
国内製薬企業の2025年3月期決算のハイライトを、コンパクトなビジュアルを交えてまとめます。随時更新(公開:4月28日、最終更新:5月16日)。
エーザイ(5月15日発表)
▽売上収益 7894億円(前期比6.4%増)
▽営業利益 543億7800万円(1.8%増)
▽税引前利益 610億6500万円(1.2%減)
▽当期利益 464億3200万円(9.5%増)
アルツハイマー病治療薬「レケンビ」は443億円を売り上げ、前期の約10倍に拡大。抗がん剤「レンビマ」(3285億円、10.4%増)や不眠症治療薬「デエビゴ」(538億円、28.6%増)も伸びた。26年3月期は売上収益7900億円(0.1%増)、営業利益545億円(0.2%増)を予想。レケンビは72.8%増の765億円まで拡大させる計画だが、レンビマが後発医薬品や競合品の影響を受けて5%の売り上げ減となる見込み。
サワイグループHD(5月14日発表)
▽売上収益 1890億2400万円(前期比6.9%増)
▽営業利益 208億700万円(11.7%増)
▽税引前利益 199億1900万円(9.1%増)
▽当期利益 229億3800万円(67.5%増)
米国事業の売却益を計上したことで大幅な最終増益となった。新製品が伸びたほか、長期収載品選定療養化の対象品目や限定出荷解除品目を中心に既存品の売り上げも拡大。低薬価品を中心に原価高騰分を価格に反映したことで単価も改善した。26年3月期は売上収益2002億円(5.9%増)、営業利益256億円(23.0%増)を見込む。
三菱ケミカルグループ(医薬品事業、5月13日発表)
▽売上収益 4604億円(前期比5.3%増)
▽営業利益 516億円(25.1%減)
▽当期利益 232億円(58.8%g減)
筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカヴァ」の海外販売が前期比26.5%増の1003億円で、2型糖尿病治療薬「マンジャロ」も売り上げを拡大。一方、昨年行った希望退職に伴う費用増で利益は減少した。コアベースの営業利益は16.0%増の652億円だった。米ベイン・キャピタルへの売却を今年7~9月期に控えており、26年3月期の業績予想は開示していない。
住友ファーマ(5月13日発表)
▽売上収益 3988億3200万円(前期比26.8%増)
▽営業利益 288億400万円(前期は3548億5900万円の赤字)
▽当期利益 236億3400万円(3149億6900万円の赤字)
北米で販売する基幹3製品が計1617億円(83.3%増)まで売り上げを伸ばし、販管費や研究開発費を大幅に削減したことで黒字化。国内は2型糖尿病治療薬「エクア」の特許切れもあり12.9%減の998億円となった。26年3月期は、売上収益3550億円(11.0%減)、営業利益540億円(87.5%増)を予想。為替の影響で北米が減収となる一方、丸紅子会社へのアジア事業譲渡による利益を計上することで大幅増益となる。
参天製薬(5月13日発表)
▽売上収益 3000億400万円(前期比0.6%減)
▽営業利益 468億8000万円(21.6%増)
▽税引前利益 474億8100万円(58.9%増)
▽当期利益 362億5600万円(36.1%増)
欧州・中東・アフリカが緑内障治療薬を中心に売り上げを伸ばした一方、薬価改定や「ジクアスLX」の自主回収で国内が5.9%の減収となり、売上収益はほぼ横ばい。構造改革関連費用の減少で大幅な増益となった。26年3月期は売上収益2940億円(2.0%減)、営業利益440億円(6.1%減)を見込む。国内で主力品が後発医薬品の影響を受け、減収減益となる見通し。
生化学工業(5月13日発表)
▽売上高 393億7400万円(前期比8.7%増)
▽営業利益 13億3300万円(207.8%増)
▽経常利益 19億3300万円(14.3%増)
▽純利益 12億1400万円(44.5%減)
ロイヤリティが大幅に増加したほか、エンドトキシン測定用試薬などを扱うLAL事業が好調だった。26年3月期の業績予想は売上高356億円(9.6%減)、営業利益3億円の赤字。ロイヤリティの減少や円高による海外事業の減収が影響する。
JCRファーマ(5月13日発表)
▽売上高 330億7200万円(前期比22.9%減)
▽営業利益 66億5000万円の赤字(前期は75億3100万円の黒字)
▽経常利益 74億7700万円の赤字(72億6400万円の黒字)
▽純利益 47億5900万円の赤字(55億700万円の黒字)
研究開発費が大幅に増加したほか、新工場建設に対する補助金の確定が今期にずれ込んだことなどで赤字となった。26年3月期は売上高378億円(14.3%増)、営業利益26億円を見込む。
塩野義製薬(5月12日発表)
▽売上収益 4382億6800万円(前期比0.7%増)
▽営業利益 1566億300万円(2.1%増)
▽税引前利益 2007億5000万円(1.2%増)
▽当期利益 1704億3500万円(5.2%増)
前年にADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金収入(250億円)を計上した反動を、抗HIV薬のロイヤリティ収入の増加や海外事業の売り上げ拡大でカバーした。国内医療用医薬品は、感染症薬の販売減も響いて34.6%の減収。26年3月期は、JTの医薬事業の買収も寄与し、売上収益5300億円(20.9%増)、営業利益1750億円(11.7%増)を見込んでいる。
ツムラ(5月12日発表)
▽売上高 1810億9300万円(前期比20.1%増)
▽営業利益 401億2500万円(100.5%増)
▽経常利益 424億4600万円(80.7%増)
▽純利益 324億2800万円(94.1%増)
昨年4月の薬価改定で医療用漢方製剤129処方中66処方が不採算品再算定を受け、薬価が上昇したことから大幅な増収増益となった。原料生薬と飲片(刻み生薬)の販売を中心とする中国事業も10.1%増収と好調だった。26年3月期の業績予想は売上高1880億円(3.8%増)、営業利益342億円(14.8%減)。中国生産拠点の製造加工費、生薬費、人件費の増加などが利益を圧迫する。
帝人(ヘルスケアセグメント、5月12日発表)
▽売上収益 1370億円(前期比5.3%減)
▽事業利益 57億円(68.7%減)
睡眠時無呼吸症候群治療に使うCPAPレンタル台数の増加に伴うコストの増大やライセンス対価収入の減少、薬価改定などの影響で大幅な減益となった。26年3月期は売上収益1350億円(1.5%減)、事業利益125億円(119.3%増)を予想。CPAPレンタル台数の増加や収益性改善施策により利益の回復を見込む。
杏林製薬(5月12日発表)
▽売上高 1300億8700万円(前期比8.8%増)
▽営業利益 125億6700万円(101.6%増)
▽経常利益 132億1900万円(93.8%増)
▽純利益 90億8600万円(66.0%増)
過活動膀胱治療薬「べオーバ」(221億円、21.9%増)などが売り上げを伸ばしたほか、自社創製化合物の導出一時金によって大幅な増益となった。26年3月期は、前期の導出一時金計上の反動で売上高1111億円(4.2%減)、営業利益63億円(51.2%減)と減収減益を見込む。
持田製薬(5月12日発表)
▽売上高 1051億5900万円(前期比2.2%増)
▽営業利益 81億2600万円(40.1%増)
▽経常利益 80億6700万円(33.6%増)
▽純利益 56億8500万円(25.0%増)
潰瘍性大腸炎治療薬「リアルダ」(151億円、5%増)など主要製品が好調に推移。研究開発費が減少したことで利益は大きく増加した。26年3月期は売上高1105億円(5.1%増)、営業利益70億円(13.9%減)を予想。新薬の販売拡大を見込む一方、設備投資が増加し減益となる。
科研製薬(5月12日発表)
▽売上高 940億3500万円(前期比30.5%増)
▽営業利益 210億3400万円(121.1%増)
▽経常利益 212億7900万円(113.8%増)
▽純利益 139億4500万円(73.8%増)
STAT6阻害薬の米ジョンソン・エンド・ジョンソンへの導出に伴う一時金収入などで大幅な増収増益となった。26年3月期の業績予想は、売上高880億円(6.4%減)、営業利益52億円(75.3%減)。前期の一時金収入の反動が出るほか、爪白癬治療薬「クレナフィン」の特許切れが響く。
あすか製薬HD(5月12日発表)
▽売上高 641億3900万円(前期比2.1%増)
▽営業利益 53億3100万円(18.0%減)
▽経常利益 51億700万円(21.7%減)
▽純利益 51億100万円(32.4%減)
子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「レルミナ」が6.3%増の105億円を売り上げるなど主力品が販売を伸ばした一方、研究開発費の増加が利益に響いた。26年3月期は、最低薬価の引き上げなどもあって売上高750億円(16.9%増)、営業利益68億円(27.5%増)を見込む。
旭化成(医薬・医療事業、5月9日発表)
▽売上高 2452億円(前期比17.7%増)
▽営業利益 266億円(40.8%増)
米国で販売する免疫抑制剤「Envarsus XR」の販売が好調で、昨年のカリディタス(スウェーデン)買収で獲得したIgA腎症治療薬「Tarpeyo」も業績に貢献した。26年3月期は売上高2340億円(4.6%減)、営業利益264億円(0.9%減)を予想。血液浄化事業の譲渡影響などで減収減益となる。
明治HD(医薬品セグメント、5月9日発表)
▽売上高 2296億円(前期比11.4%増)
▽営業利益 247億円(8.9%増)
国内で抗菌薬や血漿分画製剤が好調だった。インフルエンザワクチンの出荷増でワクチン・動物薬事業も売り上げを伸ばしたが、新型コロナウイルスワクチン「コスタイベ」の評価減などの影響で同事業の営業利益は赤字だった。26年3月期は売上高2547億円(10.9%増)、営業利益260億円(5.1%増)を予想している。
扶桑薬品工業(5月9日発表)
▽売上高 605億6300万円(前期比9.3%増)
▽営業利益 41億3100万円(110.3%増)
▽経常利益 37億8000万円(102.4%増)
▽純利益 27億8000万円(101.8%増)
増産と不採算品再算定の影響で輸液全体の不採算が緩和され、利益が大幅に増えた。26年3月期は売上高615億円(1.5%増)、営業利益34億円(17.7%減)を見込む。
武田薬品工業(5月8日発表)
▽売上収益 4兆5815億5100万円(前期比7.5%増)
▽営業利益 3425億8600万円(60.0%増)
▽税引前利益 1750億8400万円(231.7%増)
▽当期利益 1079億2800万円(25.1%減)
主力の炎症性腸疾患治療薬「エンタイビオ」が9141億円(14.1%増)まで売り上げを伸ばしたほか、円安の影響もあって血漿分画製剤やオンコロジー領域なども2桁増。効率化プログラムによる経費削減も奏功し、利益は大きく増えた。26年3月期は売上収益4兆5300億円(1.1%減)、営業利益4750億円(38.7%増)を予想。事業構造再編費用の減少で大幅な増益となる見通し。米国政府による医薬品に対する関税の導入の影響は織り込んでいない。
小野薬品工業(5月8日発表)
▽売上収益 4868億7100万円(前期比3.1%減)
▽営業利益 597億4700万円(62.6%減)
▽税引前利益 593億2800万円(63.8%減)
▽当期利益 500億4700万円(60.9%減)
がん免疫療法薬「オプジーボ」の売り上げは、薬価引き下げが響いて17.3%減の1203億円。米デサイフェラ買収に伴う費用増や、SGLT2阻害薬「フォシーガ」の販売マイルストン支払いなどで大幅な減益となった。フォシーガは慢性腎臓病での使用が拡大したことで17.7%増の896億円を売り上げた。26年3月期は、売上収益4900億円(0.6%増)、営業利益850億円(42.3%増)を予想。フォシーガは2型糖尿病の適応で今年12月以降に後発医薬品の影響が想定され、10.7%の販売減を見込んでいる。
日本新薬(5月8日発表)
▽売上収益 1602億3200万円(前期比8.1%増)
▽営業利益 354億5000万円(6.5%増)
▽税引前利益 361億3500万円(7.5%増)
▽当期利益 325億5800万円(25.9%増)
デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(218億円、24.3%増)の販売が好調で、肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」の国内販売(150億円、15.9%増)やロイヤリティ収入も増加した。26年3月期の業績予想は、売上収益1730億円(8.0%増)、営業利益300億円(15.4%減)。販管費や研究開発費の増加が利益を圧迫する。
ゼリア新薬工業(5月8日発表)
▽売上高 873億1100万円(前期比15.3%増)
▽営業利益 121億9700万円(26.8%増)
▽経常利益 128億4000万円(50.8%増)
▽純利益 99億3600万円(28.5%増)
潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」(236億円、12.7%増)やクロストリジウム・ディフィシル感染症治療「ディフィクリア」(208億円、53.7%増)などの販売が好調だった。26年3月期の業績予想は売上高900億円(3.1%増)、営業利益120億円(1.6%減)。アサコールなどが引き続き伸びる一方、経費の増加で利益は減少する。
キッセイ薬品工業(5月7日発表)
▽売上高 883億3000万円(前期比16.9%増)
▽営業利益 57億7300万円(43.7%増)
▽経常利益 69億7400万円(13.5%増)
▽純利益 119億6100万円(7.2%増)
過活動膀胱治療薬「べオーバ」(187億円、21.7%増)、顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症治療薬「タブネオス」(90億円、74.2%増)、透析そう痒症治療薬「コルスバ」(53億円、597.4%増)などが好調だった。26年3月期は売上高915億円(3.6%増)、営業利益60億円(3.9%増)を見込む。
アステラス製薬(4月25日発表)
▽売上収益 1兆9123億2300万円(前期比19.2%増)
▽営業利益 410億3900万円(60.8%増)
▽税引前利益 312億3700万円(25.1%増)
▽当期利益 507億4700万円(197.7%増)
前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が9123億円(21.6%増)、抗がん剤「パドセブ」が1641億円(92.2%増)を売り上げるなど、主力品が好調で2桁増収。地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療薬「IZERVAY」などで1876億円の減損損失を計上したが、大幅減益となった前期の反動で利益は大きく増加した。コア営業利益は3924億円(41.7%増)となり、売上収益とともに過去最高を更新した。26年3月期は、売上収益1兆9300億円(0.9%増)、営業利益1600億円(289.9%増)を予想している。
第一三共(4月25日発表)
▽売上収益 1兆8862億5600万円(前期比17.8%増)
▽営業利益 3319億2500万円(56.9%増)
▽税引前利益 3556億3100万円(49.9%増)
▽当期利益 2957億5600万円(47.3%増)
主力の抗がん剤「エンハーツ」の売上収益は、提携する英アストラゼネカからのマイルストン収入などを含めて6514億円(45.0%増)。抗凝固薬エドキサバン(日本製品名・リクシアナ)も3440億円(19.5%増)と好調だった。国内の医療用医薬品は、後発医薬品事業の売却などにより8.1%の減収。26年3月期は売上収益2兆円(6.0%増)、営業利益3500億円(5.4%増)を見込む。