IQVIAは5月20日、2020年度(20年4月~21年3月)の国内医療用医薬品市場が前年度比2.7%減の10兆3475億6500万円だったと発表した。会計年度で前年度を下回るのは2年ぶり。昨年4月の薬価改定に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が打撃となった。製品売上高では、MSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が前年度に続いてトップだった。
開業医市場 2兆円割る
国内市場が会計年度で10兆円を超えたのは6年連続。市場の内訳を見ると、▽病院(病床100床以上)4兆7279億3800万円(前年度比1.3%減)▽開業医(100床未満)1兆9916億8000万円(5.7%減)▽薬局その他3兆6279億4700万円(2.6%減)――で、3市場すべてで前年度を下回るのは16年度以来。開業医市場は、05年度以降で初めて2兆円を割った。
薬効分類別では「抗腫瘍剤」が1兆5186億8300万円(5.1%増)でトップ。2位は「糖尿病治療剤」(6105億6300万円、4.4%増)、3位は「免疫抑制剤」(4786億1600万円、3.4%増)だった。売り上げ上位10薬効の顔ぶれは前年度とまったく同じ。9位の「脂質調整剤および動脈硬化用剤」と10位の「喘息およびCOPD治療剤」は2ケタのマイナスとなった。
21年1~3月期の市場は、2兆4673億4200万円で前年同期比1.0%減。四半期ベースの成長率は、20年4~6月期以降、4期連続のマイナスとなっている。
キイトルーダ、2ケタ減でもトップ維持
製品売上高(薬価ベース)では、MSDの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が1182億6900万円でトップ。昨年4月の改定で市場拡大再算定の特例により20.9%の薬価引き下げを受けた同薬は、前年度から12.9%売り上げを落としたが、2年連続の首位をキープした。2位は小野薬品工業の同「オプジーボ」(1128億7000万円、14.7%増)で、3位には前年度7位だった武田薬品工業の消化性潰瘍治療薬「タケキャブ」(1008億7500万円、14.4%増)がランクイン。前年度2位の抗がん剤「アバスチン」(中外製薬)は4位に後退した。
企業トップは武田
販売会社レベル(卸に製品を販売し、その代金を回収する機能をもつ企業)の売上高では、武田薬品がトップ。2位は第一三共、3位はファイザーだった。
販促会社レベル(MRによる学術宣伝を通じて販促活動を行っている企業。2社以上ある場合はよりオリジネーターに近い企業)でも、武田薬品が首位。2位は中外製薬、3位は第一三共だった。前年首位だったファイザーは、特許切れ薬を分離したことで11位に後退。ファイザーの特許切れ薬とマイランが合併して誕生したヴィアトリス製薬が15位に入った。
薬価改定などの影響で多くの企業が売り上げを落とす中、販促会社レベルのランキングで売り上げを伸ばしたのは、武田薬品やヤンセンファーマ、小野薬品など。ヤンセンは12位から6位へと大きく順位を上げた。