東証プライム市場に上場する主要製薬企業26社の2023年度末の従業員数は、単体ベースで前年度比0.3%減となったことが分かりました。早期退職を行った塩野義製薬や参天製薬などで大幅に減少した一方、約半数の企業では増加しており、全体としては前年度からほぼ横ばいとなりました。
塩野義14%、参天7%減
集計対象としたのは、2023年4月から24年3月に本決算を迎えた東証プライム上場製薬企業27社。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結の従業員数を集計しました。
23年4月に事業持ち株会社に移行したため前年度との比較ができない杏林製薬を除く26社の23年度末の単体従業員数は計5万6294人で、前年度から0.3%(190人)減とほぼ横ばい。杏林製薬を含む27社の連結従業員数は18万9070人で0.1%(151人)減でした。
単体ベースで減少が最も大きかったのは、13.9%(341人)減の塩野義製薬。同社は減少の理由について「特別早期退職プログラムを実施したことによるもの」としています。同社が昨年行った早期退職には、約200人の募集に対して301人が応募しました。
塩野義に次いで減少が大きかったのは参天製薬で、7.2%(131人)減少。同社も昨年、人数を定めず早期退職者を募集し、180人の応募がありました。
中外は3.9%減
23年度はこれら2社のほか、中外製薬とアステラス製薬、杏林製薬が早期退職を実施。374人の応募があった中外は3.9%(200人)、500人規模の応募を想定して募集を行ったアステラスは1.3%(61人)減少しました。杏林製薬は単体での比較はできませんが、連結ベースの従業員数は4.5%(96人)減少しています。
一方、単体ベースで従業員数が増えたのは、武田薬品工業(4.8%・261人増)、東和薬品(3.6%・93人増)、ツムラ(3.0%・80人増)、協和キリン(2.0%・80人増)など。第一三共や小野薬品工業も1%を上回る増加で、1000人未満の企業では富士製薬工業やJCRファーマが5%を超える増加となりました。
連結ベースで減少が目立ったのは、住友ファーマ(20.3%・1270人減)、塩野義(12.7%・721人減)、参天(9.7%・400人減)など。住友は米国での人員削減で大幅に減少し、参天は米国事業の合理化、塩野義は子会社の異動が早期退職とともに影響しました。
1000~2999人の企業で減少顕著
集計対象27社から純粋持株会社3社と杏林を除いた23社の単体従業員数は、ピークだった13年度を100とした場合、23年度は91.9となりました。21年度までは減少が続いていましたが、22年度は大手の人員増を背景に増加。23年度は若干減少したものの、ほぼ同じ水準を維持しました。
23社を▽23年度の単体従業員数が3000人以上▽同1000~2999人▽同999人以下――に分けて見てみると、3000人以上の企業群は21年度にかけて90.8まで減少したあと、22年度は95.9、23年度は96.5と2年連続で増加。999人以下の企業群は20年度に95,5まで減少しましたが、その後は増加が続いており、23年度は103.1と10年前を上回っています。
一方、1000~2999人の企業群は減少が続いており、23年度は85.4まで減少しました。この企業群に含まれるのは、塩野義、住友、エーザイなどで、13年度と比べると塩野義は49.3%(2061人)減とほぼ半分に減少。住友は32.9%(1423人)、エーザイは25.5%(1019人)減りました。13年度から従業員を減らしたのは3000人以上の企業から999人以下の企業まで15社ありますが、特に1000~2999人の区分に含まれる企業で減少が顕著です。
23年度は例年以上にリストラの多い年でしたが、24年度も武田薬品がグローバルで人員の最適化を含む事業構造再編を行う方針を明らかにしているほか、住友も国内で人員削減を行う可能性に言及しています。収益向上に向け、事業環境やポートフォリオに合わせて人員体制を見直す動きは続きます。