東証プライム上場の主要製薬企業29社の2022年度末の従業員数は単体ベースで前年度比2.9%増となり、9年ぶりに増加に転じたことがAnswersNewsの集計で分かりました。22年度は武田薬品工業やアステラス製薬などの大手が単体従業員数を増やし、全体を押し上げた一方、中堅企業では減少傾向が続いています。
9年ぶり増加
集計対象としたのは、2022年4月~23年3月に本決算を迎えた東証プライム上場の製薬企業29社。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結の従業員数を集計しました。
29社の22年度末の従業員数は単体ベースで計5万7105人となり、前年度から2.9%(1589人)増加。比較可能な24社の単体従業員数は13年度をピークに21年度まで8年連続で減少しており、増加は9年ぶりです。連結ベースでは18万8278人で、前年度比1.1%(2063人)の増加となりました。
単体ベースの従業員数の増加が最も大きかったのは、23.4%(924人)増となったアステラス製薬。同社は22年4月に製造子会社アステラスファーマテックなど子会社2社を吸収合併しており、これが大幅な人員増につながりました。連結従業員数は0.3%減の1万4484人とほぼ横ばいです。
アステラスのほかに単体従業員数を増やしたのは、武田薬品工業(6.5%増)や東和薬品(5.8%増)、協和キリン(3.8%増)など。武田薬品は連結ベースでも3.7%(1748人)増加しており、連結では第一三共(5.9%増)も1000人近く人員を増やしました。小林化工の製造部門を受け入れたサワイグループホールディングス(HD)は14.3%(425人)の大幅増となっています。
一方、単体ベースで従業員数を減らしたのは、久光製薬(4.2%減)や科研製薬(3.0%減)、キッセイ薬品工業(2.9%減)など。連結ベースでは住友ファーマの10.5%(737人)減が目立ちます。
中堅は軒並み減少
集計対象とした29社から持株会社を除く24社の単体従業員数は、ピークとなった13年度を100とした場合、21年度までの8年間で89.5まで減少。22年度は92.1と、大手の人員増によって4年前を若干下回る水準まで戻しました。
これら24社を▽22年度の単体従業員数が3000人以上▽同1000人~2999人▽同999人以下――に分けて見てみると、3000人以上の企業は21年度にかけて86.9まで減少したあと、22年度は90.8に増加。999人以下の企業は2年連続の増加で、22年度は96.6となりました。一方、1000~2999人の企業は2年連続の減少で、22年度は10社中7社が人員減。13年度と比べると93.5まで減少しています。
各社の単体従業員数を5年前と比較すると、塩野義製薬(33.2%減)、日本ケミファ(27.1%減)、科研製薬(19.2%減)などが2桁減。一方、JCRファーマ(58.1%増)、東和薬品(17.6%増)、富士製薬工業(13.9%)などは大きく人員を増やしました。業績が拡大する第一三共や小野薬品工業は5年連続で単体従業員数が増加しています。
全体的に見ると減少傾向に歯止めがかかってきたと言えますが、個別の企業では23年度も中外製薬や塩野義製薬が早期退職を行っています。中外は今年4月に募集を行い、応募した374人が6月末に退職。塩野義は約200人の枠で8月に募集を開始します。両社とも足元の業績は好調ですが、将来を見据えて人員体制や人材ポートフォリオを見直す動きは今後も続きそうです。