国内主要製薬企業の2024年3月期決算のハイライトを、コンパクトなビジュアルとともにお届けします。随時更新(公開:4月26日、最終更新:5月16日)
エーザイ(5月15日発表)
▽売上収益7417億5100万円(前期比0.4%減)▽営業利益534億800万円(33.4%増)▽税引前利益618億2300万円(37.3%増)▽当期利益424億600万円(23.5%減)。
前期に抗てんかん薬「フィコンパ」の権利譲渡による一時金を計上した反動があったが、抗がん剤「レンビマ」(2976億円、19.3%増)や不眠症治療薬「デエビゴ」(418億円、42.3%増)の拡大で前期並みの売り上げを確保。研究開発費の効率化で営業利益は増加した。アルツハイマー病治療薬「レケンビ」の売上高は43億円。25年3月期は売上収益7540億円(1.7%増)、営業利益535億円(0.2%増)を予想。レケンビは565億円の売り上げを見込む。
三菱ケミカルグループ(5月15日発表)
医薬品事業の売上収益4374億円(前期比18.3%減)、営業利益689億円(18.2%減)。筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカヴァ」が伸びたものの、国内医療用医薬品が薬価改定の影響を受け、係争で収益認識できていなかった多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤリティを前期に一括計上した反動で減収減益となった。25年3月期は売上収益4490億円(2.7%増)、営業利益480億円(30.4%減)を予想。糖尿病治療薬「マンジャロ」などで増収を見込む一方、新製品発売に伴う販管費の増加などが利益を圧迫する。
住友ファーマ(5月14日発表)
▽売上収益3145億5800万円(前期比43.4%減)▽営業利益3548億5900万円の赤字(前期は769億7900万円の赤字)▽当期利益3149億6900万円の赤字(前期は745億1200万円の赤字)。
主力だった抗精神病薬「ラツーダ」の売り上げが特許切れで96.6%減の67億円と大きく減少。前立腺がん治療薬「オルゴビクス」などの基幹3製品が想定に届かず、減損損失の計上で赤字が拡大した。25年3月期は売上収益3380億円(7.5%増)、営業利益0円を予想。基幹3製品の拡大でコア営業利益は10億円の黒字を見込む一方、最終利益は3期連続の赤字となる。
東和薬品(5月14日発表)
▽売上高2279億3400万円▽営業利益176億4700万円▽経常利益244億7700万円▽純利益161億7300万円。子会社の決算期を変更したため、前期との比較は非開示。決算期を調整した前期との比較では17.4%の増収、197.4%の営業増益となった。25年3月期は売上高2615億円(14.7%増)、営業利益180億円(2.0%増)を見込む。
科研製薬(5月14日発表)
▽売上高720億4400万円(前期比1.3%減)▽営業利益95億1300万円(18.9%増)▽経常利益99億5100万円(14.0%増)▽当期純利益80億2500万円(47.5%増)。
関節機能改善薬「アルツ」(180億4000万円、5.7%増)は伸びたものの、爪白癬治療薬「クレナフィン」(171億1600万円、4.8%減)や癒着防止吸収性バリア「セプラフィルム」が売り上げを落とした。販管費の減少で利益は大幅に増加。25年3月期は売上高751億円(4.2%増)、営業利益74億円(22.2%減)を予想。研究開発費の増加が響く。
日本化薬(5月13日発表)
ライフサイエンス事業の売上高635億円(前期比2%増)、営業利益24億円(77%減)。バイオシミラーや抗がん剤の後発医薬品を中心に販売を伸ばしたものの、ライセンス契約の一時金を計上した影響で大幅な減益となった。25年3月期は売上高639億円(1%増)、営業利益66億円(174%増)を予想している。
塩野義製薬(5月13日発表)
▽売上収益4350億8100万円(前期比2.0%増)▽営業利益1533億1000万円(2.9%増)▽税引前利益1982億8300万円(10.0%減)▽当期利益1620億3000万円(12.4%減)。
抗HIV薬のロイヤリティ収入や抗菌薬「フェトロージャ」の欧米での販売などが伸びた。国内医療用医薬品は1511億円で15.9%減。前期に新型コロナ治療薬「ゾコーバ」の政府購入による売り上げを計上していた反動もあり、大幅な減収となった。25年3月期は売上収益4550億円(4.6%増)、営業利益1600億円(4.4%増)を見込む。
サワイグループHD(5月13日発表)
▽売上収益1768億6200万円(前期比8.0%増)▽営業利益186億2000万円(16.0%増)▽税引前利益182億6200万円(15.2%増)▽当期利益136億9500万円(8.1%増)。
新製品の売り上げ拡大で増収増益となった。25年3月期は売上収益2020億円(14.2%増)、営業利益260億円(39.6%増)を予想。第二九州工場新固形剤棟の稼働開始などでコストは増加するものの、新製品や主力品の拡大で増収増益を見込む。
帝人(5月13日発表)
ヘルスケア事業の売上高は1447億円(前期比3.9%減)、営業利益73億円(70.9%減)。アセンディス・ファーマ(デンマーク)からホルモン治療薬を導入したことに伴う契約一時金の支払いなどで大幅減益。痛風・高尿酸血症治療薬「フェブリク」は後発医薬品の影響で74億円(49.0%減)まで売り上げを落とした。帝人は25年3月期から国際会計基準(IFRS)を適用し、ヘルスケア事業で売上高1400億円(IFRSベースの前期実績から50億円減)、営業利益85億円(同95億円減)を見込む。
持田製薬(5月13日発表)
▽売上高1028億8500万円(前期比0.4%減)▽営業利益58億200万円(31.8%減)▽経常利益60億3700万円(33.5%減)▽当期純利益45億4700万円(31.6%減)。
潰瘍性大腸炎治療薬「リアルダ」(145億円、7%増)や慢性便秘症治療薬「グーフィス」(77億円、12%)などが伸びた一方、抗うつ薬「レクサプロ」が後発医薬品の影響で減少。円安による原薬・製剤の輸入価格の上昇も響いた。25年3月期は売上高1060億円(3.0%増)、営業利益75億円(29.3%増)を予想している。
生化学工業(5月13日発表)
▽売上高362億1300万円(前期比8.2%増)▽営業利益4億3300万円(79.5%減)▽経常利益16億9100万円(44.9%減)▽当期純利益21億8600万円(2.2%減)。棚卸資産の評価減、生産体制強化に向けた設備メンテナンスの前倒し、LAL事業の費用増が利益を圧迫した。25年3月期は売上高400億円(10.5%増)、営業利益39億5000万円(812.1%増)を見込む。
明治HD(5月10日発表)
医薬品事業の売上高2061億円(前期比4.5%増)、営業利益227億円(4.6%増)。需要増で抗菌薬の売り上げが伸びた。25年3月期は売上高2458億円(19.3%増)、営業利益250億円(10.2%増)を予想。新型コロナウイルス感染症ワクチン「コスタイベ」の供給開始により、ワクチン事業で大幅な増収を見込む。
日本新薬(5月10日発表)
▽売上収益1482億5500万円(前期比2.8%増)▽営業利益332億9500万円(10.8%増)▽税引前利益336億1600万円(10.3%増)▽当期利益258億5100万円(13.3%増)。
デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」が22.2%増の175億3000万円を売り上げたほか、肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療薬「ウプトラビ」も129億1800万円で22.5%増。工業所有権等収益は31.2%増の403億400万円に達した。25年3月期の業績予想は売上高1500億円(1.2%増)、営業利益310億円(6.9%減)。主力製品が伸びるものの、一部製品の販売価格低下により減益を見込む。
杏林製薬(5月10日発表)
▽売上高1195億3200万円(前期比5.5%増)▽営業利益60億1300万円(17.4%増)▽経常利益66億200万円(13.3%増)▽純利益53億2200万円(12.7%増)。
オーソライズド・ジェネリックが前期を下回ったものの、主力の過活動膀胱治療薬「ベオーバ」(181億円、40.3%増)やニューキノロン系抗菌薬「ラスビック」(49億円、99.5%増)などが伸びた。25年3月期の業績予想は売上高1234億円(3.2%増)、営業利益65億円(8.1%増)。国内新医薬品の売り上げ拡大や後発医薬品の寄与を見込む。
あすか製薬HD(5月10日発表)
▽売上高628億4300万円(前期比3.9%増)▽営業利益65億円(27.3%増)▽経常利益65億2200万円(24.6%増)▽純利益75億4500万円(78.0%増)。
子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「レルミナ」(99億円、12.1%増)が堅調で、月経困難症治療薬「ドロエチ」(61億円、66.3%増)も大きく伸びた。25年3月期の業績予想は売上高630億円(0.2%増)、営業利益67億円(3.1%増)とした。
扶桑薬品工業(5月10日発表)
▽売上高554億700万円(前期比8.6%増)▽営業利益19億6400万円(11.0%減)▽経常利益18億6800万円(15.7%減)▽純利益13億7700万円(14.2%減)。
主力品の人工腎臓用透析剤「キンダリー」や二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「マキサカルシトール」が売り上げを伸ばしたが、売上原価率の上昇で利益を減らした。25年3月期は売上高570億円(2.9%増)、営業利益26億円(32.4%増)を見込んでいる。
JCRファーマ(5月10日発表)
▽売上高428億7100万円(前期比24.8%増)▽営業利益75億3100万円(51.4%増)▽経常利益72億6400万円(34.1%増)▽純利益55億700万円(46.0%増)。
成長ホルモン製剤「グロウジェクト」(179億1300万円、46.1%増)やムコ多糖症2型治療薬「イズカーゴ」(51億7100万円、17.2%増)などが好調だった。25年3月期は売上高413億円(3.7%減)、営業利益54億円(28.3%減)を予想。受託製造の売り上げが減少し、研究開発費も増えることで減収減益となる見通し。
武田薬品工業(5月9日発表)
▽売上収益4兆2637億6200万円(前期比5.9%増)▽営業利益2140億7500万円(56.4%減)▽税引き前利益527億9100万円(85.9%減)▽当期利益1440億670万円(54.6%減)。
血漿分画製剤や消化器、オンコロジー事業が好調だった一方で、無形資産償却費や減損損失の増加などが利益を圧迫した。主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」は14.0%増の8009億円を売り上げた。25年3月期は、売上収益4兆3500億円(2.0%増)、営業利益2250億円(5.1%増)を予想。ADHD治療薬「ビバンセ」への後発医薬品参入の影響が本格化するものの、エンタイビオをはじめとする成長製品・新製品の拡大でカバーする。
小野薬品工業(5月9日発表)
▽売上収益5026億7200万円(前期比12.4%増)▽営業利益1599億3500万円(12.7%増)▽税引き前利益1637億3400万円(14.1%増)▽当期利益1279億7700万円(13.5%増)。
抗がん剤「オプジーボ」(売上高1455億円、2.2%増)や糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病治療薬「フォシーガ」(761億円、34.7%増)などが伸び、増収増益となった。25年3月期は売上収益4500億円(10.5%減)、営業利益1220億円(23.7%減)を予想。オプジーボの薬価引き下げや、同薬に関連する米メルク社などからのロイヤリティ料率低下が響く。
参天製薬(5月9日発表)
▽売上収益3019億6500万円(前期比8.2%増)▽営業利益385億4100万円(前期は30億9000万円の赤字)▽税引き前利益298億7400万円(57億9900万円の赤字)▽当期利益267億300万円(149億8300万円の赤字)。
中国とアジア、EMEAの医療用医薬品が好調だった。日本の医療用医薬品事業は1.6%の減収。25年3月期は売上収益2970億円(1.6%減)、コア営業利益550億円(12.4%減)を見込む。長期収載品の選定療養などが影響する見通し。
旭化成(5月9日発表)
医薬・医療事業の売上高2084億円(前期比4.1%増)、営業利益189億円(17.5%減)。関節リウマチ治療薬「ケブザラ」(売上高112億円、20.7%増)や米ベロキシスの免疫抑制剤「Envarsus XR」(220億円、18.8%増)などが好調。米CDMOバイオノバ買収の影響などで利益は減少した。主力の骨粗鬆症治療薬「テリボン」は2.6%減の388億円だった。25年3月期は売上高2260億円(8.5%増)、営業利益207億円(9.4%増)を見込む。
ツムラ(5月9日発表)
▽売上高1508億4500万円(前期比7.7%増)▽営業利益200億1700万円(4.3%減)▽経常利益234億9300万円(0.2%増)▽当期純利益167億700万円(1.4%増)。
注力製品を中心に国内の医療用漢方製剤が5.9%の増収となったほか、生薬販売を中心とする中国事業も大きく拡大した。25年3月期は、売上高1850億円(22.6%増)、営業利益395億円(97.3%増)を予想。薬価の引き上げが寄与する。
ゼリア新薬工業(5月9日発表)
▽売上高757億2500万円(前期比10.7%増)▽営業利益96億2100万円(6.7%増)▽経常利益85億1300万円(12.3%増)▽純利益77億3100万円(24.8%増)。海外で潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」やクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「ディフィクリア」などが伸びた。25年3月期は売上高830億円(9.6%増)、営業利益100億円(3.9%増)を予想している。
キッセイ薬品工業(5月7日発表)
▽売上高755億7900万円(前期比12.0%増)▽営業利益40億1700万円(前期は11億2900万円の赤字)▽経常利益61億4200万円(925.9%増)▽純利益111億6000万円(6.0%増)。
2023年に発売した慢性特発性血小板減少性紫斑病治療薬「タバリス」とそう痒症治療薬「コルスバ」が寄与したほか、過活動膀胱治療薬「ベオーバ」も伸びた。25年3月期は売上高830億円(9.8%増)、営業利益42億円(4.6%増)を予想。引き続き新製品を中心に売り上げが伸びる見通し。
アステラス製薬(4月25日発表)
▽売上収益1兆6036億7200万円(前期比5.6%増)▽営業利益255億1800万円(80.8%減)▽税引き前利益249億6900万円(81.1%減)▽当期利益170億4500万円(82.7%減)。
前立腺がん治療薬「イクスタンジ」(7505億円、13.5%増)や尿路上皮がん治療薬「パドセブ」(854億円、92.1増)などが好調だった一方、アイベリック・バイオ買収の影響や遺伝子治療薬の減損損失などが利益を圧迫した。大型化を期待して昨年5月に米国で発売した更年期障害治療薬「VEOZAH」の売上収益は73億円。アイベリック買収で獲得した地図状萎縮を伴う加齢黄斑変性治療薬「IZERVAY」(23年9月発売)は121億円を売り上げた。25年3月期は売上収益1兆6500億円(2.9%増)、営業利益480億円(88.1%増)を予想。VEOZAHの売上収益予想は283億円としている。
第一三共(2024年3月期、4月25日発表)
▽売上収益1兆6016億8800万円(前期比25.3%増)▽営業利益2115億8800万円(75.5%増)▽税引き前利益2372億3400万円(87.0%増)▽当期利益2010億1600万円(84.1%増)。
主力の抗がん剤「エンハーツ」や抗凝固薬「リクシアナ」などが好調。ノバルティスから特許侵害訴訟の和解金を受け取ったことで大幅な増益となった。共同販促収入や開発マイルストンを含むエンハーツからの収益は4492億円(73.9%増)。リクシアナの世界売上高は2877億円(17.9%増)に達した。25年3月期の業績予想は、売上収益1兆7500億円(9.3%増)、営業利益2300億円(8.7%増)。エンハーツからの収益は30.3%増の5854億円を見込む。