主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2024年7月8日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・疾患領域別にまとめました。(昨年7月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|疾患領域編」はこちら)
内資5社・外資12社でP3~申請のパイプライン数10超
内資系製薬企業28社、外資系製薬企業18社を対象に、2024年7月8日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを疾患領域別にまとめました。
疾患領域は、▽がん▽呼吸器▽循環器・代謝・腎▽消化器▽皮膚▽骨・関節▽その他免疫・炎症▽神経・筋▽精神・中枢神経▽眼▽疼痛▽血液▽感染症・ワクチン▽その他――の14に分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。適応拡大には剤形追加が含まれます。なお、いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合があります。 |
集計対象46社のうち、臨床第3相(P3)試験から申請の段階にあるパイプライン数(新規有効成分と適応拡大の合計)が10を超える企業は、内資系5社・外資系12社の計17社。昨年7月時点と比べるとエーザイとユーシービージャパン、バイエル薬品がリストから外れ、全体としては3社減少しました。
P3~申請のパイプライン数が最も多かったのはアストラゼネカ。新規有効成分22、適応拡大37の計59で、昨年に続いてトップとなりました。中でもがん領域が新規有効成分15、適応拡大25の計40と大半を占めています。新規有効成分に限ってみても同社が最多でした。
アストラゼネカに続いたのは計37の中外製薬(新規有効成分16、適応拡大21)。同社もがん領域が多く、計24のパイプラインを抱えています。内資系で最も多いのは計23(新規有効成分13、適応拡大10)の第一三共。抗体薬物複合体(ADC)の開発が活発です。
内資系企業28社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
P1から申請までの全パイプライン数が30を超えたのは、第一三共(計46)、大塚ホールディングス(HD、計37)、小野薬品工業(計31)の3社です。
第一三共は、HER2標的の「エンハーツ」やTROP2標的のダトポタマブ デルクステカンなど、注力する5つのADCを中心に開発が進んでおり、がんで41を数えます。大塚HDも、グループの大鵬薬品工業や英アステックスなどを通じて、がんで22品目を開発中。同社は循環器・代謝・腎領域や精神・中枢神経領域でも後期開発パイプラインを4つずつ持っています。小野薬品もがんで計24を揃え、P1~P2にも自社創製品を中心に複数の品目が並びます。
エーザイとアステラス製薬も国内パイプラインの半数以上ががん領域。一方、武田薬品工業は消化器領域と精神・中枢神経領域がやや目立つ印象で、それ以外は幅広く開発を行っています。これらに加え、感染症領域で10品目開発する塩野義製薬と、日本新薬、ロート製薬を含む9社が10以上のプロジェクトを進行中。一方でプロジェクト数が5を下回った企業は10社ありました。
外資系企業18社の国内新薬開発パイプライン(疾患領域別)
外資系企業は、18社中15社が10以上のパイプラインを持っています。そのうちパイプライン数が30を超えたのは、アストラゼネカ(計95)、中外(68)、アッヴィ(59)、ブリストル・マイヤーズスクイブ(52)など12社。全体的に昨年7月の時点に比べてパイプライン数は増加しています。
外資系も多くががん領域に注力しており、特に新規有効成分の開発が活発。アストラゼネカと中外、アッヴィ、ブリストル、ギリアド・サイエンシズ、グラクソ・スミスクライン(GSK)、メルクバイオファーマの7社は新規有効成分の半分以上ががん領域のプロジェクトです。がん以外は各社で異なっており、たとえばアストラゼネカは循環器・代謝・腎領域、アッヴィは精神・中枢神経領域の開発品目が多くなっています。
一方、循環器・代謝・腎領域に特化するノボノルディスクファーマや、皮膚・呼吸器などの免疫領域に取り組むサノフィ、精神・中枢神経領域に集中するユーシービージャパンはほかの企業とは違ったパイプラインの構成となっています。