国内の主要製薬企業の2022年度決算を、さまざまな角度からチャートを使って解説します。
【チャートで見る】国内製薬2022年度決算
(1)売り上げ・利益 |
5社が上位3製品で売り上げの半分超
東証プライム上場の主な製薬企業21社が2022年度決算(22年12月期、23年2月期、23年3月期)で開示した製品別売上高をもとに、売り上げ上位3製品が売上高全体に占める割合をチャートにしました。
上位3製品への依存度が最も高かったのは69%のアステラス製薬。最大の主力品である抗がん剤「イクスタンジ」は6691億円で、売上高全体(1兆5186億円)の44%を占めています。2番手の免疫抑制剤「プログラフ」は構成比13%、3番手の過活動膀胱治療薬「ベタニス」は12%で、イクスタンジに大きく依存した収益構造であることがわかります。同薬は27年に特許切れを控えており、その後の成長をどう確保していくかが目下の経営課題となっています。
アステラスに次いで上位3製品への依存度が高かったのは59%の科研製薬と久光製薬。科研は、爪白癬治療薬「クレナフィン」と関節機能改善薬「アルツ」がそれぞれ売上高全体の4分の1ずつを稼ぎ、久光はOTCの「サロンパス」と医療用の「モーラステープ」で合わせて売り上げの半分以上を占めます。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が32%を占めた小野薬品工業や、抗精神病薬「ラツーダ」で37%を稼いだ住友ファーマも、上位3製品の構成比が50%を上回りました。
アステラス、最主力品で44% 住友37%、エーザイ34%
アステラスと住友に次いで最主力品の構成比が高いのはエーザイで、抗がん剤「レンビマ」が売上高全体の34%を占めました。協和キリンもくる病・骨軟化症治療薬「クリースビータ」で売り上げ全体の32%を稼いでいます。ゼリア新薬工業は海外を中心に伸びる潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」が29%を占めました。
塩野義製薬は、上位3製品への依存度は31%とそこまで高くないものの、新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」(1047億円)が全体の4分の1を占めています。一方、かつて世界で6500億円を売り上げた抗精神病薬「エビリファイ」に大きく依存していた大塚ホールディングス(HD)は、同「レキサルティ」と同「エビリファイメンテナ」で10%ずつ、常染色体優性多発性嚢胞腎治療薬「ジンアーク」で8%と、収益の分散化が進みました。
ロイヤリティ 塩野義は収益の41%、小野も34%
製品そのものの売り上げとは別に、ロイヤリティ収入を大きな収益源としている企業をピックアップしました。
塩野義は抗HIV薬を主とするロイヤリティ収入が1747億円となり、売上高全体の41%をここから稼ぎました。小野薬品はオプジーボ関連のロイヤリティが34%を占めています。日本新薬は肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」のロイヤリティ収入が伸び、工業所有権等収益が全体の2割に達しました。
ロイヤリティ収入が売上高全体の26%となった田辺三菱製薬は、スイス・ノバルティスとの係争で収益認識できていなかった多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤリティを23年3月期に一括計上。額、比率ともに前年から大きく増加しました。