東証1部上場の主要製薬企業31社の2020年度の従業員数は、単体ベースで前年度比0.1%減とほぼ横ばいだったことが、AnswersNewsの集計でわかりました。千人規模での減少が続いていた過去数年と比べると下げ止まったように見えますが、事業環境は依然として厳しい上、MRなど一部職種ではコロナ禍で仕事のあり方も大きく変わっており、予断を許さない状況は続くと思われます。
INDEX
鳥居やケミファが10%以上減少
集計対象としたのは、2020年4月~21年3月期に本決算を迎えた東証1部上場の製薬企業31社(うち4社は後発医薬品メーカー)。各社の有価証券報告書をもとに、従業員数を単体・連結それぞれで集計しました。
20年度の単体ベースの従業員数は31社合わせて5万9583人で、前年度から31人(0.1%)減と横ばい。従業員が減少したのは9社で、21社は増加、残る1社は前年度と同じでした。
減少が大きかったのは、鳥居薬品(13.9%減)、日本ケミファ(12.7%減)、武田薬品工業(7.2%減)など。鳥居は、収益の柱だった抗HIV薬の独占販売権を開発元のギリアド・サイエンシズに返還した19年以降、構造改革を進めており、20年度は千葉県佐倉市に保有していた工場を岩城製薬に譲渡。日本ケミファは、昨年夏に行った希望退職の募集に42人が応募しました。武田も昨年、国内ビジネス部門を対象に「フューチャー・キャリア・プログラム」と称した早期退職を行い、単体従業員数は全体で384人減少しています。
一方、連結ベースの従業員数は、子会社を持たない4社を除いた27社の合計で19万5658人となり、前年度から2076人(1.1%)増加。武田テバファーマから岐阜県高山市の工場を含む一部後発医薬品事業を買収した日医工が39.5%増となったほか、JCRファーマ(9.7%増)や大日本住友製薬(5.7%増)、生化学工業(5.2%増)も5%を超える増加となりました。
13年度ピークに減少
上場製薬会社の単体ベースの従業員数は、13年度をピークに減少傾向が続いています。13年度を100とした場合、20年度までの7年間で31社の総単体従業員数は93まで減少。この間、アステラス製薬や中外製薬、エーザイといった大手新薬メーカーが相次いで早期退職を募集し、新薬27社の単体従業員数は13年度から20年度にかけて12%(約7000人)減少しました。大手を中心に本体のスリム化が進んでいます。
一方、市場拡大が続いてきた後発品メーカーでは増加傾向にあり、13年度と20年度を比べると59%増加しています。
31社の総単体従業員数は、17年度1197人減、18年度658人減、19年度2325人減と推移しており、ほぼ横ばいとなった20年度は人員減に歯止めがかかったようにも見えます。ただ、21年度からは毎年の薬価改定が始まり、事業環境は一層厳しくなっている上、新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートでの営業活動が拡大。デジタル化が進み、各社の製品ポートフォリオも変化する中、MRを中心にさらなる減少を予測する声は少なくありません。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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