東証プライム上場の主要製薬企業28社の2021年度の従業員数は、単体ベースで前年度比0.3%減と2年連続でほぼ横ばいとなったことがAnswersNewsの集計でわかりました。千人規模の減少が続いていた数年前までと比べると下げ止まった感はありますが、21年度は希望退職者の募集に約650人が応募したアステラス製薬が15%減らしており、予断を許さない状況は続きます。
武田と中外、5000人台回復
集計対象としたのは、2021年4月~22年3月に本決算を迎えた東証プライム上場の製薬企業30社(うち4社は後発医薬品メーカー)。各社の有価証券報告書をもとに、従業員数を単体と連結それぞれで集計しました。21年4月に持株会社となったあすか製薬ホールディングス(HD)とサワイグループHDは前年度との比較ができないため、合計からは除外しています。
あすか製薬HDとサワイグループHDを除く28社の21年度の従業員数は、単体ベースで計5万6630人で、前年度から0.3%(154人)減。製薬28社の単体従業員数は19年度に3.8%(2230人)減と大きく減りましたが、20年度は0.0%(21人)増で、2年連続でほぼ横ばいとなりました。21年度に従業員が減少したのは11社で、残る17社は増加しました。
減少が最も大きかったのは、前年度から15.1%(704人)減となったアステラス製薬。同社は昨年6月に450人程度の想定で希望退職者の募集を発表し、これに応募した約650人が同年末で退職しました。このうち約500人は営業部門だったといい、同社の岡村直樹副社長は今年2月の決算説明会で「(人員は)常に見直していくことが不可欠。新型コロナウイルスもあって見直しに拍車がかかっている部分もあり、これで終わるというつもりはまったくない」と話しています。
ほかに減少が大きかったのは、科研製薬(4.6%減)、塩野義製薬(3.1%減)、キッセイ薬品工業(3.0%減)など。参天製薬やゼリア新薬工業なども1%台の減少となりました。
一方、従業員数の増加が大きかったのは、JCRファーマ(10.8%増)、日医工(6.2%)、武田薬品工業(3.7%増)、中外製薬(3.4%増)など。日医工は、製造不正のあった富山第一工場で品質保証関連の人員を大幅に増員。19年度に早期退職を行い5000人を割った中外製薬は、2年連続の増加で5000人台を回復し、20年度に「フューチャー・キャリア・プログラム」と称する早期退職を行った武田も再び5000人を上回りました。
連結ベースの従業員数は、アステラスが6.0%(933人)の減少となった一方、東和薬品が今年3月の三生医薬の買収によって18.0%(622人)増加しました。
第一三共や小野薬品など 5年連続増加
東証プライム上場製薬企業の単体従業員数は2013年度をピークに減少傾向が続いています。13年度を100とした場合、28社の単体従業員数は21年度までの8年間で91まで減少。市場拡大を背景に後発品メーカーが141まで従業員数を増やしてきたのに対し、大手を中心に早期退職の募集が相次いだ新薬メーカーは88まで減少しました。
人員の減少は大手を中心に進んできましたが、ここ数年は規模の小さい企業にも広がっています。28社を▽21年度の単体従業員数が3000人以上▽同1000~2999人▽同999人以下――の3つに分類して見てみると、3000人以上の企業は13年度以降、減少傾向が続いており、1000~2999人の企業と999人以下の企業も19年度以降は13年度の水準を下回っています。
5年前の16年度と比較すると、アステラス製薬(24.0%減)や武田薬品工業(22.4%減)の減少が目立ちますが、中堅の日本ケミファ(28.0%減)、ゼリア新薬工業(18.8%減)、科研製薬(17.6%減)も2桁の減少となっています。
一方、5年前から単体ベースの従業員数を増やしているのは、後発品メーカーのほか、小野薬品工業(9.5%増)、第一三共(7.8%増)、日本新薬(5.8%増)、中外(1.9%増)など。中でも、小野や第一三共、日本新薬は5年間増加を続けています。
人員の増減は各社のポートフォリオに依存する面が大きいものの、停滞が予測される国内市場でいかに収益性を高めていくかは各社共通の課題。全体的には、組織の縮小傾向は今後も続いていきそうです。