2021年に国内で承認された新薬(新医薬品)をAnswersNewsが企業別に集計したところ、承認数が最も多かったのは7つの承認を取得したファイザー、武田薬品工業、MSD、小野薬品工業の4社でした。新規有効成分では3つの承認を取得したファイザーや武田がトップとなりました。
新型コロナ関連で特例承認 グローバル大手が上位に
医薬品医療機器総合機構(PMDA)が年度別にまとめている「新医薬品の承認品目一覧」をもとに集計したところ、21年に新医薬品の承認を取得したのは58社。このうち、承認数が最も多かったのは▽ファイザー▽武田薬品工業▽MSD▽小野薬品工業――の4社で、それぞれ「新規有効成分」と「その他(適応拡大や新投与経路など)」合わせて7つの承認を取得しました。
ファイザーは、新規有効成分としてトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬「ビンマックカプセル」とアトピー性皮膚炎治療薬「サイバインコ錠」、新型コロナウイルスワクチン「コミナティ筋注」の承認を取得しました。新規有効成分以外では、コミナティが昨年11月に3回目接種での使用が承認。2018年に発売したALK阻害薬「ローブレナ錠」は、未治療のALK陽性非小細胞肺がん患者に適応拡大しました。
武田は新型コロナワクチン「スパイクバックス筋注」や短腸症候群治療薬「レベスティブ皮下注用」など、3つの新規有効成分の承認を取得。がん領域では、グローバルブランドと位置付けるALK阻害薬「アルンブリグ錠」が新規有効成分として承認されたほか、適応追加として▽多発性骨髄腫治療薬「ニンラーロカプセル」(初回治療後の維持療法)▽キナーゼ阻害薬「カボメティクス錠」(免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ点滴静注」との併用療法)――が承認されました。
小野・MSD 免疫チェックポイント阻害薬で複数の適応を追加
小野のオプジーボは、カボメティクスとの併用療法以外にも5つの適応拡大の承認を取得。単剤療法では▽古典的ホジキンリンパ腫(小児適応)▽食道がんの術後補助療法▽原発不明がん――、併用療法では▽悪性胸膜中皮腫(ブリストル・マイヤーズスクイブの免疫チェックポイント阻害薬「ヤーボイ」との併用療法)▽進行・再発胃がん(化学療法併用)――が承認されました。新規有効成分としては、世界初のがん悪液質治療薬「エドルミズ錠」の承認を取得しています。
MSDも、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ点滴静注」で、▽MSI-Highを有する結腸・直腸がん▽PD-L1陽性/HER2陰性の再発乳がん(化学療法併用)▽進行・再発食道がんの一次治療(化学療法併用)▽進行・再発の子宮体がん(エーザイの抗がん剤「レンビマ」との併用療法)――の4つの適応拡大を取得。新規有効成分では、感染症領域で新型コロナ治療薬「ラゲブリオカプセル」とβ-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤「レカルブリオ配合点滴静注用」の2品目が承認されました。
4社に続く5位は中外製薬。新型コロナ治療薬「ロナプリーブ点滴静注セット」など6つの承認を取得しました。7位までに入った上位11社のうち、武田と小野、エーザイを除く8社は外資系企業。新型コロナワクチン「バキスゼブリア筋注」が承認されたアストラゼネカや、JAK阻害薬「オルミエント錠」が新型コロナ肺炎に適応拡大した日本イーライリリーを含め、コロナ関連で特例承認を得たグローバル大手が並びました。
新規有効成分は51品目承認
新規有効成分に限ってランキングしてみると、トップは3成分が承認された▽アストラゼネカ▽バイエル薬品▽ファイザー▽中外▽武田――の5社。このうち新型コロナワクチン・治療薬を持っていないのはバイエル薬品だけでした。同社は、慢性心不全治療薬「ベリキューボ錠」と腎性貧血治療薬「マス―レッド錠」、TRK阻害薬「ヴァイトラックビカプセル」の承認を取得しました。
21年に承認された新規有効成分は51品目で、昨年から10品目増加しました。最も多かったのはがん領域で、承認数は16品目。糖尿病やライソゾーム病などの内分泌・代謝領域がこれに続きました。
51品目のうち、中央社会保険医療協議会(中医協)の資料でピーク時売上高予測(薬価ベース)が100億円を超えたのは12品目。最高はファイザーのビンマック(524億円)で、ヤンセンファーマの多発性骨髄腫治療薬「ダラキューロ配合皮下注」(370億円)、日本イーライリリーの片頭痛治療薬「エムガルティ皮下注」(173億円)が続きました。片頭痛治療薬では、アムジェンの「アイモビーグ皮下注」(153億円)と大塚製薬の「アジョビ皮下注」(137億円)もピーク時予測が100億円を超えています。
先駆け審査指定制度の対象品目では、オーファンパシフィックの遺伝性血管性浮腫発作抑制薬「オラデオカプセル」とJCRファーマのムコ多糖症II型治療薬「イズカーゴ点滴静注用」が承認を取得しました。
投与経路医薬品では4品目が承認されました。ファイザーの梅毒治療薬「ステルイズ水性懸濁筋注」は厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の評価結果に基づき、厚生労働省が同社に開発を要請した品目。このほか、インスメッドの難治性肺MAC症治療薬「アリケイス吸入液」やノバルティスファーマの多発性硬化症治療薬「ケシンプタ」が承認され、アリケイスはピーク時に177億円を、ケシンプタは99億円の売上高を予測しています。