1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 製薬17社、23年度の国内売上高1.5%減…長期収載品の選定療養、収益低下に追い打ちか
ニュース解説

製薬17社、23年度の国内売上高1.5%減…長期収載品の選定療養、収益低下に追い打ちか

更新日

穴迫励二

国内の主な製薬企業17社の2024年3月期の国内医療用医薬品の売上高は、前期から1.5%減となりました。薬価改定や後発医薬品の参入が響いており、今期も減収予想で上昇の気配は見られません。10月には長期収載品への選定療養導入が控えており、収益低下に追い打ちをかける懸念もあります。

 

 

トップ第一三共は13.3%増収

IQVIAが今月21日に発表したデータによると、23年度の国内市場は前年度比3.1%増と堅調な伸びでした。集計対象とした内資17社がマイナス成長となっていることから、国内市場の伸びは外資によるところが大きいと言えそうです。

 

売り上げ金額は、5189億円(前期比13.3%増)の第一三共が、武田薬品工業(4514億円、11.8%減)を抑えてトップでした。第一三共は抗凝固薬「リクシアナ」が9.9%増の1156億円となり、疼痛治療薬「タリージェ」も18.9%増と伸長。海外で市場を拡大する抗がん剤「エンハーツ」は239億円と倍増し、前の期はほとんど処方されなかった抗インフルエンザ治療薬「イナビル」も159億円を売り上げました。一方の武田薬品は、高血圧症治療薬「アジルバ」への後発品参入の影響を受けました。

 

3000億円台に乗せた小野薬品工業はSGLT2阻害薬「フォシーガ」が成長を牽引。アステラス製薬は2年連続の増収で底を打ったように見えます。塩野義製薬は前の期に新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」の政府買い上げがあった反動で減収となり、住友ファーマはGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」の販売提携終了が痛手となりました。

 

東和薬品とサワイグループホールディングス(HD)の後発品企業2社はそろって増収。販売数量の増加に加え、仕切り価戦略が功を奏しました。

 

【24年3月期 製薬各社の国内医療用医薬品売上高】〈社名/24年3月期/前期比/25年3月期予想/前期比〉第一三共/518,900/13.3/434,900/▲ 16.2|武田薬品工業/451,400/▲ 11.8/―/ー|小野薬品工業/308,229/7.0/―/ー|田辺三菱製薬/300,800/▲ 3.0/315,600/4.9|アステラス製薬/269,000/3.5/278,000/3.3|エーザイ/194,300/▲ 9.8/195,500/0.6|参天製薬/160,200/▲ 1.6/148,600/▲ 7.2|塩野義製薬/151,100/▲ 15.9/134,900/▲ 10.7|ツムラ/132,099/5.9/163,400/23.7|杏林製薬/119,145/5.5/122,900/3.2|住友ファーマ/114,700/▲ 37.6/100,300/▲ 12.5|持田製薬/96,455/▲ 0.9/99,180/2.8|日本新薬/84,801/▲ 7.1/86,800/2.4|科研製薬/51,407/1.5/―/ー|生化学工業/12,100/7.3/12,000/▲ 0.8|東和薬品/178,715/18.7/209,700/17.3|サワイGHD/176,862/8.0/202,000/14.2|計/3,320,213/▲ 1.5/2,503,780/▲ 0.2|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

内資企業の国内市場は全体として芳しくありませんが、こうした状況を受けた組織・構造改革に動く企業も見られます。

 

昨年10月に約300人が早期退職した塩野義は、人員の入れ替えを進める中で「次の人的資本をどう集めていくか」(手代木功社長)が課題になっています。アステラス製薬も早期退職で約1200人いたMRが800人まで減少。結果として1人あたりの生産性は2.2億円から3.4億円に上昇します。近い将来、主要製品の特許切れで国内売上収益の減少が懸念される小野薬品は、新たな製品導入を見越しつつ、営業体制のあり方を段階的に判断していくとしています。

 

今期予想は0.5%減

今期の国内売上高の予想は、開示した14社の合計で0.2%減とほぼ横ばいです。第一三共は、後発品子会社の第一三共エスファがクオールへHDへの株式譲渡で連結対象から外れるため、16.2%の減収を予想。塩野義は前期にあった一時金の反動、住友ファーマはパーキンソン病治療薬「トレリーフ」への後発品参入が響きます。参天製薬は、主力品への後発品の浸透や薬価改定で7.2%の減収予想です。

 

2桁増収を予想するのは3社。ツムラは、4月の薬価改定で不採算品再算定によって多くの製品で薬価が引き上げられ、23.7%増と大幅な増収となる見通しです。東和とサワイは販売量の増加を見込みます。

 

武田薬品は予想を開示していませんが、アジルバは後発品の侵食を受けて約70%減の100億円まで売り上げを落とす見通し。小野薬品も、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が薬価の再算定で14.1%減の1250億円に減少すると予想しています。いずれも主力品なだけに影響は小さくなさそうです。

 

選定療養、影響予測難しく

今期の国内業績を占う上で予想が難しいのが、長期収載品への選定療養導入の影響です。対象となる長期品を持つ企業では業績を押し下げる要因となりますが、影響を測りかねている企業も少なくありません。

 

対象となる品目が最も多い田辺三菱製薬は「長期品に依存しない製品ラインアップの整備を進めてきたので、影響は限定的」と分析しています。大手新薬メーカーでは事業活動の中心からは外れるため、「後発品への置き換えは一定程度進むとみられるが、選定療養を織り込んだ予想は立てていない」(アステラス)といった対応が主流です。

 

一方、中堅や長期品主体のビジネスを展開する企業では、売り上げの減少が懸念されます。ただ、窓口負担の増加で患者の行動がどう変わるのか、見通しは立てづらそうです。6製品15品目が対象となる杏林製薬は「ムコダイン」「ペンタサ」「キプレス」の3成分だけでも売り上げ全体の20%(235億円)を占めますが、「影響が明確に見通せないため予想には加味していない」と言います。長期品だけを扱う太陽ファルマも「想定が困難」としました。

 

【選定療養の対象となる主な長期収載品】カッコは24年3月期の国内売上高(億円)〈社名/対象/主な製品〉参天製薬/11成分17品目/ヒアレイン(52)、コソプト(40)、クラビット(11)|杏林製薬/6成分15品目/ペンタサ(123)、キプレス(70)、ムコダイン(42)|持田製薬/7成分15品目/エパデール(74)、レクサプロ(52)、ディナゲスト(11) 科研製薬/3成分4品目/アルツ(180)|※各社の決算発表資料をもとに作成

 

参天「コア営業利益に20億円のマイナス影響」

科研製薬の関節機能改善剤「アルツ」(製造販売元は生化学工業)は、24年3月期に180億円を売り上げたトップ製品。後発品参入から20年以上たった今も7割強のシェアを持っています。今期は190億円と増収を見込みますが、注射剤なこともあって「現時点でどこまで切り替わるか不明」とし、予想には含めていません。

 

恩恵を受ける側の後発品企業では、サワイグループHDが「今年度の予算に反映できる状況にはない。見極めた上でオペレーション上の対応をしたい」と10月のスタートを待つ姿勢です。抗潰瘍薬「ネキシウム」のオーソライズド・ジェネリック(AG)を持つニプロは、「患者負担が増えることで、先発品市場からの切り替えが促進される」と予想。AGは24年3月期のシェアが成分内で51%、後発品内では67%に達する中、さらなるシェアアップを図る考えを示しています。

 

唯一、具体的な影響額を明らかにしたのは参天製薬で、「コア営業利益に対して20億円程度の押し下げ要因になると考えている。対象となる11成分17品目で3~4割のダウンサイドリスクがある」(中島理恵COO)としています。眼科領域に特化する同社の見立てを市場全体に当てはめることができるかどうかはわかりませんが、下期の業績を見通す1つのポイントになるかもしれません。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる