2024年の国内医薬品市場、前年比2%増…3年連続過去最高、ワクチンなど伸びる

IQVIAは3月3日、2024年の国内医療用医薬品市場が前年比2.0%増の11兆5037億円だったと発表した。昨年10月に定期接種化された新型コロナウイルス感染症ワクチンを含むワクチン類が大きく伸び、3年連続で過去最高を更新した。製品別では、MSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が3年ぶりに首位となった。

ワクチン類44%増

市場の内訳は、▽病院（病床数100床以上）5兆4110億円（前年比2.3%増）▽開業医（100床未満）2兆1691億円（3.2%増）▽薬局その他3兆9237億円（0.8%増）――。開業医市場は、糖尿病治療薬の堅調な成長とワクチンやアトピー性皮膚炎向け新薬の拡大で前年の伸び率を大きく上回った。一方、病院市場は抗腫瘍剤の成長鈍化で前年の伸び率を下回り、薬局その他市場も新型コロナ検査薬・治療薬の減少で伸び率が縮小した。

薬効別では「抗腫瘍剤」が1兆9076億円でトップ。伸び率は1.7%で、10.5%増で2桁増となった前年を下回った。23年の受診増の反動が出たほか、昨年4月の薬価改定も響いた。

2位の「糖尿病治療剤」（7581億円、6.1%増）は、GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」やSGLT-2阻害薬「ジャディアンス」「フォシーガ」が拡大。3位の「免疫抑制剤」（6401億円、4.8%増）では、アトピー性皮膚炎などの治療薬「デュピクセント」や関節リウマチなどの治療薬「リンヴォック」などが伸びた。

7位の「ワクチン類」は前年比44.1%増の3390億円と大きく拡大。定期接種化された新型コロナワクチンや、キャッチアップ接種が行われているHPVワクチンなどが貢献した。9位の「その他の治療を目的とする薬剤」（3040億円、12.3%増）には漢方薬が含まれており、伸びの大半は漢方薬の薬価引き上げによるものだった。

24年10～12月の市場は前年同期比4.0%増の3兆1222億円。7～9月は14四半期ぶりに前年割れとなったが、再び拡大に転じた。

キイトルーダ、1852億円で3年ぶり首位

製品売上高（薬価ベース）では、キイトルーダが1852億円（16.2%増）で21年以来の首位。昨年5月の胃がんと胆道がんへの適応拡大が成長に貢献した。2位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」（1477億円、12.3%増）、3位は前年首位だった小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」（1446億円、13.0%減）。オプジーボは再算定の「共連れ」による薬価引き下げが響いた。

初めてトップ10にランクインしたのは、5位に入ったサノフィのデュピクセント。51.4%増の1177億円を売り上げ、初めて1000億円を突破した。8位のフォシーガも22.2%増と大きく伸びた。

上位10製品のうち1000億円を超えたのは8製品。前年から2製品増えた。

24年10～12月の製品売上高は、ファイザーの新型コロナワクチン「コミナティ」が657億円でトップ。2位はキイトルーダ（517億円、18.8%増）、3位はリクシアナ（406億円、12.6%増）、4位はオプジーボ（352億円、17.6%減）だった。

中外4年連続トップ

企業別の売上高ランキングでは、販促会社レベル（MRによる学術宣伝を通じて販促活動を行っている企業。2社以上ある場合はよりオリジネーターに近い企業）で中外製薬が4年連続の首位。売上高は5330億円で、前年から2.4%減った。2位はアストラゼネカ、3位は第一三共で、上位3社は前年と変わらず。4位のMSDと5位の武田薬品工業は順位が入れ替わった。

2桁成長となったのは、8位のファイザー（29.9%増）、11位のサノフィ（14.7%増）、20位のツムラ（18.6%増）。ツムラは漢方薬の薬価引き上げが追い風となった。

販売会社レベル（卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ企業）のランキングでは、武田薬品がトップ。2位は第一三共、3位は中外だった。