主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2022年7月8日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・疾患領域別にまとめました。(昨年6月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|疾患領域編」はこちら)
P3~申請のパイプライン、10を超えるのは19社
集計対象としたのは、内資系企業29社、外資系企業17社。2022年7月8日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを疾患領域別にまとめました。
疾患領域は、▽がん▽呼吸器▽循環器・代謝・腎▽消化器▽皮膚▽骨・関節▽その他免疫・炎症▽神経・筋▽精神・中枢神経▽眼▽疼痛▽血液▽感染症・ワクチン▽その他――の14に分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。なお、いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合があります。 |
集計対象の46社のうち、臨床第3相(P3)試験から申請の段階にあるパイプライン数が10(新規有効成分と適応拡大の合計)を超える企業は、内資系5社・外資系14社の計19社。昨年6月時点の集計と比べると、アステラス製薬と大塚ホールディングス(HD)の2社がリストから姿を消し、協和キリン、グラクソ・スミスクライン(GSK)、ユーシービージャパンの3社が新たに加わりました。
P3~申請のパイプライン数が最も多いのはアストラゼネカで、新規有効成分16、適応拡大37の計53。新規有効成分に限ってみると、21のファイザーが最多で、19のサノフィが続きました。
領域別でみると、パイプラインが最も多いのは「がん」。第一三共やアストラゼネカ、中外製薬などが、肺がんや乳がんといった固形がんに対する新規の分子標的薬を複数開発しています。がん以外の領域では、新規有効成分で「感染症・ワクチン」「血液」の多さが目立ちます。いずれもサノフィとファイザーが複数の後期開発プロジェクトを進めています。
内資は「精神・中枢神経」、外資は「循環器・代謝・腎」
新規有効成分のプロジェクト数を内資系と外資系に分けて数えてみると、いずれも最も多いのはがんですが、その比率は外資系企業の方が高くなっています。がん以外の領域では、内資系企業で「精神・中枢神経」、外資系企業で「循環器・代謝・腎」が多いことがわかります。
昨年6月時点の集計と比べると、内資系企業のプロジェクト数はほぼ横ばいなのに対し、外資系企業では初期~中期パイプラインが30ほど増加しました(集計企業は1社減少)。
内資系企業29社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
大手の多くはがん領域に注力しており、大塚HDやエーザイ、小野薬品工業などはP1~P2段階にパプラインを多く抱えています。
武田は、シャイアー買収で獲得した希少血液疾患領域のほか、中枢神経領域でプロジェクトが進行中。住友ファーマも、統合失調症など精神・中枢神経のパイプラインに注力しています。塩野義製薬は注力領域の感染症・ワクチンや疼痛を中心に幅広い疾患領域で開発を進めています。
大手・準大手と中堅以下ではパイプラインの数に大きな差がありますが、中堅以下では皮膚疾患に注力するマルホや科研製薬、導入と自社開発の両輪でパイプラインを広げるキッセイ薬品工業や日本新薬などが5つ以上の新規有効成分を開発中。再生医療と眼科の医療用医薬品に取り組むロート製薬も10のプロジェクトを進めています。
外資系企業17社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
外資系企業は、全体的に内資系企業と比べてパイプラインが豊富。アッヴィや中外製薬、ファイザーなどは、対象とする疾患領域の幅が広く、後期段階だけでなくP1~P2にも多くのパイプラインを揃えています。
循環器・代謝・腎の領域では、アストラゼネカやノボ ノルディスクファーマ、ノバルティスファーマが心血管疾患や糖尿病、肥満症、腎臓病といった疾患を対象に複数のパイプラインを開発中。ブリストル・マイヤーズスクイブは非アルコール性脂肪肝炎で複数の新薬を開発しています。