2022年に国内で承認された新薬(新医薬品)をAnswersNewsが企業別に集計したところ、承認数が最も多かったのは10の承認を取得した中外製薬でした。新規有効成分に限ると、サノフィが5成分の承認を取得してトップとなりました。
承認取得は59社、上位はグローバル大手
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が年度ごとにまとめている「新医薬品の承認品目一覧」をもとに、「新規有効成分等(新規有効成分、新医療用配合剤、既承認成分でも異なる製品として承認されたもの)」と「その他(適応拡大や新投与経路など)」に分けて集計しました。不妊治療の保険適用に向けた承認や再生医療等製品は除外しており、後発医薬品やバイオシミラーも含みません。
2022年に新医薬品の承認を取得したのは59社。このうち、承認数が最も多かったのは承認数10(新規有効成分等1・その他9)の中外製薬でした。新規有効成分では、同社にとって眼科領域初の製品となる「バビースモ硝子体内注射液」(適応=加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫)が3月に承認。残る9つの承認は適応拡大で、抗PD-L1抗体「テセントリク点滴静注」(非小細胞肺がんの術後補助療法)や抗CD79b抗体薬物複合体(ADC)「ポライビー点滴静注用」(未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)など、がん領域で8つの承認を取得したほか、主力の「ヘムライブラ皮下注」が後天性血友病Aに適応拡大しました。
承認数9(新規有効成分等3・その他6)で2位となったのはアストラゼネカ。新規有効成分では新型コロナウイルス感染症に対する抗体カクテル療法「エバシェルド筋注」と重症喘息治療薬「テゼスパイア皮下注」、抗CTLA-4抗体「イジュド点滴静注」(非小細胞肺がん、肝細胞がん)の承認を取得しました。イジュドと併用する抗PD-L1抗体「イミフィンジ点滴静注」は、胆道がんと肝細胞がんへの適応拡大の承認も取得。これらを含め、がん領域で6つの適応拡大の承認を取得しました。
3位のMSD(承認数8=新規有効成分等2・その他6)は、慢性咳嗽治療薬「リフヌア錠」や肺炎球菌ワクチン「バクニュバンス水性懸濁注シリンジ」が新規有効成分として承認。6つの適応拡大のうち5つは抗PD-1抗体「キイトルーダ点滴静注」に関するもので、子宮頸がんや腎細胞がんの術後補助療法などへの適応拡大が承認されました。4位はファイザー(承認数7=新規有効成分等2・その他5)で、抗ウイルス薬「パキロビッドパック」やワクチン「コミナティ筋注」のオミクロン株対応製剤など、新型コロナウイルス感染症関連で5つの特例承認を取得しました。5位は承認数6(新規有効成分等5・その他1)のサノフィでした。
上位5社はすべて外資系企業で、6位以下も上位にはパイプラインが豊富なグローバル大手が並んでいます。2021年のランキングでファイザー、MSDとともに首位だった武田薬品工業は承認数4(新規有効成分等2・その他2)で7位、小野薬品は承認数3(いずれもその他)で9位。キイトルーダとシェアを争う同「オプジーボ点滴静注」は尿路上皮がん術後補助療法と食道がんの2つの適応拡大が承認されました。
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新規有効成分は40社56品目が承認
新規有効成分等に限って見てみると、トップは5成分が承認されたサノフィ。▽酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症治療薬「ゼンフォザイム点滴静注用」▽寒冷凝集素症治療薬「エジャイモ点滴静注」▽後天性血栓性血小板減少性紫斑病治療薬「カブリビ注射用」▽4価髄膜炎菌ワクチン「メンクアッドフィ筋注」▽子宮頸がん治療薬「リブタヨ点滴静注」――の承認を取得しました。このうち、ゼンフォザイムは先駆け審査指定制度(現在の先駆的医薬品等指定制度)の対象品目。同薬とエジャイモ、カブリビが希少疾病用医薬品の指定を受けており、希少疾患への同社の注力を示す形となりました。
3成分でサノフィに続いたのは、イジュドなど3つの抗体医薬の承認を取得したアストラゼネカ。2成分には、MSDやファイザーなど10社が並びました。22年に承認された新規有効成分等は56品目で、昨年から5品目増加。承認を取得した企業は40社でした。
22年承認の新規有効成分等を領域別に見ると、がん(9品目)が最も多く、神経と皮膚(いずれも7品目)がこれに続きました。新型コロナ関連では、パキロビッドや塩野義製薬の「ゾコーバ錠」など5品目が承認されています。
薬価基準未収載品や薬価収載前のものなどを除いた39品目のうち、中央社会保険医療協議会(中医協)の資料でピーク時売上高予測(薬価ベース)が100億円を超えたのは10品目。最高はアルジェニクスジャパンの重症筋無力症治療薬「ウィフガート点滴静注」(377億円)で、中外のバビースモ(320億円)やバイエル薬品の慢性腎臓病治療薬「ケレンディア錠」(264億円)など5成分が200億円を超えています。