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主要製薬8社、23年度1Qの国内売上高は1.1%増…小野など好調、住友は4割減収

更新日

穴迫励二

国内製薬企業の2024年3月期第1四半期(23年4~6月期)決算がほぼ出揃いました。国内市場では2度目となる中間年改定が行われましたが、主要8社の国内売上高は前年同期比1.1%増と前年をわずかに上回っての滑り出しとなりました。通期予想に対する進捗はおおむね順調です。新型コロナウイルス感染症治療薬が貢献した塩野義製薬や主力品が好調な小野薬品工業が国内売上高を大きく伸ばす一方、共同販促の終了が打撃となった住友ファーマは40%を超える減収となっています。

 

 

塩野義、前年同期比2.4倍

国内売上高が前年同期比で最も伸びたのは塩野義製薬。2.4倍増となる459億円を売り上げ、通期予想に対する進捗率は34.2%に達しました。今期から武田薬品工業が販売することになったADHD治療薬「インチュニブ」「ビバンセ」のライセンス移管に伴う一時金を計上したことが大きいものの、前年同期は1億円しかなかった「新型コロナ関連製品+インフルエンザファミリー」が71億円と拡大。新型コロナ向け経口抗ウイルス薬「ゾコーバ」が伸びました。

 

同薬は3月31日から一般流通が始まり、感染症法上の位置付けが5類に変更されたことを背景に処方が増加。緊急承認の取得後、半年間行った市販直後調査では、7万例以上の使用で追加の安全対策は必要ないとの評価を得ました。新型コロナワクチンは7月の厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で継続審議となったものの、同社は全体として「稼ぐ力が着実についてきている」と分析しています。

 

【主要製薬 23年4~6月期の国内売上高】<社名/売上高(億円)//前年同期比(%)/通期予想(億円)/進捗率(%)>武田薬品工業/1,248/▲/11.2/ー/ー|第一三共/1,190/9.1/4,994/23.8|小野薬品工業/782/10.5/ー/ー|田辺三菱製薬/769/▲/3.7/2,894/26.6|アステラス製薬/680/2.3/2,775/24.5|エーザイ/587/2.2/2,150/27.3|塩野義製薬/459/141.6/1,341/34.2|住友ファーマ/304/▲/41.7/1,141/26.6|合計/6,019/1.1/*15,295/*26.1|*は武田薬品と小野薬品を除く6社|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

小野薬品も2桁の伸びとなりました。主力の抗がん剤「オプジーボ」は競合激化の中でも胃がん、食道がん、尿路上皮がんなどで使用が拡大。同薬は前年同期比10.9%増の378億円を売り上げ、業績を牽引しました。SGLT2阻害薬「フォシーガ」も急拡大を続けています。同薬の第1四半期の売上高は34.0%増の175億円で、通期予想650億円に対する進捗率は26.9%。慢性心不全や慢性腎臓病への適応拡大から勢いが続いています。

 

第一三共、9.1%増も足取りやや重く

第一三共は前年同期比9.1%増でしたが、進捗率は23.8%にとどまっています。中でも抗がん剤「エンハーツ」は21.9%とやや足取りが重いものの、同社は「そこまで遅れているという認識はない」としています。HER2陽性乳がんのセカンドライン、サードラインでは順調にシェアを獲得しており、3月に承認されたHER2低発現乳がんの貢献も期待しています。

 

一方、日本イーライリリーとの共同販促品である片頭痛治療薬「エムガルティ」は16.2%と進捗率が低く、市場浸透に時間を要しています。製品の特性上、専門医や限られた施設での処方となるため、スピードが遅いようです。ただ、「同じCGRP抗体製剤の中ではシェアを維持している」といい、「効果不十分例からの切り替えを進めたい」考えです。

 

第一三共は通期で国内売上高4994億円(OTC除く)を予想していますが、ここにはクオールホールディングス(HD)への売却を発表した第一三共エスファの売上高(23年3月期実績で860億円)を含みます。第一三共は来年4月にエスファ株式の51%をクオールHDに譲渡する予定で、連結から外れる25年3月期には減収要因となります。

 

減少底打ちのアステラスは早期退職募集

アステラス製薬は2.3%増の2775億円と、国内売上高の減少が底を打ったように見えます。骨粗鬆症治療薬の抗体医薬「イベニティ」が115億円(15.1%増)と、SGLT2阻害薬「スーグラ」(配合剤含む)の113億円(8.3%減)を抜いて国内トップ製品となりました。

 

同社は決算発表にあわせて早期退職者の募集も発表しました。今回は対象を営業部門に絞っており、500人程度の応募を想定しています。現在、アステラスの営業部門は1650人の人員を抱えていて、このうちMRは1200人(営業部門全体の約73%)です。この比率で退職者の応募があったと仮定すると、MR数は850人ほどまで縮小することになり、単純計算でMR1人あたりの生産性は3億円を優に超えます。プライマリー領域の製品売り上げが減少する中、今後はオンラインMRをはじめとして情報伝達の方法を大きく変えることになりそうです。

 

住友ファーマ「いろいろな意味でテコ入れ」

前年同期を上回る企業が多い中、厳しいスタートとなったのが住友ファーマです。糖尿病治療薬「トルリシティ」の共同販促が終了し、国内売上高は前年同期比41.7%減と落ち込みました。野村博社長は「国内事業はいろいろな意味でのテコ入れがある」とし、「現在ある営業の財産(販売力)を使うことを優先に、さまざまな形で提携の機会を探している」と話します。MRの削減には否定的で、営業部隊の数は維持しながらも余剰感を生まないような対策を打っていく考えです。

 

武田薬品工業は新型コロナワクチン「ヌバキソビッド」の供給予定がキャンセルされたことなどが影響し、11.2%の減収となりました。6月には高血圧症治療薬「アジルバ」に後発医薬品が参入し、同薬の通期売上高は前期の729億円から59%減となる300億円に減少すると予想しています。同社は国内全体の通期売上高予想は開示していません。

 

ちなみに、12月期決算企業の今年1~6月期の国内事業を見てみると、中外製薬が新型コロナ薬「ロナプリーブ」の政府納入があり、進捗率は57.9%と高くなっています。ただ、同薬を除いても新製品や主力品の浸透で国内売上高は前年同期から195億円増加しました。一方、大塚HDと協和キリンは、ともに進捗率50%に届いていません。大塚HDは利尿薬「サムスカ」への後発品参入があり、協和キリンは腎性貧血治療薬「ネスプ」のオーソライズド・ジェネリックが一般のバイオシミラーに押されて減収となっています。

 

【12月期決算企業 23年1~6月期の国内売上高】<社名/売上高(億円)//前年同期比(%)/通期予想(億円)/進捗率(%)>中外製薬 3,136 14.5 5,417 57.9|大塚HD 1,918 ▲ 0.9 3,970 48.3|協和キリン 709 ▲ 2.6 1,456 48.7|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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