国内主要製薬企業の2023年3月期第2四半期決算のハイライトをまとめました。随時更新。(最終更新11月15日)
武田薬品工業(10月27日発表)
売上収益1兆9747億7100万円(前年同期比10.1%増)、営業利益2549億5300万円(26.3%減)。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(3466億円、35.4%増)や免疫グロブリン製剤(2451億円、35.2%増)、遺伝性血管性浮腫治療薬「タクザイロ」(728億円、53.2%増)など主力品が増収に寄与。前期に帝人ファーマへの糖尿病治療薬4剤の譲渡益を計上した反動で利益は減少した。上半期の好調な製品販売を踏まえ、23年3月期の業績予想は売上収益3兆9300億円(従来予想比2400億円増)、営業利益5300億円(100億円増)に上方修正した。
アステラス製薬(10月31日発表)
売上収益7621億8500万円(前年同期比17.0%増)、営業利益1198億9100万円(33.0%増)。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」(3320億円、24.1%増)や急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」(235億円、42.5%増)などが伸びた。国内の製品売上高は1320億円(1.8%増)。骨粗鬆症治療薬「イベニティ」が好調だった。23年3月期通期の業績予想は、円安の影響を反映して売上収益を1兆5290億円(従来予想比860億円増)に上方修正。営業利益(2690億円)をはじめ利益面は従来予想を据え置いた。
第一三共(10月31日発表)
売上収益6077億9700万円(前年同期比14.7%増)、営業利益955億8000万円(12.8%増)。グローバル製品の抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「エンハーツ」(開発マイルストンを含めて1019億円、210.8%増)や抗凝固薬エドキサバン(1173億円、18.2%増)などが伸び、増収増益となった。営業利益には中国での抗菌薬事業売却に伴う子会社の譲渡益を含んでいる。23年3月期の通期予想は、売上収益1兆2500億円(従来予想比1000億円増)、営業利益1300億円(250億円増)に上方修正。エンハーツを中心に製品の売り上げが好調に推移していることなどを織り込んだ。
エーザイ(11月7日発表)
売上収益3586億2600万円(前年同期比1.0%減)、営業利益52億5300万円(91.3%減)。抗がん剤「レンビマ」などが好調だったが、前年同期に米ブリストル・マイヤーズスクイブとの提携に関する契約一時金496億円を計上したことや、レンビマに関する米メルクへの折半利益の支払いが増えたことなどによって大幅な減益となった。23年3月期の業績予想は、売上収益を7600億円(従来予想比600億円増)に上方修正。レンビマなどグローバル製品の成長を織り込んだ。利益予想は据え置く。
住友ファーマ(10月31日発表)
売上収益3192億8900万円(前年同期比8.7%増)、営業利益289億1500万円の赤字(前年同期は475億7200万円の黒字)。パーキンソン病治療薬「キンモビ」の販売不振による減損損失544億円を計上したことが響いた。北米の抗精神病薬「ラツーダ」は26.3%増の1276億円と好調だったが、国内の売上収益は薬価改定の影響もあって13.1%減の666億円と落ち込んだ。23年3月期の業績予想は、売上収益6040億円(従来予想比540億円増)、営業利益300億円の赤字(540億円減)。円安で売り上げは従来予想を上回る一方、減損損失の計上で赤字となる。
小野薬品工業(10月31日発表)
売上収益2167億100万円(前年同期比24.5%増)、営業利益802億7000万円(38.0%増)。最主力品の抗がん剤「オプジーボ」は胃がんや食道がんで使用が広がり、24.6%増の699億円を売り上げた。SGLT2阻害薬「フォシーガ」(264億円、68.8%増)も好調だった。23年3月期は、売上収益4400億円(従来予想比150億円増)、営業利益1490億円(40億円増)に上方修正。円安でロイヤリティ収入が従来予想を上回る見通し。
三菱ケミカルグループ(11月8日発表)
医薬品事業の売上収益は2031億円(前年同期比6.4%増)、営業利益29億円(178.1%増)。国内医療用医薬品の売上収益は2.5%増の1553億円で、乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」(310億円、34.2%増)などが好調だった。ALS治療薬「ラジカヴァ」の海外売上高は197億円(57.5%増)。23年3月期の業績予想は、売上収益4100億円(従来予想比5億円増)、営業利益85億円(95億円減)に修正した。
塩野義製薬(10月31日発表)
売上収益1507億7900万円(前年同期比3.9%増)、営業利益282億2400万円(33.8%減)。昨年、後発医薬品が参入した抗うつ薬「サインバルタ」の販売減少などで国内医療用医薬品が29.2%の減収。抗菌薬「Fetroja/Fetcroja」が好調に推移した海外子会社/輸出や、抗HIV薬のロイヤリティ収入は増加した。新型コロナウイルス感染症治療薬・ワクチンの開発で研究開発費が膨らみ、営業利益は大幅な減益となった。24日に23年3月期通期の業績予想の修正を発表しており、売上収益4100億円(期初予想から100億円増)、営業利益1200億円(期初予想から変更なし)を見込む。
大正製薬HD(11月10日発表)
売上高1445億1800万円(前年同期比11.0%増)、営業利益122億700万円(427.6%増)。前年に契約一時金を計上した反動で医薬事業は4.2%減の187億円だったが、海外で解熱鎮痛薬(OTC)の需要が高まったことなどから、全体としては増収増益となった。インバウンド需要の回復や為替の動向など不確定な要素もあるとして、23年3月期の通期予想は従来予想(売上高2805億円、営業利益160億円)を据え置いた。
参天製薬(11月8日発表)
売上収益1289億1500億円(前年同期比0.1%増)、営業利益190億2100億円の赤字(前年同期は188億500万円の黒字)。米国事業で300億円の減損損失を計上したことで赤字となった。売上収益は、薬価改定があった国内や厳格な新型コロナウイルス対策を行う中国で前年を下回ったものの、中国を除くアジアやEMEA(欧州・中東・アフリカ)で医療用医薬品が伸びたほか、国内の一般用医薬品も好調だった。23年3月期の業績予想は、売上収益2800億円(従来予想比160億円増)、営業利益40億円(302億円減)に修正。国内医療用医薬品が想定を上回っており、円安の影響もあって売上収益は従来予想を上回るが、減損損失の計上が利益に響く。最終利益は55億円の赤字になる見込み。
旭化成(11月9日発表)
医薬・医療事業の売上高は989億円(前年同期比15.9%増)、営業利益146億円(7.3%増)。骨粗鬆症治療薬「テリボン」(207億円、11.5%増)や、米子会社ベロキシスの免疫抑制剤「Envarsus XR」(88億円、31.0%増)などが売り上げを伸ばした。同事業の23年3月期の業績予想は、売上高2060億円、営業利益256億円。売上高予想を120億円上方修正した一方、6月に買収した米CDMOバイオノバの連結の影響で営業利益予想は27億円引き下げた。
明治HD(11月8日発表)
医薬品セグメントの売上高は971億円(前年同期比5.5%増)、営業利益146億円(29.9%増)。国内の医薬品販売が好調だったほか、受託製造を行うインド子会社が増収となった。23年3月期の業績予想は上方修正し、売上高1992億円(従来予想比32億円増)、営業利益200億円(15億円増)を見込む。
日医工(11月14日発表)
売上収益912億5000万円(前年同期比6.2%増)、営業利益578億4400万円の赤字(前年同期は140億2600万円の赤字)。米子会社セージェントで474億1700万円の減損損失を計上し、9月末時点で356億円の債務超過となった。売上収益は、国内で薬価改定の影響を受けたものの、販売数量の増加でカバーし、前年同期を上回った。経営再建中のため、23年3月期の業績予想は「未定」としている。
東和薬品(11月14日発表)
売上高905億円(前年同期比10.0%増)、営業利益32億2000万円(68.8%減)。欧州事業が好調だったのに加え、買収した三生医薬の売り上げを計上したことで増収となった一方、買収に伴うのれん償却費などがかさんで減益となった。薬価改定の影響で国内事業は不調だった。2023年3月期通期の業績予想は、売上高1964億円(従来予想比161億円減)、営業利益87億円(103億円減)に下方修正。限定出荷によって薬価改定の影響を販売数量の増加で補えない見込みとなったため、売り上げ・利益とも従来予想を下回る。
帝人(11月7日発表)
ヘルスケアセグメントの売上高は787億円(前年同期比9.4%減)、営業利益は147億円(39.4%減)。6月に後発医薬品が参入した高尿酸血症・痛風治療薬「フェブリク」が46.1%減の104億円に落ち込んだ。23年3月期の同セグメントの業績予想は、売上高1550億円、営業利益235億円。売上高予想は据え置いたが、フェブリクの後発品への切り替えが想定を上回るスピードで進んでいることを踏まえ、営業利益予想を25億円下方修正した。
日本新薬(11月10日発表)
売上収益711億3600万円(前年同期比0.6%減)、営業利益191億6100万円(12.1%減)。デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬「ビルテプソ」(68億5600万円、118.2%増)などが好調だったものの、前年同期に米FDA(食品医薬品局)の優先審査バウチャーの売却収入を計上していた反動もあり、減収減益となった。製品売上高が当初予想を上回る見込みだとして、23年3月期の通期予想を売上収益1410億円(従来予想比70億円増)、営業利益300億円(30億円増)に上方修正した。
ツムラ(11月4日発表)
売上高701億700万円(前年同期比10.5%増)、営業利益116億7700万円(0.1%減)。新型コロナウイルスの症状(発熱、咳など)や後遺症(咳、倦怠感、不安など)に関連する処方などが増えたほか、原料生薬の販売を中心とする海外事業の売り上げも拡大。一方、物価高騰による原価の上昇や中国・天津工場の稼働に向けた費用増で営業利益は前年同期並みにとどまった。2023年3月期通期の業績予想は、従来予想(売上高1385億円、営業利益208億円)から変更はない。
持田製薬(11月4日発表)
売上高532億円(前年同期比1.5%減)、営業利益52億7900万円(13.9%減)。抗うつ薬「レクサプロ」が後発医薬品参入の影響を受けたほか、高脂血症・閉塞性動脈硬化症治療薬「エパデール」などの長期収載品が軒並み売り上げを落とした。23年3月期の業績予想は、従来の売上高1050億円、営業利益85億円を据え置いた。
キョーリン製薬HD(11月9日発表)
売上高490億9300万円(前年同期比0.0%減)、営業利益7億7700万円(前年同期は6800万円の赤字)。過活動膀胱治療薬「ベオーバ」などの新薬群は伸びたが、薬価改定の影響で長期収載品が売り上げを落とした。23年3月期の業績予想は、売上高1120億円、営業利益55億円の従来予想を据え置いた。
科研製薬(11月8日発表)
売上高368億1900億円(前年同期比2.0%減)、営業利益82億900万円(9.2%減)。薬価改定の影響で、関節機能改善剤「アルツ」や癒着防止吸収性バリア「セプラフィルム」などが売り上げを落とした。23年3月期の業績予想は、従来の売上高764億円、営業利益150億円を据え置いた。
ゼリア新薬工業(11月2日発表)
売上高337億1200万円(前年同期比179%増)、営業利益58億9400万円(120.6%増)。主力の潰瘍性大腸炎治療薬「アサコール」が海外で売り上げを伸ばし、大幅な増収増益となった。炎症性腸疾患治療薬「エントコート」やクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「ディフィクリア」も好調だった。23年3月期通期の業績予想(売上高660億円、営業利益70億円)に変更はない。
キッセイ薬品工業(11月8日発表)
売上高328億6400万円(前年同期比1.5%増)、営業利益6億2500万円の赤字(前年同期は2億7000万円の黒字)。過活動膀胱治療薬「ベオーバ」や腎性貧血治療薬「ダルベポエチン アルファBS注JCR」などが売り上げを伸ばした一方、スイス・オブシーバとのリンザゴリクスのライセンス契約解約に向けた海外臨床試験の引き継ぎで研究開発費が増加し、利益を圧迫した。23年3月期の業績予想は、売上高685億円(従来予想比5億円増)、営業利益5億円(23億円減)に修正した。
あすか製薬HD(11月7日発表)
売上高301億7200万円(前年同期比6.0%増)、営業利益28億7900万円(8.3%増)。子宮筋腫・子宮内膜症治療薬「レルミナ」が45億2400万円(22.2%増)と好調だったほか、ほかの主要製品も全体的に堅調だった。23年3月期の業績予想は、売上高600億円(従来予想比25億円増)、営業利益52億円(10億円増)に上方修正。主要製品の好調な販売を反映した。
扶桑薬品工業(11月9日発表)
売上高253億7100万円(前年同期比1.6%増)、営業利益12億8500万円(2.5%増)。後発医薬品の販売が伸びた。23年3月期の業績予想は、売上高500億円を据え置く一方、営業利益は19億円(従来予想比3億円増)に上方修正。売上原価率が当初予想を下回る見込み。
日本化薬(11月8日発表)
医薬事業の売上高253億円(前年同期比0.8%減)、営業利益45億円(9.6%増)。国内の医療用医薬品は抗がん剤を中心とする後発医薬品が伸び、0.3%の増収だった。23年3月期は売上高523億円、営業利益85億円を見込む。
生化学工業(11月8日発表)
売上高172億5800万円(前年同期比15.9%減)、営業利益26億1000万円(56.8%減)。ロイヤリティ収入の減少や薬価改定の影響で減収減益となった。「関節機能改善剤ジョイクルのショック、アナフィラキシー発現に関する原因究明の進捗を見極める必要がある」として開示を見送っていた23年3月期の業績予想は、売上高335億円、営業利益17億円と公表した。
日本ケミファ(10月31日発表)
売上高162億3700万円(前年同期比4.3%増)、営業利益1億6700万円(18.8%減)。通風・高尿酸血症治療薬「ウラリット」などは振るわなかったものの、後発医薬品の増産などで医療用医薬品は1.7%増の136億9500万円だった。薬価改定と物価上昇で利益は減少。23年3月期の通期予想は従来予想(売上高350億円、営業利益3億円)を据え置いた。
JCRファーマ(10月26日発表)
売上高155億8100万円(前年同期比45.1%減)、営業利益7億4400万円(94.5%減)。前期に大幅な増収増益をもたらしたアストラゼネカ製新型コロナウイルスワクチンの受託製造が終了し、売り上げ、利益とも前年同期を大きく下回った。成長ホルモン製剤「グロウジェクト」などが薬価改定の影響を受けた一方、ムコ多糖症II型治療薬「イズカーゴ」の売り上げが倍増し、主力製品の合計売上高は前年同期と同水準だった。23年3月期通期の業績予想に変更はない。
わかもと製薬(11月7日発表)
売上高40億1900万円(前年同期比0.3%増)、営業利益85000万円の赤字(前年同期は1億7200万円の赤字)。眼科手術補助剤「マキュエイド」などが伸びた一方、緑内障・高眼圧症治療薬「ドルモロール」などが減少し、医薬事業は2.5%の減収だった。23年3月期の業績予想は、売上高85億円、営業利益9000万円の従来予想を据え置いた。