国内の主な東証プライム上場製薬企業(事業)の2023年度の業績を、▽売り上げ・利益▽研究開発費▽主力製品売上高▽海外売上高――の4つの切り口からチャートで解説します。
【チャートで見る】国内製薬2023年度業績
(1)売上高・利益 |
海外売上高比率 武田89%、アステラス86%
海外売上高比率が最も高かったのは、89%の武田薬品工業。2位は83%のアステラス製薬で、70%のエーザイが続きました。
決算発表資料から海外売上高を把握できた23社のうち、売上高比率が50%を超えたのは12社。伸びが大きかったのは日本新薬(8.5ポイント増)、塩野義製薬(6.6ポイント増)、参天製薬(5.4ポイント増)など。一方、田辺三菱製薬は11.3ポイント減、住友ファーマは3.3ポイント減となりました。
歴史的な円安も背景に、24年3月期は多くの企業が海外売上高を大きく伸ばしました。第一三共は抗がん剤「エンハーツ」の拡大もあって34%増で1兆円を突破。日本新薬(29%増)や大塚HD(24%増)、参天製薬(同)、ゼリア新薬工業(20%増)も2割を超える増収となりました。
武田 米国で2.2兆円
各社の決算発表資料をもとに、地域別の売上高と総売上高に占める割合をチャートにしました。
武田薬品は米国が全体の51%を占め、欧州・カナダが23%で続きました。米国売上高は薬2.2兆円に上り、欧州・カナダも1兆円に迫っています。アステラスは米国が41%で、エスタブリッシュドマーケット(先進国市場)が26%。グレーターチャイナ(中華圏)は11%の伸びでした。
エーザイはアメリカス(米州)で3割を稼ぎ、中国が15%を占める構造。大塚HDは北米と欧州で30%近い成長となりました。
住友ファーマは、抗精神病薬「ラツーダ」の特許切れで北米の売上高が半減。ただ、日本の売上高も4割近く減っており、海外売上高比率は3.3ポイント減と大きな減少にはなりませんでした。協和キリンは、くる病・骨軟化症治療薬「クリースビータ」が伸びる米国で2割以上の増収となりました。
第一三共は、エンハーツの拡大によって北米で26%、欧州で52%の増収。海外売上高比率は4.2ポイント上昇して6割を超えました。ゼリア新薬工業は海外売上高比率が初めて5割を突破。潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」やクロストリジウム・ディフィシル感染症「ディフィクリア」が欧州で販売を伸ばしています。
日本新薬や小野、ロイヤリティ伸びる
中外製薬は、血友病治療薬「ヘムライブラ」など自社創製品のスイス・ロシュ向け輸出が伸び、海外売上高が5割に到達。久光製薬は米子会社が好調です。日本新薬は肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」のロイヤリティが拡大したほか、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」も米国で売り上げを伸ばしました。
参天製薬は、撤退した米州以外の各地域で売り上げが拡大し、過去最高の業績に寄与。小野薬品工業は、抗PD-1抗体に関連したロイヤリティ収入などが伸びました。
田辺三菱製薬は、前期に多額のロイヤリティ収入を計上した反動で海外売上高が4割減少。ツムラは、規模は小さいものの中国事業が2割の成長となりました。