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【展望2018】製薬企業 戦略再考待ったなし…薬価改革 国内市場マイナス成長に現実味

今年、かつてないインパクトをもった薬価制度の改革が、製薬企業の経営を直撃します。

 

医療費ベースで1.65%の引き下げとなる4月の薬価改定では、7200億円の薬剤費が削減。薬価制度の抜本改革では、新薬創出加算の対象品目が大幅に縮小され、一部の長期収載品の薬価を後発医薬品と同じ水準まで引き下げる新たな制度も導入されます。

 

国内市場の収益環境は一段と悪化し、製薬企業は経営戦略の再考を迫られることになります。

 

消える7200億円分の市場

今年4月に行われる薬価改定は、医療費ベースで1.65%(薬剤費をベースにすると7.5%)の引き下げとなることが決まりました。平均乖離率が9.1%と2000年度以降で最大となった市場実勢価格に基づく引き下げは1.36%(薬剤費ベースで6.2%)。残る0.29%(同1.3%)は薬価制度の抜本改革による引き下げです。

 

1.65%の薬価引き下げで削減される薬剤費は約7200億円。言い換えれば、7200億円分の市場が薬価改定により一瞬にして消えてしまうことになります。

 

2018年度薬価改定の概要 <医療費ベースでマイナス1.65パーセント(約マイナス7200億円)> 内訳:市場実勢価格でマイナス6000億円、薬価の抜本改革でマイナス1200億円

 

 一部項目を除いて今年4月に実施される薬価制度の抜本改革は、2年に1度行われてきた過去の制度改革と比べても、格段に大きな打撃を製薬企業に与えそうです。

 

後発品のない新薬の薬価を維持する「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」は、対象品目を大幅に絞り込み、加算を満額得られる企業を全体の25%に限定。長期収載品は、収載から10年がたった一部の品目を、後発医薬品の薬価まで段階的に引き下げます。適応拡大で売り上げが増えた医薬品は、年4回の新薬の薬価収載のタイミングで薬価を見直すことになりました。「国民皆保険とイノベーションの両立」をうたいながら、改革は引き下げ方向のメニューが目立ちます。

 

国内市場 年平均マイナス1.5%予測も

17年度は薬価改定がなかったにもかかわらず、上半期(4~9月)の成長率は前年同期比0.05%増にとどまるなど、国内市場はすでに低成長モード。欧州製薬団体連合会がIQVIA(旧クインタイルズIMS)と共同で行った国内市場予測(17年5月発表)では、15~26年度の年平均成長率をマイナス1.5%と弾いています。

 

今回の抜本改革が市場の停滞に追い打ちをかけるのは必至。国内市場のマイナス成長は一層、現実味を増したと言えます。

 

EFPIAとIQVIAによる日本の医療品市場予測のグラフ。2015~2026年度の年平均成長率は、マイナス1.5パーセント。 12年度:9.3兆円、13年度:9.8兆円、14年度:9.7兆円、15年度:10.6兆円、16年度:10.3兆円、17年度:10.5兆円、18年度:9.9兆円、19年度:9.7兆円、20年度:9.2兆円、21年度:9.0兆円、22年度:8.9兆円、23年度:9.0兆円、24年度:9.0兆円、25年度:9.1兆円、26年度:9.0兆円。

 

製薬業界「大いに失望」日本への開発投資 縮小を懸念

「大いに失望し、今後を憂慮している」(米国研究製薬工業協会・欧州製薬団体連合会)
「製薬業界が医薬品を研究開発・安定供給し続けることを著しく阻害する」(日本製薬工業協会)

 

中央社会保険医療協議会が抜本改革の骨子を決めた昨年12月20日、日米欧の製薬団体はそろって改革を批判する声明を発表。欧米の団体は「研究開発の投資先として、日本よりもイノベーションを促進するほかの国が優先される」と、対日投資が縮小する可能性にも言及しました。

 

厚労省によると、16年度改定時で823品目あった新薬創出加算の対象品目は、制度見直しによって約540品目まで減少し、加算を満額得られる企業も15~20社程度(16年度は90社が加算を取得)にとどまる見通し。新薬メーカーの受け止めは深刻です。

 

特に厳しいのは中小の新薬メーカーでしょう。長期収載品を収益の柱としているところも少なくありませんし、新薬創出加算の「企業指標」として新たに設けられる「国内試験実施数」や「新薬収載実績」では大手にかないません。

 

新薬創出加算の「企業指標」と、その点数に応じた3つの分類の図。新薬開発やドラッグ・ラグへの取り組みを点数化し、それに応じて加算を段階的に設定します。【企業指標】<A-1>国内試験実施数(フェーズ2以降):上位25パーセント…4pt・中位50パーセント…2pt。<A-2>新薬収載実績(5年分の収載成分数):上位25パーセント…4pt・中位50パーセント…2pt。<B-1>開発公募品(5年分の開発着手数、B-2は除く):1品目についき2pt。<B-2>開発公募品(5年分の承認取得数):1品目についき2pt。<C>世界に先駆けた新薬の開発:1品目についき2pt。→点数に応じて企業を3つに分類します。【区分Ⅰ】(pt数の上位25パーセント):加算係数1.0(満額)、【区分Ⅱ】(Ⅰ・Ⅲ以外):加算係数0.9、【区分Ⅲ】(最低点数):加算係数0.8.

 

製薬企業 急ぐ構造改革

市場環境の悪化を見越して、製薬各社は事業構造の改革を急いでいます。

 

ここ数年、活発になっているのは新薬メーカーによる長期収載品の切り離し。昨年は、武田薬品工業が武田テバに糖尿病治療薬「アクトス」など7製品を追加で譲渡。アステラス製薬は投資ファンドが設立したLTLファーマに、中外製薬は化学メーカー傘下の太陽ファルマに、それぞれ10製品以上の長期収載品を売却しました。

 

国内の製薬企業は、新薬に集中する企業と、長期収載品と後発品からなる特許切れ薬を扱う企業とに二極化する傾向が強まっています。今回の薬価制度改革では、後発品への置き換え率が80%以上となった長期収載品は、中長期的に後発品と同じ薬価に引き下げられることになった一方、こうした長期収載品には市場からの撤退(=販売をやめる)が認められました。制度改革は新薬メーカーが長期収載品から撤退する動きをさらに加速させていくでしょう。

 

進む人員削減

研究開発体制や生産体制の見直しも進みます。武田薬品は昨年、研究開発体制を世界レベルで再編しました。大日本住友製薬は18年度、国内4工場を2工場に再編する予定で、生産部門を対象に早期退職の募集を行いました。

 

 AnswersNewsのまとめでは、国内上場新薬メーカーの従業員数(単体)は12年度以降減少が続いており、16年度までの5年間で3000人以上減少。MR認定センターのMR白書によると、国内のMRは3年連続で減りました。収益性の低下は、各社の人員体制を直撃します。

 

上場メーカーの従業員数の推移と国内のMR数の推移の図(2012年度~2016年度)

 

「選択と集中」「海外展開」加速へ…業界再編はあるか

生き残りへのカギとなるのは、やはり「選択と集中」と「海外展開」でしょう。今回の薬価制度改革を受け、こうした流れは一層加速していくことになります。

 

注目されるのは中小新薬メーカーの動きです。

 

参天製薬は従来の2本柱のうち、リウマチ領域の事業を売却。眼科一本に事業を絞りました。長期収載品となった消炎鎮痛剤「モーラステープ」でいまだに4割近くを稼ぐ久光製薬は、17~21年度の中期経営計画で一般用医薬品(OTC)の割合を連結売上高の50%(16年度は30%)まで引き上げる方針を掲げました。自社の強みや立ち位置を見極め、将来像を明確にすることがこれまで以上に求められそうです。

 

広がる海外展開

海外展開では、田辺三菱製薬が昨年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬「ラジカヴァ」を米国で発売。米国での製品ラインナップ強化のため、イスラエルのニューロダームを買収しました。協和発酵キリンも、大型化を狙う低リン血症治療薬burosumabを欧米で申請中。日本新薬は自社創製した肺動脈性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」のロイヤリティー収入が伸びています。

 

後発品企業も見通しは明るくありません。昨年12月に改訂版が公表された厚労省の「医薬品産業強化総合戦略」では、政府目標の数量シェア80%を達成したあとは市場の伸びが鈍化すると指摘。今回の薬価制度改革で長期収載品を同じ価格となれば、当然、長期収載品を選ぶ医師が出てきます。選ばれるためには納入価を下げざるを得ず、価格競争はさらに激しくなりそうです。

 

田辺三菱製薬は後発品子会社を売却し、日医工や沢井製薬は米企業を買収して海外展開を本格化させました。従来から「多すぎる」と指摘されてきた後発品メーカーも、いよいよ生き残りをかけた動きが活発になります。

 

医薬品産業強化総合戦略では「新薬が創出できなかったメーカーは事業転換も迫られる」とし、M&Aによる規模拡大も論点として示されました。今回の薬価制度改革により、合併を現実的な問題として検討せざるを得なく企業も出てくるかもしれません。

 

2018年は日本の製薬業界にとって、大きな転換点となる1年になりそうです。

 

【AnswersNews編集部が製薬会社を分析】

武田薬品工業アステラス製薬大日本住友製薬参天製薬

 

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