製薬企業が決算で公表した製品別売上高などをもとに、2022年度の国内売上高が50億円以上の医療用医薬品185品目をランキングしました。1位は小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」。過去3年にわたってトップだったMSDの同「キイトルーダ」(2位)を抜き、首位を奪取しました。3位はアストラゼネカの抗がん剤「タグリッソ」。4位の新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」(ギリアド・サイエンシズ)、5位の抗凝固薬「リクシアナ」(第一三共)までが売上高1000億円を超えました。
1000億円超は5製品
2022年度に国内で最も売れた医療用医薬品は、前年度比26.6%増の1423億円を売り上げた小野薬品工業の抗PD-1抗体「オプジーボ」でした。2019年度から21年度までトップだったMSDの同「キイトルーダ」(薬価ベースで1346億円、12.6%増)を抑え、2014年の発売以来初の首位を獲得しました。
オプジーボは21年11月に承認された「胃がん1次治療」で新規処方シェアを71%にまで伸ばしたのに加え、食道がんでも処方を急速に拡大。22年度の新規処方患者数は約3万6000人で、29%増加しました。キイトルーダも22年に子宮頸がんやトリプルネガティブ乳がん術後補助化学療法などに適応を拡大し、販売数量を伸ばしたものの、金額ではオプジーボの伸びに及びませんでした。
3位はアストラゼネカの肺がん治療薬「タグリッソ」で、薬価ベースで7.1%増の1111億円を売り上げました。昨年8月にはEGFR変異陽性肺がんの術後補助療法に適応拡大し、より早期の治療にも使用を広げています。トップ3の顔ぶれは前年と同じでした。
「フォシーガ」「ジャディアンス」がトップ20入り
4位にはギリアド・サイエンシズの新型コロナ治療薬「ベクルリー」がランクインしました。2021年10月に一般流通を開始した同薬は、22年度に1077億円(408.2 %増)を販売。IQVIAの統計をもとに計算すると、ギリアドは同薬で製品売上高の6割弱を稼いでいることになります。新型コロナ治療薬ではこのほか、中外製薬が「ロナプリーブ」の政府購入分として2037億円を計上しましたが、一般流通していないため今回のランキングからは除外しています。塩野義製薬の「ゾコーバ」も政府購入分1000億円を含めて1047億円を売り上げましたが、一般流通の売上高は50億円を下回ったため、集計の対象には入っていません。
5位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」で、売上高は13.7%増の1051億円。市場での金額シェアは4割を超え、売上高1000億円の大台を突破しました。6位は935億円の消化性潰瘍治療薬「タケキャブ」(武田薬品工業)。処方量は増加したものの、昨年4月の薬価改定で市場拡大再算定により薬価が15.8%引き下げられたため、売り上げは1.1%減少しました。
上位20製品で前年から売り上げを落としたのは9品目。タケキャブのほか、7位の抗凝固薬「イグザレルト」(803億円、1.4%減)、8位の高血圧症治療薬「アジルバ」(729億円、4.5%減)などが前年を下回りました。バイオシミラー参入から3年がたった11位の抗がん剤「アバスチン」は16.6%減の675億円。21年にバイオシミラーが発売された抗TNFα抗体「ヒュミラ」は6.8%減の472億円でした。
一方、トップ20で売り上げを大きく伸ばしたのは、小野薬品のSGLT2阻害薬「フォシーガ」(565億円、54.3%増)や日本ベーリンガーインゲルハイムの同「ジャディアンス」(448億円、31.3%増)など。適応追加した慢性心不全や慢性腎臓病(フォシーガのみ、ジャディアンスは申請中)で使用を広げており、両剤とも初めてトップ20に入りました。中外の血友病A治療薬「ヘムライブラ」も493億円(18.5%増)で18位に入っています。
「エブリスディ」「ジセレカ」など市場浸透で大幅増
集計対象となった185品目のうち、前年度からの増加率が最も大きかったのは408.2%増のベクルリー。21年8月発売の脊髄性筋萎縮症治療薬「エブリスディ」(中外)は順調に市場に浸透し、400%増の115億円を売り上げました。エーザイのJAK阻害薬「ジセレカ」は22年3月に潰瘍性大腸炎に適応を広げて379.6%増。21年11月発売のアステラス製薬の抗がん剤「パドセブ」も377.8%増となりました。
武田薬品工業のファブリー病治療薬「リプレガル」は22年2月に住友ファーマから販売移管した製品。通年で売り上げを計上したことで282.6%増となりました。武田薬品の製品では、21年8月発売の短腸症候群治療薬「レベスティブ」も267.7%増と大きく伸びています。中外のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫治療薬「ポライビー」は、未治療患者に対象が拡大し、127.9 %の売り上げ増となりました。
一方、売り上げの減少率が大きかったのは、いずれも日本イーライリリーの抗がん剤「アリムタ」(74.3%減)、抗精神病薬「サインバルタ」(67.3%減)、骨粗鬆症治療薬「フォルテオ」などで、これら3剤は後発医薬品やバイオシミラーの浸透が響きました。帝人ファーマの高尿酸血症・通風治療薬「フェブリク」(62.6%減)や武田薬品の高脂血症治療薬「ロトリガ」(48.8%減)、持田製薬の「レクサプロ」(34.0%減)にも、昨年後発品が発売されました。
[ランキング]年間売上高50億円以上の185品目
ここからは、2022年度に国内で50億円以上を売り上げた医療用医薬品185品目のランキングです。
【注意事項】ランキングは▽国内製薬会社の23年3月期(22年12月期、23年2月期の企業もあり)▽外資系企業の業績発表資料(データ元はIQVIA)▽IQVIAの市場統計――などをもとに作成。集計対象は年間売上高が50億円以上の先発医薬品とバイオシミラー(BS)、オーソライズド・ジェネリック(AG)。販売元と製造販売元がそれぞれ売り上げを公表している場合は販売元の数値を記載。外資系企業の多くは国内の製品売上高を公表しておらず、ランキングに反映されていない品目もあります。薬価ベースで売り上げを算出している製品(IQVIAのデータが該当)は、仕切価格をベースに算出している製品(国内製薬会社の決算発表が該当)より売り上げの額が大きくなるのが一般的です。 |
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
あわせて読みたい
関連キーワード
オススメの記事
人気記事
【無料】製薬業界専門転職サポート
【無料】製薬業界専門転職サポート
製薬業界専任のコンサルタントが、悩みや不安を元にキャリアについてアドバイスさせていただきます。
まずはお気軽にお申し込みください。