国内主要製薬企業の2024年3月期第2四半期決算のハイライトをまとめました。随時更新(最終更新11月14日)
日本新薬(11月13日発表)
▽売上収益733億1400万円(前年同期比3.1%増)▽営業利益208億7800万円(9.0%増)▽税引前四半期利益211億4600万円(9.0%増)▽四半期利益161億7600万円(6.3%増)。
肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療剤「ウプトラビ」やデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」などが売り上げを伸ばし、ウプトラビのロイヤリティ収入も増加。機能食品事業も好調だった。24年3月期の業績予想は、売上収益1470億円(従来予想比20億円増)、営業利益335億円(15億円増)に上方修正した。
東和薬品(11月13日発表)
▽売上高1073億9600万円(前年同期比18.7%増)▽営業利益70億300万円(117.5%増)▽経常利益102億3300万円(122.0%増)▽純利益69億5300万円(158.3%増)。
近年の追補品を中心に販売数量が伸び、販管費の消化が遅れたことで利益も拡大。円安によるデリバティブ評価益の発生で経常利益、純利益も大幅に増加した。24年3月期の業績予想は、従来予想(売上高2163億円、営業利益118億円)を据え置いた。
大正製薬HD(11月10日発表)
▽売上高1630億9700万円(前年同期比12.9%増)▽営業利益163億6000万円(34.0%増)▽経常利益190億7900万円(10.0%増)▽純利益74億5000万円(31.5%減)。
医薬事業は18.6%の増収。糖尿病治療薬「ルセフィ」や骨粗鬆症治療薬「ボンビバ」などが伸びた。一方、早期退職の関連費用を特別損失に計上したことから純利益は大幅に減少。24年3月期の業績予想は、売上高3190億円(従来予想比45億円増)、営業利益205億円(20億円増)に修正。純利益予想は25億円減の105億円に引き下げた。
サワイグループHD(11月10日発表)
▽売上収益1067億8900万円(前年同期比10.8%増)▽営業利益106億8100万円(21.1%増)▽税引前利益106億600万円(21.8%増)▽四半期利益84億4400万円(26.8%増)。22年度以降に発売した新製品が売り上げを伸ばした。24年3月期の業績予想は従来予想(売上収益2172億円、営業利益151億円)を据え置いた。
明治HD(11月9日発表)
医薬品セグメントの業績は、▽売上高1008億円(前年同期比3.8%増)▽営業利益159億円(8.5%増)。抗菌薬を中心に国内で医薬品の販売が伸びたほか、小田原工場の分社化が費用減に寄与。海外事業も増益となった。24年3月期通期業績は、売上高2081億円、営業利益220億円を予想。新型コロナウイルスワクチン「ARCT-154」の業績貢献が見込めなくなったと判断し、期初予想(売上高2155億円、営業利益250億円)から下方修正した。
杏林製薬(11月8日発表)
▽売上高549億3700万円(前年同期比11.9%増)▽営業利益11億4400万円(47.2%増)▽経常利益13億8700万円(18.4%増)▽純利益17億5700万円(41.4%増)。
主力の過活動膀胱治療薬「ベオーバ」やニューキノロン系抗菌薬「ラスビック」が大幅に伸び、新製品の咳嗽治療薬「リフヌア」や後発医薬品も好調に推移した。24年3月期の業績予想は、従来予想(売上高1162億円、営業利益60億円)を据え置いた。
科研製薬(11月8日発表)
▽売上高361億7100万円(前年同期比1.8%減)▽営業利益55億1200万円(32.8%減)▽経常利益57億2200万円(33.1%減)▽純利益40億6800万円(31.8%減)。
原発性腋窩多汗症治療薬「エクロック」や関節機能改善薬「アルツ」などの売り上げが増加したものの、競合品や薬価改定の影響に加え、戦略投資をしたことで減収減益となった。24年3月期の業績予想は、従来予想(売上高731億円、営業利益76億円)に変更はない。
生化学工業(11月8日発表)
▽売上高180億6100万円(前年同期比4.7%増)▽営業利益14億8200万円(43.2%減)▽経常利益23億2700万円(35.4%減)▽純利益21億200万円(33.1%減)。
関節機能改善剤「アルツ」は競合品からの切り替え施策が奏功し、販売数量が増加。ロイヤリティの増加もあって増収となった一方、原価率の上昇や販管費の増加が利益に響いた。24年3月期の業績予想は、売上高361億円(従来予想比35億5000万円増)、営業利益13億円(12億円増)に上方修正。中国向けアルツや国内医薬品の増加により、売り上げ、利益とも従来予想を上回る見通しとなった。
エーザイ(11月7日発表)
▽売上収益3735億5300万円(前年同期比4.2%増)▽営業利益314億2700万円(498.3%増)▽税引前利益356億5800万円(338.4%増)▽四半期利益231億2900万円(24.1%減)。
抗がん剤「レンビマ」や不眠症治療剤「デエビゴ」などの拡大、選択的エストロゲン受容体分解薬elacestrantの経済的収益受領権譲渡に伴う一時金の受領で増収・営業増益となった一方、前年同期に一時的な税金費用の減少があった反動で最終利益は減少した。24年3月期の連結業績予想は、売上収益7410億円(従来予想比290億円増)、営業利益510億円(10億円増)に上方修正した。
参天製薬(11月7日発表)
▽売上収益1458億600万円(前年同期比13.1%増)▽営業利益250億9900万円(前年同期は190億2100万円の赤字)▽税引前利益240億67500万円(191億300万円の赤字)▽四半期利益192億8000万円(220億4100万円の赤字)。
中国市場が新型コロナウイルス感染症の影響から回復し、アジアやEMEAでも主力製品が堅調に推移した。24年3月期の連結業績予想は、売上収益3020億円(従来予想比170億円増)、営業利益410億円(60億円増)に上方修正した。
旭化成(11月7日発表)
医薬・医療事業の業績は、▽売上高1009億円(前年同期比2.0%増)▽営業利益75億円(48.3%減)。販管費の増加や米バイオノバの新規連結が利益を押し下げた。主力の骨粗鬆症治療薬「テリボン」の売上高は194億円(6.4%減)。24年3月期の業績予想は、売上高2130億円(従来予想比50億円減)、営業利益175億円(36億円減)に下方修正した。
ツムラ(11月7日発表)
▽売上高753億200万円(前年同期比7.4%増)▽営業利益102億1100万円(12.6%減)▽経常利益126億7500万円(20.6%減)▽純利益90億500万円(24.3%減)。原料生薬調達コストやエネルギー・原資材価格の高止まりなどが響いて大幅な減益となった。24年3月期業績予想は従来予想(売上高1505億円、営業利益180億円)を据え置いた。
帝人(11月6日発表)
ヘルスケアセグメントの業績は、▽売上高707億円(前年同期比9.3%減)▽営業利益82億円(46.6%減)。
先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療薬「ソマチュリン」や上肢・下肢痙縮治療薬「ゼオマイン」の販売が拡大したものの、昨年6月に後発品が参入した痛風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」が落ち込んだ。24年3月期の業績は従来予想(売上高1400億円、営業利益165億円)を据え置いた。
キッセイ薬品工業(11月6日発表)
▽売上高369億7800万円(前年同期比12.5%増)▽営業利益20億1500万円(前年同期は6億2500万円の赤字)▽経常利益34億6500万円(3億800万円の赤字)▽純利益56億7800万円(70.7%増)。
潰瘍性大腸炎治療薬「カログラ」や顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症治療薬「タブネオスカプセル」などが売り上げを拡大。原価率の改善や販管費の減少などで利益も大幅に増加した。4~9月期の業績を踏まえ、24年3月期の予想は売上高775億円(従来予想比30億円増)、営業利益50億円(8億円増)に上方修正した。
あすか製薬ホールディングス(11月6日発表)
▽売上高316億4800万円(前年同期比4.9%増)▽営業利益30億5500万円(6.1%増)▽経常利益30億9600万円(3.6%増)▽純利益41億2900万円(76.0%増)。子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「レルミナ」が伸びたほか、月経困難症治療薬「ドロエチ」などが好調だった。24年3月期の予想は従来予想(売上高620億円、営業利益54億円)から変更はない。
持田製薬(11月2日発表)
▽売上高494億7600万円(前年同期比7.0%減)▽営業利益39億5200万円(25.1%減)▽経常利益40億5300万円(25.5%減)▽純利益28億3800万円(27.6%減)。
長期収載品が前年同期を下回ったほか、薬価改定や抗うつ薬「レクサプロ」への後発医薬品参入の影響で減収。円安による輸入価格上昇も響いた。24年3月期の業績予想は、従来予想(売上高1040億円、営業利益85億円)を据え置いた。
アステラス製薬(11月1日発表)
▽売上収益7671億3800万円(前年同期比0.6%増)▽営業利益510億1600万円(57.4%減)▽税引前四半期利益521億7800万円(56.7%減)▽四半期利益316億7000万円(67.2%減)。
心機能検査補助剤「レキスキャン」が後発医薬品の参入によってドルベースで88%の売り上げ減となった一方、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」や尿路上皮がん治療薬「パドセブ」、急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」が売り上げを拡大。5月に米国で承認された閉経に伴う血管運動神経症状治療薬「VEOZAH」の販売費用や、米アイベリック・バイオの買収に関連する費用が利益を押し下げた。24年3月期の業績予想は、売上収益1兆6080億円(従来予想比880億円増)、営業利益1230億円(1360億円減)に修正。がん領域製品の好調な販売と円安、アイベリック買収の影響を織り込んだ。
小野薬品工業(11月1日発表)
▽売上収益2587億1300万円(前年同期比19.4%増)▽営業利益970億3600万円(20.9%増)▽税引前利益992億9600万円(22.6%増)▽四半期利益744億9100万円(19.5%増)。
免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」や関節リウマチ治療薬「オレンシア」が堅調に売り上げを伸ばしたほか、糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病治療薬「フォシーガ錠」が36.1%増と好調だった。24年3月期の業績予想は、売上収益5000億円(従来予想比250億円増)、営業利益1670億円(140億円増)に修正。フォシーガは従来予想比50億円増の700億円とした。
三菱ケミカルグループ(11月1日発表)
医薬品事業(田辺三菱製薬)の業績は、▽売上収益2194億円(前年同期比8.0%増)▽営業利益445億円(1451.8%増)▽当期利益373億円(4494.6%増)。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカヴァ」の海外売上収益が倍増したほか、国内の乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」やインフルエンザワクチンも好調だった。23年3月期に行ったコスト構造改革により、営業利益は大幅に増加。ラジカヴァの好調な販売を踏まえ、24年3月期通期業績予想は売上収益4360億円(従来予想比475億円増)、営業利益680億円(450億円増)に上方修正した。海外のラジカヴァは通期で従来予想を337億円上回る805億円を見込む。
ゼリア新薬工業(11月1日発表)
▽売上高366億7800万円(前年同期比8.8%増)▽営業利益53億2700万円(9.6%減)▽経常利益54億9500万円(6.1%増)▽純利益53億9600万円(35.0%増)。
主力の潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」やクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「ディフィクリア」が海外で堅調に推移した一方、英国の医薬品価格規制制度の一部見直しによる経費の増加と、販売促進費や減価償却費などの増加が利益を圧迫した。24年3月期の業績予想は、従来予想(売上高730億円、営業利益91億円)を据え置いた。
第一三共(10月31日発表)
▽売上収益7263億4400万円(前年同期比19.5%増)▽営業利益950億6300万円(0.5%減)▽税引前利益1020億9700万円(11.9%増)▽四半期利益970億600万円(66.4%増)。
主力の抗がん剤「エンハーツ」や抗凝固薬「リクシアナ」などが伸び、円安の影響もあって大幅な増収。前年同期に中国子会社の譲渡益を計上した反動で、営業利益は横ばいだった。一過性の収益と費用を除外したコア営業利益は12.4%増。売り上げの好調な推移と、ADCに関する米メルクとの提携に伴う一時金収入や研究開発費の減少を反映し、24年3月期業績予想を売上収益1兆5500億円(従来予想比1000億円増)、営業利益1500億円(150億円増)に上方修正した。
塩野義製薬(10月31日発表)
▽売上収益2305億4200万円(前年同期比52.9%増)▽営業利益981億600万円(247.6%増)▽税引前利益1156億300万円(70.1%増)▽四半期利益901億9800万円(57.1%増)。
新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」を含む感染症治療薬が売り上げを伸ばし、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金も大幅増収に寄与。国内医療用医薬品は前年同期比188.8%増となった。24年3月期の連結業績予想は従来(売上収益4500億円、営業利益1500億円)を据え置いた。
住友ファーマ(10月31日発表)
▽売上収益1526億4200万円(前年同期比52.2%減)▽営業利益864億9800万円の赤字(前年同期は289億1500万円の赤字)▽四半期利益677億3600万円の赤字(152億4300万円の赤字)。
「ラツーダ」の特許切れが響き、北米グループ会社再編に伴う事業構造改善費用の計上で損失が拡大した。24年3月期の連結業績予想は従来(売上収益3620億円、コア営業利益620億円の赤字)から変更はない。
日本ケミファ(10月31日発表)
▽売上高148億3700万円(前年同期比8.6%減)▽営業利益2億9800万円の赤字(前年同期は1億6700万円)▽経常利益1000万円(98.6%減)▽純利益3100万円(96.5%減)。臨床検査薬が伸びたものの、後発医薬品が薬価改定の影響を受けて2桁減収となったことが響いた。24年3月期の業績予想は従来(売上高327億円、営業利益2億円)を据え置いた。
武田薬品工業(10月26日発表)
▽売上収益2兆1017億700万円(前年同期比6.4%増)▽営業利益1192億3000万円(53.2%減)▽税引前利益390億5300万円(82.3%減)▽四半期利益414億3600万円(75.2%減)。
一部製品が後発医薬品の参入や競争激化の影響を受けたオンコロジーを除く主要領域が好調で、円安も売り上げを押し上げた。一方、営業利益は「アロフィセル」のP3試験の主要評価項目未達や「EXKIVITY」の販売・開発中止に伴う減損損失を計上したことで大幅な減益となった。円安と減損損失の計上を踏まえ、24年3月期の業績予想は売上収益3兆9800億円(従来予想比1400億円増)、営業利益2250億円(1240億円減)に修正した。
JCRファーマ(10月25日発表)
▽売上高242億7200万円(前年同期比55.8%増)▽営業利益68億9800万円(826.2%増)▽経常利益71億2600万円(353.9%増)▽純利益52億5300万円(445.6%増)。
成長ホルモン製剤「グロウジェクト」や腎性貧血治療薬「ダルベポエチンアルファBS」、ムコ多糖症II型治療薬「イズカーゴ」など主力製品が好調に推移。契約金収入も大幅に増加した。2024年3月期の業績予想は、従来予想(売上高454億円、営業利益105億円)を据え置いた。