主要製薬企業の国内の新薬開発パイプラインを、2022年11月25日時点で各社が公表している情報をもとに企業別・創薬モダリティ別にまとめました。(昨年11月時点の「[定点観測]主要製薬企業 国内新薬開発パイプライン|モダリティ編」はこちら)
外資の開発品、過半数がバイオ医薬
集計対象としたのは、内資系企業28社、外資系企業18社。2022年11月25日時点で各社がホームページなどで公表しているパイプラインを創薬モダリティ別にまとめました。
モダリティは、▽低分子化合物▽抗体医薬▽その他バイオ医薬品(タンパク製剤、ワクチンなど)▽核酸医薬▽細胞治療(医薬品医療機器等法の「細胞加工製品」に該当するもの)▽遺伝子治療(同法の「遺伝子治療用製品」に該当するもの)▽ペプチド医薬(インスリンを除く)▽その他・不明――の8つに分類。新医療用配合剤は新規有効成分としてカウントし、後発医薬品やバイオシミラーは除外しました。いつ時点の情報かは企業によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合があります。 |
集計対象企業のうち、主要内資系企業11社と主要外資系企業16社を抜き出して新規有効成分に占める各モダリティの割合を算出したところ、最も大きかったのは主要内資が「低分子」(44%)、主要外資が「抗体医薬」(43%)でした。
主要外資の開発品は、半分以上(54%)が「抗体医薬」か「その他バイオ医薬品」。その割合は、昨年11月時点と比べて7ポイント上昇しています。
他方、新規モダリティをみてみると、主要内資ではCAR-T細胞療法やiPS細胞由来製品といった「細胞治療」(5%)の割合が大きく、主要外資ではアンチセンス核酸などの「核酸医薬」(4%)が目立ちました。
内資系企業28社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
内資系企業全体では、開発パイプラインの49%が低分子化合物でした。大手企業でも、エーザイや大塚ホールディングス(HD)などは低分子が中心。一方、抗体薬物複合体(ADC)フランチャイズに注力する第一三共や、抗PD-1抗体「オプジーボ」の単剤・併用療法を開発する小野薬品工業では、抗体医薬のパイプラインが目立ちます。
内資系企業では、大手・準大手と中堅以下でパイプライン数に大きな差があり、会社の規模が大きいほどモダリティの多様化が進んでいる傾向が見て取れます。中でもアステラス製薬は、細胞治療と遺伝子治療にリソースを注いでおり、臨床第1相(P1)試験からP2試験の段階に新規モダリティの開発品を複数抱えています。
新規モダリティではこのほか、武田薬品工業がCAR-T細胞療法を開発中。第一三共も新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンの試験を複数行っています。大手以外では、キッセイ薬品工業が腫瘍溶解性ウイルスを導入して開発しているほか、ロート製薬が細胞による再生医療に挑んでいます。
外資系企業18社の国内新薬開発パイプライン(モダリティ別)
外資系企業では、内資系企業と比べて全体的に抗体医薬の開発が活発なことがうかがえます。中でも中外製薬はパイプラインの75%が抗体医薬。ロシュからの導入品に加え、独自の抗体エンジニアリング技術による自社創製品で豊富なパイプラインを構築しています。
中外のほかに抗体医薬がパイプラインの半分以上を占めるのは、グラクソ・スミスクライン(GSK、65%)、サノフィ(61%)、アムジェン(55%)、アストラゼネカ(54%)。各社ともがんや自己免疫疾患の領域で抗体医薬を開発中です。アッヴィもP1試験の段階にがんに対する抗体医薬を多くそろえています。
バイオ医薬品が目立つ外資系ですが、ノバルティスファーマやブリストル・マイヤーズスクイブ、ファイザー、アストラゼネカなどは低分子医薬品の数も多くなっています。アストラゼネカや中外製薬、MSD、日本イーライリリーなどはがんや自己免疫疾患の領域を中心に適応拡大に向けた開発も活発です。
新規モダリティでは、ノバルティスが「ゾルゲンスマ」に続く遺伝子治療を申請中。ファイザーもP3段階に3つ遺伝子治療を持っています。核酸医薬は、アストラゼネカやノバルティスなど複数の企業がP3試験を進行中。ヤンセンファーマはCAR-T細胞療法の開発に力を入れています。