主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2023年11月22日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・創薬モダリティ別にまとめました。(昨年11月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|モダリティ編」はこちら)
主要内資、抗体医薬の割合が上昇
集計対象としたのは内資系企業27社、外資系企業17社。2023年11月22日時点で各社がホームページで公表している日本国内の開発品を創薬モダリティ別にまとめました。
創薬モダリティは、▽低分子化合物▽抗体医薬▽その他バイオ医薬品(タンパク製剤、ワクチンなど)▽核酸医薬▽細胞治療(医薬品医療機器等法の「細胞加工製品」に該当するもの)▽遺伝子治療(同法の「遺伝子治療用製品」に該当するもの)▽ペプチド医薬(インスリンを除く)▽その他・不明――の8つに分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。ホームページに掲載されている情報がいつの時点のものかは企業によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合があります。 |
集計対象企業のうち、主要企業(内資11社、外資15社)についてパイプラインにある新規有効成分に占める各モダリティの割合を算出したところ、最も大きかったのは主要内資が「低分子」(48%)、主要外資が「抗体医薬」(43%)で、いずれも1年前の集計と傾向は同じでした。
過去2回の集計と比較すると、主要内資では抗体医薬の割合が拡大。21年11月時点では23%でしたが、22年は26%、23年は32%と徐々に増えています。新規モダリティでは、主要内資は「細胞医薬」と「ペプチド医薬」(いずれも3.5%)、主要外資は「核酸医薬」(3.7%)とペプチド医薬(3.4%)が目立ちます。
内資系企業27社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
抗体医薬の比率が増える主要内資の中でも、特に第一三共や田辺三菱製薬で抗体医薬の開発が活発です。第一三共は注力する抗体薬物複合体(ADC)が多く、田辺三菱製薬は自己免疫疾患やがんの領域でADCを含む抗体医薬を開発しています。小野薬品工業は、主力の抗PD-1抗体「オプジーボ」の適応拡大に加え、同薬との併用療法で開発を進める複数の新規抗体医薬をパイプラインに抱えています。
このほか新規有効成分のパイプラインが多いのは、エーザイや大塚HD(ホールディングス)、塩野義製薬、武田薬品工業など。大塚やエーザイは低分子が中心で、塩野義や武田は、タンパク製剤、ペプチド医薬、細胞治療なども含めて幅広く開発を行っている印象です。
適応拡大も含むプロジェクト数が2桁に及ぶのは27社中11社。ほとんどは大手・準大手で、それ以外では明治HDとロート製薬がパイプラインが豊富です。明治HDは次世代mRNAワクチンを含むワクチン、ロート製薬は再生医療で特に活発な開発を行っています。
外資系企業17社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
外資系企業では、集計対象とした17社のうちメルクバイオファーマとユーシービージャパンを除く15社が2桁のプロジェクトを抱えており、内資系企業と比べて新規有効成分の開発品目数も豊富なことがうかがえます。
中でもアストラゼネカは78、中外製薬は61のプロジェクトが進行中で、両社とも新規有効成分だけで40を超えるプロジェクトを抱えています。その中身を見てみると、アストラゼネカは新規有効成分の49%が低分子化合物で、40%が抗体医薬。一方、中外製薬は新規有効成分の69%が抗体医薬でした。中外はP1試験の段階にあるパイプラインの半分以上が自社創製品です。
中外のほかに開発中の新規有効成分で抗体医薬が半分以上を占めたのは、ギリアド・サイエンシズ(70%)とグラクソ・スミスクライン(GSK、62%)。一方、日本ベーリンガーインゲルハイム(NBI)やファイザー、ブリストル・マイヤーズスクイブは新規の低分子化合物の開発も活発です。
ノボノルディスクファーマはGLP-1受容体作動薬治療薬をはじめとするペプチド医薬のパイプラインを多く揃えているほか、ファイザーがP3試験の段階で遺伝子治療薬を開発中。アストラゼネカやアムジェン、日本イーライリリーなどは循環器領域で核酸医薬の開発を進めています。