AnswersNewsが22年3月期を中心に東証プライム上場の主要製薬企業41社(製薬が本業でない企業が手がける医薬品事業を含む)の直近の決算を集計したところ、売上高トップは3.6兆円の武田薬品工業、2位は1.5兆円の大塚ホールディングス(HD)、3位は1.3兆円のアステラス製薬でした。41社のうち大手から準大手は軒並み海外が好調で、多くの企業が増収を確保。売上高は41社全体で前期比9.6%増となりました。
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[売上高ランキング]オプジーボ好調の小野、協和キリン抜き9位に
国内製薬会社の売上高トップは今年も武田薬品工業。22年3月期は前期比11.6%増の3兆5690億円を売り上げました。主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(5218億円、前期比21.5%増)や遺伝性血管性浮腫治療薬「タクザイロ」(1032億円、19.1%増)がグローバルで好調だったほか、帝人ファーマに糖尿病治療薬4剤を売却して得た1330億円が増収に貢献しました。
2位の大塚HDの売上収益は5.3%増の1兆4983億円。3位は1兆2962億円(3.7%増)で3期ぶりの増収となったアステラス製薬でした。大塚は「イーケプラ」「スプリセル」、アステラスは「セレコックス」「リピトール」の共同販売契約終了が減収要因となったものの、グローバル製品の伸びでカバー。大塚はグローバル4製品(エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ)が前期比14.0%増の4898億円に拡大し、アステラスは前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が売上収益全体の約4割にあたる5343億円(16.6%増)を売り上げました。
4位の第一三共は、抗凝固薬エドキサバン(2056億円、23.9%増)や抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「エンハーツ」(808億円、85.9%増)が好調で、8.6%増の1兆449億円。2014年3月期以来、8期ぶりに売り上げ1兆円を達成しました。27.1%の大幅増収で5位となった中外製薬は、新型コロナウイルス感染症治療薬「ロナプリーブ」の販売などで1兆円に迫っています。エーザイは抗がん剤「レンビマ」(1923億円、43.6%増)が寄与し、17.1%増の7562億円で6位でした。
小野薬品工業は、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が1124億円(13.8%増)を売り上げたほか、20年に慢性心不全、21年に慢性腎臓病に適応拡大したSGLT2阻害薬「フォシーガ」(367億円、64.0%増)が伸長。売上収益3614億円(16.8%増)で協和キリンを抜き、前年の10位から順位を1つ上げました。
今年のランキングで売上高が1000億円を超えたのは23社で、このうち20社が増収を達成。小野薬品のほか、15位の帝人(ヘルスケア事業)と19位の日本新薬が2桁増収で前年から順位を上げました。帝人は武田から獲得した糖尿病治療薬4剤(276億円)が増収に貢献。日本新薬は、20年に日本と米国で承認されたデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」が前年3.2倍の77億5000万円を売り上げました。
後発医薬品企業では、売上収益1938億円(3.5%増)のサワイグループHDが2つ順位を上げ、3期ぶりに後発品メーカートップに返り咲きました。日医工は4.9%の減収で、東和薬品は6.9%増の1656億円を売り上げました。
中外 群抜く営業利益率
営業利益では、武田が9.5%の減益となったものの、4608億円で首位をキープ。前期にOTC子会社の譲渡益などを計上した反動で落ち込み、営業利益率も3ポイント減の12.9%となりました。2位は4219億円(40.1%増)で中外。血友病A治療薬「ヘムライブラ」関連でロイヤリティ収入が44.4%増加し、販管費が増えたにも関わらず大幅な増益となりました。営業利益率は42.2%と群を抜いています。
このほか、営業利益が1000億円を超えたのはアステラス(1557億円、14.4%増)と大塚HD(1545億円、22.2%減)、塩野義製薬(1103億円、6.1%減)、小野薬品(1032億円、4.9%増)。アステラスは増益だったものの、遺伝子治療薬の開発遅延などに伴い減損損失を749億円計上したことで会社計画は下回りました。大塚HDは販管費と研究開発費が膨らんだことで減益。塩野義も新型コロナウイルス感染症関連プロジェクトへの投資がかさみました。塩野義の営業利益率は32.9%で、前期から6.6ポイントのマイナスとなりました。
後発品メーカーでは、サワイグループHDと日医工が米国事業に関連して多額の減損損失を計上し、赤字に沈みました。日医工は、品質不正で業務停止命令を受けた富山第一工場からの出荷再開の遅れにより、原材料や製品の廃棄を見越した棚卸資産評価損も計上。1000億円を超える営業赤字となりました。
関連記事:ジェネリックメーカーの米国進出は失敗だったのか―サワイと日医工、減損で最終赤字
[研究開発費]トップ武田、2位第一三共 20社が2ケタ増
研究開発費のトップも5261億円(15.4%増)の武田。2位はADCへの投資を加速する第一三共(2602億円、14.5%増)で、3位は2460億円(9.6%増)のアステラスでした。武田やアステラスは海外での投資額が大きく、円安も費用増に影響しています。
大塚HDは、住友ファーマとの抗精神病薬の共同開発契約に伴う開発費などが増加し、7.1%増の2323億円。一方の住友ファーマは、減損損失の計上で費用がかさんだ前期の反動で28.5%の大幅減となりました。同社を追い抜く形で、中外(1373億円、16.5%増)と田辺三菱製薬(969億円、33.5%増)がそれぞれ1つ順位を上げています。
研究開発費を公表した34社のうち、20社が2ケタ増となりました。中でも、日本新薬は核酸医薬の治験薬製造費用の増加や契約一時金の計上で63.8%の大幅増。サワイグループHDは75.8%の増加でしたが、増加分のほとんどが米国事業の再構築に伴う減損損失です。売上高に対する比率では、36.1%の日本たばこ産業(医薬)がトップ。生化学工業(25.8 %)や田辺三菱(25.1%)、第一三共(24.9%)などが20%を超えました。
[海外売上高ランキング]アステラス、海外初の1兆円
海外売上高トップの武田(2兆9100億円、10.3%増)と2位のアステラス(1兆374億円、6.9%増)は、売り上げ全体の8割を海外で稼ぎました。イクスタンジが米欧で伸びたアステラスは、初めて海外売上高が1兆円を突破。売上高に対する比率では、エーザイ(67.8%)や住友ファーマ(66.2%)、塩野義(64.4%)が60%を超えています。
海外売上高を公表した25社のうち、ほとんどが前期から海外での売り上げを伸ばしました。中国で生薬の販売が伸びたツムラが56.9%の大幅増となったほか、科研製薬が爪白癬治療薬「クレナフィン」(海外製品名・Jublia)の伸長で41.1%増。日本新薬(35.8%)やエーザイ(34.1%増)も売り上げを大きく拡大しました。
[今期売上高予想]中外、売り上げ1兆円突破へ…後発品は東和が首位に
武田や大塚HDなど上位5社は、いずれも主力品の成長を見込み、増収増益を予想。中外は今期、売上収益1兆円を突破する見通しです。営業利益では、販管費の見直しを進めるアステラスが72.8%増の予想。第一三共は、前期に工場の環境対策費用などを損益として計上していたこともあり、43.8%の増益を見込みます。
関連記事:中外製薬、1兆円企業に…初の「国内首位」ロシュグループでも増す存在感
一方、減収を見込むのがエーザイ(7.4%減)と住友ファーマ(1.8%減)。エーザイは主力品の成長を見込むものの、マイルストン収入の減額が響くとみています。住友ファーマは、武田に移管したファブリー病治療薬「リプレガル」の販売終了や薬価改定によるマイナスで減収減益の予想。通風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」に後発品が参入する帝人(ヘルスケア)や、薬価改定の影響を大きく受ける持田製薬なども大幅な減益を見込んでいます。
後発品企業では、東和が売上高2125億円で首位に浮上する見通し。サワイグループHDも2000億円突破を目指します。経営再建に向けて事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請した日医工は業績予想の開示を見送りました。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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