年間1億円以上で個別開示が義務付けられている上場企業の役員報酬。製薬各社の直近の事業年度の有価証券報告書を調べたところ、21社43人が1億円以上の報酬を受け取っていました。最高額は武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長の17億2300万円。人数では大塚ホールディングスの5人が最多でした。
トップ3は4年連続で武田の3人
調査対象は、2022年4月から23年3月に本決算を迎えた製薬企業(OTCメーカーやバイオベンチャーを含む)。各社が公表した有価証券報告書をもとに、1億円以上の報酬を受けた役員を集計しました。
トップは今年も武田薬品工業のクリストフ・ウェバー代表取締役社長CEO(最高経営責任者)で、役員報酬の総額は前年度比1億3500万円減の17億2300万円。武田本体からの基本報酬は2億3000万円、賞与が1億8100万円で、業績連動株式ユニット報酬(6億8800万円)と譲渡制限付株式ユニット報酬(4億6300万円)が大半を占めました。ウェバー氏はこのほか、米国子会社から基本報酬6500万円、賞与9600万円を受け取っています。
2位は武田薬品のアンドリュー・プランプ取締役リサーチ&ディベロップメントプレジデント(9億7300万円、前年度比5400万円増)。3位は同社のコンスタンティン・サルウコス取締役CFO(最高財務責任者)で、6億9100万円(1600万円増)でした。武田薬品の3人が上位を占めるのは4年連続。武田薬品からはこのほか、6月に退任した岩崎真人氏(前代表取締役日本管掌)も名を連ねました。
第一三共の奥澤社長、参天の伊藤社長らが新たに開示
武田薬品の3人に続く4位は、アステラス製薬の安川健司代表取締役会長で、報酬の総額は700万円増の4億5200万円。5位は4億200万円(6100万円増)を受け取った第一三共の眞鍋淳代表取締役会長でした。
今年、新たに開示対象に加わったのは、4月に就任した第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長COO(最高執行責任者、1億5200万円)、協和キリンの大澤豊代表取締役副社長(1億600万円)、昨年9月に就任した参天製薬の伊藤毅代表取締役社長CEO(1億300万円)ら。ベンチャー企業からは、ジーエヌアイグループのイン・ルオ取締役代表執行役社長CEO、ステムリムの岡島正恒代表取締役社長執行役員、窪田製薬ホールディングス(HD)の窪田良取締役代表執行役会長・社長CEOらが1億円以上の報酬を受けました。
開示人数最多は大塚HD
今回の集計で1億円以上の役員報酬を受け取っていたのは43人で、昨年の集計から3人減少。43人に支払われた報酬は計112億4000万円で、昨年の46人111億8000万円からわずかに増加しました。
個別開示の対象となった役員の人数が最も多かったのは、大塚HDの5人。エーザイ、第一三共、武田薬品の4人、ペプチドリームの3人と続きました。ペプチドリームは昨年、開示人数が一昨年の3人から0人に減少していましたが、今年の集計では再び3人が開示の対象となりました。
東京商工リサーチの6月30日時点のまとめによると、23年3月期決算の上場企業で役員報酬を個別開示したのは717人(316社)で、前年の667人(289社)を上回って過去最多を更新しました。最高額はZホールディングスの慎ジュンホ代表取締役の48億円6700億円。武田薬品のウェバー氏が3位、プランプ氏が9位となっています。
3月期決算の企業で開示人数が最も多かったのは、日立製作所の20人。2位は伊藤忠商事(14人)で、3位は三菱重工業(10人)でした。
武田社長、従業員の157倍
役員と従業員の「年収格差」が最も大きかったのは、報酬額トップのウェバー氏。役員報酬17億2300万円を、有価証券報告書で公開されている従業員の平均年収1097万2000円で割ると、格差は157倍となりました。
報酬額2位のプランプ氏は88.7倍、3位のサルウコス氏は63倍。アステラスの安川氏は42.6倍でした。
従業員との格差が20以上となった役員は20人で、昨年の集計から4人増えました。