国内主要製薬企業の2023年2月期、23年3月期決算のハイライトをまとめました。ビジュアルをまじえてお届けします。随時更新。(最終更新5月16日)
INDEX
- エーザイ(23年3月期、5月15日発表)
- 住友ファーマ(23年3月期、5月15日発表)
- 東和薬品(23年3月期、5月15日発表)
- 持田製薬(23年3月期、5月15日発表)
- 日本化薬(23年3月期、5月15日発表)
- 三菱ケミカルグループ(23年3月期、5月12日発表)
- 生化学工業(23年3月期、5月12日発表)
- 日本ケミファ(23年3月期、5月12日発表)
- ヤクルト本社(23年3月期、5月12日発表)
- 武田薬品工業(23年3月期、5月11日発表)
- 参天製薬(23年3月期、5月11日発表)
- サワイグループHD(23年3月期、5月11日発表)
- 明治HD(23年3月期、5月11日発表)
- 帝人(23年3月期、5月11日発表)
- 日本新薬(23年3月期、5月11日発表)
- 杏林製薬(23年3月期、5月11日発表)
- ゼリア新薬工業(23年3月期、5月11日発表)
- あすか製薬HD(23年3月期、5月11日発表)
- JCRファーマ(23年3月期、5月11日発表)
- 大正製薬HD(23年3月期、5月11日発表)
- 小野薬品工業(23年3月期、5月10日発表)
- 塩野義製薬(23年3月期、5月10日発表)
- 旭化成(23年3月期、5月10日発表)
- 科研製薬(23年3月期、5月10日発表)
- 扶桑薬品工業(23年3月期、5月10日発表)
- ツムラ(23年3月期、5月9日発表)
- キッセイ薬品工業(23年3月期、5月8日発表)
- アステラス製薬(23年3月期、4月27日発表)
- 第一三共(23年3月期、4月27日発表)
- 久光製薬(23年2月期、4月13日発表)
エーザイ(23年3月期、5月15日発表)
売上収益7444億200万円(前期比1.6%減)、営業利益400億4000万円(25.5%減)。前期に抗体薬物複合体「MORAb-202」に関する米ブリストル・マイヤーズスクイブとの提携による契約一時金(496億円)を計上した反動で減収減益となった。主力の抗がん剤「レンビマ」の売り上げは前期比29.8%増の2496億円。日本の医療用医薬品の売上収益は2154億円(0.6%増)で、レンビマのほか不眠症治療薬「デエビゴ」などが伸びた。24年3月期の業績予想は売上収益7120億円(4.4%減)、営業利益500億円(24.9%増)。今年6月に抗TNFα抗体「ヒュミラ」の販売提携が終了することなどで減収を見込む一方、研究開発の効率化などで費用は減少する。
住友ファーマ(23年3月期、5月15日発表)
売上収益5555億4400万円(前期比0.8%減)、営業利益769億7900万円の赤字(前期は602億3400万円の黒字)。パーキンソン病治療薬「キンモビ」の収益予測見直しや抗がん剤dubermatinibの開発中止などに伴って総額882億円の減損損失を計上し、745億円1200万円の最終赤字となった。24年3月期は売上収益3620億円(34.8%減)、営業利益780億円の赤字を予想。今年2月に北米で独占期間満了を迎えた抗精神病薬「ラツーダ」の北米売上収益が209億円(89.5%減)まで落ち込み、800億円の最終赤字を計上する見込み。
東和薬品(23年3月期、5月15日発表)
売上高2088億5900万円、営業利益55億1400万円。決算期の変更に伴い一部子会社の15カ月間の決算が含まれており、前期比は開示していない。従来の決算と同じ基準で比較すると、売上高は15.9%増、営業利益は64.7%減。三生医薬を連結子会社化したことで増収となった一方、原価率の上昇が利益を圧迫した。24年3月期は売上高2163億円、営業利益118億円を見込んでいる。
持田製薬(23年3月期、5月15日発表)
売上高1032億6100万円(前期比6.3%減)、営業利益85億700万円(40.9%減)。後発医薬品が参入した抗うつ薬「レクサプロ」が前期比34%減と落ち込んだことが響いた。24年3月期は売上高1040億円(0.7%増)、営業利益85億円(0.1%減)を見込む。
日本化薬(23年3月期、5月15日発表)
医薬事業の売上高は517億1100万円(前期比0.7%減)、セグメント利益86億9600万円(0.6%増)。薬価改定の影響を受けたものの、抗がん剤「ダルビアス」や同ベバシズマブのバイオシミラーの発売、同ペメトレキセドの後発品などの好調な市場浸透により、売り上げは前期並み、利益は微増となった。
三菱ケミカルグループ(23年3月期、5月12日発表)
医薬品事業の売上収益は5354億円(38.8%増)、営業利益843億円(前期は157億円の赤字)。ノバルティスとの係争が決着したことで、これまで収益認識できていなかった多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤリティ収入1259億円を一括計上し、3期ぶりの黒字となった。国内医療用医薬品では、乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」(662億円、28.5%増)などが拡大。筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカヴァ」の海外売上高は87.8%増の462億円だった。24年3月期は売上収益3885億円(27.4%減)、営業利益230億円(72.7%減)を見込む。
生化学工業(23年3月期、5月12日発表)
売上高334億5600万円(前期比4.0%減)、営業利益21億1400万円(53.0%減)。ロイヤリティ収入が前期比100%減となったことで減収減益となった。24年3月期は売上高325億5000万円(2.7%減)、営業利益1億円(95.3%減)を予想。増産体制の整備や燃料費高騰による原価上昇で大幅な減益を見込む。
日本ケミファ(23年3月期、5月12日発表)
売上高315億5900万円(前期比2.9%減)、営業利益2億4100万円の赤字(前期は8億2500万円の黒字)。後発医薬品の売上高は、昨年12月に一部製品の出荷を一時停止したことなどが響き、前期比5.6%減の248億300万円にとどまった。主力のアルカリ化療法剤「ウラリット」なども薬価改定の影響を受けた。24年3月期の業績予想は、売上高327億円(3.6%増)、営業利益2億円。
ヤクルト本社(23年3月期、5月12日発表)
医薬品製造販売事業の売上高は127億6300万円(前期比24.9%減)、営業利益1億円の赤字(前期は26億円の黒字)。薬価改定に加え、抗がん剤「オニバイド」のプロモーション契約が昨年9月に終了したことが響いた。24年3月期以降、医薬品事業は「その他事業部門」に含め、個別の業績開示は行わない。
武田薬品工業(23年3月期、5月11日発表)
売上収益4兆274億7800万円(前期比12.8%増)、営業利益4905億500万円(6.4%増)。前期比34.7%増の7027億円を売り上げた潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」や、40.4%増の4593億円を販売したADHD治療薬「ビバンセ」など、主力品が好調だった。日本の売上収益は22.3%減の5120億円。前年に糖尿病治療薬の譲渡額を計上した反動で減収となった。24年3月期の業績予想は売上収益3兆8400億円(4.7%減)、営業利益3490億円(28.8%減)。「ビバンセ」(米国)や高血圧症治療薬「アジルバ」(日本)の特許切れと、新型コロナウイルスワクチンの収益貢献がなくなることが響く。
参天製薬(23年3月期、5月11日発表)
売上収益2790億3700万円(前期比4.8%増)、営業利益30億9000万円の赤字(前期は358億8600万円の黒字)。昨年11月に改良製剤を投入した角結膜疾患治療薬「ジクアス」や抗アレルギー薬「アレジオン」などが伸び、日本の医療用医薬品は前期比1.9%の増収。新型コロナウイルスの影響を受けた中国を除くアジアやEMEAも主力品が堅調に推移した。一方、利益は米子会社や開発品に関する減損損失の計上によって各段階で赤字となり、最終利益は149億4800万円の赤字を計上した。24年3月期は売上収益2730億円(2.2%減)、営業利益320億円を予想している。
サワイグループHD(23年3月期、5月11日発表)
売上収益2003億4400万円(前期比3.4%増)、営業利益169億8400万円(前期は358億8800万円の赤字)。国内で21年度以降に発売した新製品が収益を支え、経費削減によって米国事業も黒字化した。24年3月期は売上収益2172億円(8.4%増)、営業利益151億円(11.1%減)を予想。原材料価格の上昇や、生産能力増強・新規事業の先行コスト増加が利益を圧迫する。
明治HD(23年3月期、5月11日発表)
医薬品セグメントの売上高は1972億円(前期比4.9%増)、営業利益217億円(16.4%増)。国内医薬品事業は抗菌薬「スルバシリン」や抗アレルギー薬「ビラノア」が売り上げを伸ばし、前期比10.4%増の1001億円。受託製造事業を行うインド子会社の増収などが寄与した海外医薬品事業も27.4%の増収と好調だった。24年3月期の医薬品セグメントの業績予想は、売上高2155億円(9.2%増)、営業利益250億円(15.1%増)。申請中の新型コロナウイルスワクチン「ARCT-154」は下期の業績貢献を見込む。
帝人(23年3月期、5月11日発表)
ヘルスケアセグメントの売上高は1524億円(前期比13.0%減)、営業利益235億円(45.7%減)。後発医薬品が参入した痛風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」の売上高が前期を243億円下回る145億円に落ち込んだ。24年3月期はヘルスエアセグメントで売上高1400億円(8.1%減)、営業利益165億円(29.8%減)を予想。引き続きフェブリクが後発品の影響を受ける。
日本新薬(23年3月期、5月11日発表)
売上収益1441億7500万円(前期比4.9%増)、営業利益300億4900万円(8.8%減)。肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」(105億4300万円、25.5%増)やデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(143億4100万円、85.0%増)などが伸びた一方、前期に優先審査バウチャーの売却収入を計上した反動で減益となった。24年3月期は売上収益1450億円(0.5%増)、営業利益320億円(6.5%増)を見込む。
杏林製薬(23年3月期、5月11日発表)
売上高1132億7000万円(前期比7.3%増)、営業利益51億2300万円(2.3%増)。過活動膀胱治療薬「ベオーバ」(49.8%増の129億円)や抗アレルギー薬「デザレックス」(20.6%増の85億円)などが伸びた。24年3月期の業績予想は売上高1162億円(2.6%増)、営業利益60億円(17.1%増)。
ゼリア新薬工業(23年3月期、5月11日発表)
売上高683億8300万円(前期比14.9%増)、営業利益90億1400万円(41.6%増)。医療用医薬品事業の売上高は431億4500万円(16.6%増)。海外で潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」や炎症性腸疾患治療薬「エントコート」などが好調だった。24年3月期の業績予想は売上高730億円(6.8%増)、営業利益91億円(0.9%増)。
あすか製薬HD(23年3月期、5月11日発表)
売上高604億6100万円(前期比6.8%増)、営業利益51億800万円(6.5%増)。子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「レルミナ」などが好調だった。24年3月期は売上高620億円(2.5%増)、営業利益54億円(5.7%)を見込む。
JCRファーマ(23年3月期、5月11日発表)
売上高343億4300万円(前期比32.8%減)、営業利益49億7500万円(75.0%減)。アストラゼネカからの新型コロナウイルスワクチン原液の受託製造が終了したことが影響した。24年3月期は売上高369億円(7.4%増)、営業利益56億円(12.5%増)を予想している。
大正製薬HD(23年3月期、5月11日発表)
売上高3013億8100万円(前期比12.4%増)、営業利益230億1800万円(114.3%増)。海外市場を中心にセルフメディケーション事業が好調だったが、医療用医薬品を含む医薬事業は前期比2.3%減の377億円にとどまった。24年3月期は売上高3145億円(4.4%増)、営業利益185億円(19.6%減)を見込んでおり、医薬事業は7.0%増の403億円を計画している。
小野薬品工業(23年3月期、5月10日発表)
売上収益4471億8700万円(前期比23.8%増)、営業利益1419億6300万円(37.6%増)。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が26.6%増の1423億円を売り上げ、SGLT2阻害薬「フォシーガ」も54.3%増の565億円と好調だった。24年3月期の業績予想は売上収益4750億円(6.2%増)、営業利益1530億円(7.8%増)。オプジーボは1550億円(8.9%増)、フォシーガは650億円(15.0%増)の売り上げを見込む。
塩野義製薬(23年3月期、5月10日発表)
売上収益4266億8400万円(前期比27.3%増)、営業利益1490億300万円(35.1%増)。新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」が1047億円を売り上げ、売り上げ、各利益とも過去最高を更新した。抗HIV薬を主とするロイヤリティー収入は1747億円(前期比3.6%減)。国内医療用医薬品(ゾコーバ除く)の売上高は750億円で15.8%減となった。24年3月期は売上収益4500億円(5.5%増)、営業利益1500億円(0.7%増)を予想。ゾコーバと申請中の新型コロナワクチンで計1050億円の売り上げを見込んでいる。
旭化成(23年3月期、5月10日発表)
医薬・医療事業の売上高は2002億円(前期比14.9%増)、営業利益は229億円(5.0%増)。骨粗鬆症治療薬「テリボン」の売上高は399億円(4.4%増)で、関節リウマチ治療薬「ケブザラ」も26.6%増の93億円と伸びた。24年3月期の医薬・医療事業は売上高2180億円(8.9%増)、営業利益211億円(7.9%減)を予想している。
科研製薬(23年3月期、5月10日発表)
売上高729億8400万円(前期比4.0%減)、営業利益79億9800万円(53.1%減)。薬価改定による減収に加え、導入品の契約一時金で研究開発費が大きく増えたことが利益を圧迫した。24年3月期は売上高731億円(0.2%増)、営業利益76億円(5.0%減)を見込む。
扶桑薬品工業(23年3月期、5月10日発表)
売上高510億1500万円(前期比2.8%増)、営業利益22億600万円(14.7%増)。後発医薬品の販売が好調だった。24年3月期の業績予想は、売上高533億円(4.5%増)、営業利益20億円(9.4%減)。
ツムラ(23年3月期、5月9日発表)
売上高1400億4300万円(前期比8.1%増)、営業利益209億1600万円(6.5%減)。中国で生薬の販売が伸び、海外事業は53.9%増の153億5900万円。国内もeプロモーションの拡充や処方拡大で4.3%の増収だった。一方、利益は中国の天津工場の稼働に向けた一時費用を計上した影響で減少した。24年3月期は売上高1505億円(7.5%増)、営業利益180億円(13.9%減)を見込む。
キッセイ薬品工業(23年3月期、5月8日発表)
売上高674億9300万円(前期比3.2%増)、営業利益11億2900万円の赤字(前期は14億200万円の赤字)。長期収載品が軒並み減収となったものの、過活動膀胱治療薬「ベオーバ」が44.9%増の117億9500万円を売り上げ、医療用医薬品全体は3.9%の増収。販管費の増加を増収で吸収できず、営業赤字となった。24年3月期は、売上高745億円(10.4%増)、営業利益42億円を見込む。
アステラス製薬(23年3月期、4月27日発表)
売上収益1兆5186億1900万円(前期比17.2%増)、営業利益1330億2900万円(14.6%減)。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が前期比23.7%増の6611億円、尿路上皮がん治療薬「パドセブ」が104.4%増の444億円を売り上げ、増収となった一方、腎性貧血治療薬エベレンゾの将来計画見直しや遺伝子治療薬の開発中止などによる減損損失(計846億円)を計上したことなどにより利益は減少した。24年3月期は、売上収益1兆5200億円(0.1%増)、営業利益2880億円(116.5%増)を予想。欧米で申請中のフェゾリネタントについては400~500億円の売り上げを織り込んでいる。
第一三共(23年3月期、4月27日発表)
売上収益1兆2784億7800万円(前期比22.4%増)、営業利益1205億8000万円(65.1%増)。主力の抗がん剤「エンハーツ」(2075億円、217.5%増)や抗凝固薬エドキサバン(2440億円、18.6%増)が伸び、大幅な増収増益となった。一方、国内医療用医薬品の売上高は、21年9月にネキシウムの共同販促が終了した影響で6.4%減の4579億円。24年3月期は、売上収益1兆4500億円(13.4%増)、営業利益1350億円(12.0%増)と3期連続の増収増益を見込む。
久光製薬(23年2月期、4月13日発表)
売上高1283億3000万円(前期比6.8%増)、営業利益115億9900万円(24.2%増)。国内は医療用、一般用とも前年を下回ったが、一般用を中心に海外事業が好調だった。24年2月期は、売上高1323億円(3.1%増)、営業利益118億円(1.7%増)を見込む。