製薬企業の人員減が止まりません。東証1部上場の主要製薬企業32社の2019年度の従業員数は、単体ベースで前年度から2339人(3.7%)減少したことが、AnswersNewsのまとめでわかりました。新薬メーカーの減少が特に顕著で、5年前と比べると5800人あまり減っています。
INDEX
塩野義や鳥居 2ケタ減
集計対象としたのは、2019年4月~20年3月に本決算を迎えた東証1部上場の製薬企業32社(うち4社は後発医薬品メーカー)。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結それぞれで従業員数を集計しました。
19年度の単体ベースの従業員数は32社合わせて6万370人で、前年度から2339人(3.7%)減少。半数を超える17社が従業員を減らしました。減少が最も大きかったのは、929人(25.8%)減となった塩野義製薬。同社では、昨年4月に生産子会社シオノギファーマが事業を開始しており、減少分のほとんどはシオノギファーマへの転籍によるものです。塩野義の連結従業員数は、前年度比0.2%減とほぼ横ばいでした。
塩野義のほかに単体従業員数の減少が大きかったのは、474人(9.4%減)のアステラス製薬、389人(37.1%)減の鳥居薬品、299人(7.6%)減の協和キリンなど。いずれも19年に早期退職を行った企業です。同じく早期退職を実施した中外製薬やエーザイも100人以上の減少となりました。
一方、連結ベースの従業員数は、子会社を持たない4社を除いた28社の合計で19万4389人となり、前年度から2338人(1.2%)増えました。19年度にハウザン製薬(ベトナム)とUPSA(フランス)の2社を連結子会社化した大正製薬ホールディングス(HD)は、4212人増加して連結従業員数は前年度の1.8倍に。東和薬品もペンサ(スペイン)を買収したことで853人(34.5%)増加したほか、日医工もエルメッドの連結子会社化などで381人(24.2%)増えました。
連結ベースで従業員数が大きく減少したのは、2083人(4.2%)減の武田薬品工業と、1975人(27.3%)減の協和キリン。武田はシャイアー買収による債務削減のために進めている事業売却が、協和キリンは協和発酵バイオを連結から外したことが影響しました。
新薬メーカー 5年で5800人減
上場製薬企業の単体ベースの従業員数は、2013年度をピークに減少傾向が続いています。5年前の14年度と比べてみると、32社全体で3726人(5.8%)減少。後発品メーカー4社は合わせて2102人(45.6%)増えた一方、新薬メーカーは5828人(9.8%)減りました。
企業ごとにみると、19年度に大幅に従業員数を減らした鳥居薬品(37.0%減)と塩野義製薬(35.6%減)が5年前との比較で3割以上減少。武田薬品工業(21.1%減)や大日本住友製薬(26.7%減)が2割以上の減少で、アステラス製薬(15.7%減)や協和キリン(14.1%減)、エーザイ(16.0%減)など7社が1割以上減らしました。
一方、後発品メーカーでは、沢井製薬が105.1%増と5年で従業員が倍増。日医工は36.0%増、東和薬品は24.2%増と、いずれも大きく増えています。
連結ベースでは、武田や大正製薬HD、沢井、東和、日医工など、ここ数年で海外企業を買収した企業が大きく増加。子会社を持たない4社を除いた28社の合計で5年前から2万3978人(14.1%)増えました。
20年度はまだ早期退職を発表した上場企業はありませんが、気になるのは新型コロナウイルス感染症の影響です。リモート化やデジタル化が一気に広がり、MRを中心にさらなる人員減少が進むのではないかとの声も聞かれます。コロナ後の働き方の変化によって、製薬企業の規模縮小は加速するかもしれません。
(前田雄樹)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・アステラス製薬
・協和キリン
・武田薬品工業
・キョーリン製薬ホールディングス(杏林製薬/キョーリンリメディオ)
・久光製薬
・参天製薬
・エーザイ
・小野薬品工業
・中外製薬
・大日本住友製薬
・第一三共
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)
・大正製薬ホールディングス
・塩野義製薬