国内の主な東証プライム上場製薬企業(事業)の2023年度の業績を、▽売り上げ・利益▽研究開発費▽主力製品売上高▽海外売上高――の4つの切り口からチャートで解説します。
【チャートで見る】国内製薬2023年度業績
(1)売上高・利益 |
売上高トップは武田薬品、営業利益は中外
2023年度の売上高で国内製薬トップとなったのは武田薬品工業(4兆2638億円)。2位は大塚ホールディングス(HD、2兆186億円)、3位はアステラス製薬(1兆6037億円)でした。いずれもグローバル展開する主力製品が好調で、武田薬品は炎症性腸疾患治療薬「エンタイビオ」が2桁成長。大塚HDは「グローバル4製品」が伸び、初めて売り上げが2兆円を突破しました。アステラスも前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が好調です。
営業利益は4392億円を確保した中外製薬がトップ。2位は2141億円の武田薬品、3位は2116億円の第一三共でした。
伸び率トップは売り上げ・利益とも第一三共
前年との比較では、売上高、営業利益とも伸び率トップは第一三共。抗がん剤「エンハーツ」などの伸びを背景に、売上高は25.3%、営業利益は75.5%増加しました。
第一三共に続いて売上高の伸び率が大きかったのはJCRファーマ(24.8%増)で、伸び率3位は大塚HD(16,1%増)。営業利益の伸び率は、2位が56.2%増の日本たばこ産業(JT、医薬事業)、3位が51.4%増のJCRファーマでした。
一方、売上高の減少率が最も大きかったのは43.4%減の住友ファーマ。同社は営業利益が3546億円の赤字(前年度は770億円の赤字)となったため増減率が算出できず、チャートには含まれていませんが、売り上げ、利益とも最大の減少です。
営業利益率は中外がトップ
営業利益率は39.5%の中外がトップ。35.2%の塩野義製薬が2位、31.8%の小野薬品工業が3位となりました。営業利益の額で2位の武田薬品は5.0%。3位の第一三共は13.2%です。
営業利益率を前の年と比較してみると、上昇幅が最も大きかったのは5.1ポイント増の東和薬品。4.9ポイント増のJT、3.8ポイント増の第一三共と続きました。東和は販管費の減少や製品構成の変化による売上原価の低減が寄与。JTと第一三共は売り上げの伸びが利益拡大につながりました。
一方、減少幅が大きかったのは、13.0ポイント減の日本化薬(ライフサイエンス事業)、10.0ポイント減の帝人(ヘルスケア事業)、いずれも7.2ポイント減の武田薬品とアステラスなど。日本化薬と帝人はライセンス費用が利益を圧迫。武田薬品とアステラスは減損損失の計上などが響きました。