」は皮膚刺激の大幅な軽減を狙っており、18年度に申請予定です。新たな中計で集中領域に定めた疼痛領域では、経皮吸収型非ステロイド性疼痛治療剤「HP-3150」が、がん疼痛を対象にP3試験を行っています。

メリットは多いとはいえ、疼痛以外の領域では貼付剤による治療はまだニッチな分野。13年に国内で発売した経皮吸収型の過活動膀胱治療剤「ネオキシテープ」の16年度の売上高は12億円にとどまります。

事業構造の大きな転換期を迎えている久光。長期収載品の売り上げ減を背景に、新薬に資源を集中する製薬企業が多い中、OTCへのシフトチェンジは異例ともいえます。この方針が久光の業績回復につながるのか、今後の動向が注目されます。

久光製薬の主要製品

久光製薬の主要製品別売上高の表(2016年度)。フェントステープ(疼痛治療剤):53億円(前年比11.1%減)、ノルスパンテープ(疼痛治療剤):22億円(前年比0.5%減)、ネオキシテープ(過活動膀胱治療剤):12億円(前年比27.7%増)、アブストラル舌下錠(がん性疼痛治療剤):2億円(前年比5.2%増)、モーラステープ群(消炎鎮痛剤):527億円(前年比18.3%減)、モーラスパップ群(消炎鎮痛剤):77億円(前年比27.6%増)、一般用医薬品:438億円(前年比8.4%増)【米子会社 Noven Pharmaceuticals,Inc.】Minivelle(エストラジオール経皮システム):95億円(前年比14.2%減)、Vivelle-Dot群:37億円(前年比26.2%減)、Combipatch群:38億円(前年比26.4%減)、Brisdelle(非ホルモン経口製剤):10億円(前年比54.5%減)、Daytrana(メチルフェニデート経皮吸収システム):37億円(前年比40.3%減)

久光製薬のパイプライン

久光製薬の領域・フェーズ別パイプラインリスト。【貼付剤】<フェーズ2>HP-5000(アメリカ/変形性膝関節症)<フェーズ3>HP-3000(日本/パーキンソン病)、HP-3150(日本/がん疼痛)、HP-3150(日本/腰痛症)、HP-3070(アメリカ/統合失調症)、ATS(アメリカ/ADHD)、HP-3000(日本/突発性ストレスレッグス症候群)<申請中>HP-3060(日本/アレルギー性鼻炎)、HFT-290(日本/がん疼痛・慢性疼痛)、HP-1010(アメリカ/(後発品)帯状疱疹後の神経疼痛)

久光製薬の年収

久光製薬の年度別平均年収のグラフ。2012年度:646.1万円、2013年度:642.9万円、2014年度:633.1万円、2015年度:641.4万円、2016年度:646.6万円

久光製薬の年度別平均年収・平均年齢・平均勤続年数・従業員数の推移表。【平均年収(単体)】2012年度:646.1万円、2013年度:642.9万円、2014年度:633.1万円、2015年度:641.4万円、2016年度:646.6万円【平均年齢(単体)】2012年度:35.5歳、2013年度:35.4歳、2014年度:35.7歳、2015年度:35.9歳、2016年度:36.3歳【平均勤続年数(単体)】2012年度:11.6年、2013年度:11.5年、2014年度:11.7年、2015年度:12.1年、2016年度:12.5年【従業員数(単体)】2012年度:1451人、2013年度:1528人、2014年度:1548人、2015年度:1580人、2016年度:1581人【従業員数(連結)】2012年度:2826人、2013年度:2949人、2014年度:2942人、2015年度:2900人、2016年度:2751人

久光製薬の基本情報

2018年1月

社名 久光製薬株式会社(HISAMITSU PHARMACEUTICAL CO.,INC.)
本社所在地 【東京本社】東京都千代田区丸の内2丁目4番1号
【九州本社】佐賀県鳥栖市田代大官町408番地
設立 1944年5月22日
資本金 84億7300万円
上場 東証1部
代表者名 中冨博隆(代表取締役会長 最高経営責任者)
主な事業所所在地 【支店】札幌市、仙台市、東京都渋谷区、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市
【営業所】さいたま市、千葉市、横浜市、金沢市、京都市、高松市
【工場】佐賀県鳥栖市、宇都宮市
【研究所】佐賀県鳥栖市、茨城県つくば市

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