IQVIAは6月1日、2022年度(22年4月~23年3月)の国内医療用医薬品市場(薬価ベース)が前年度比2.6%増の10兆9688億円だったと発表した。新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬が伸び、会計年度としては05年の統計発表開始以来、過去最高となった。製品売上高では小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が2年連続のトップだった。
全身性抗ウイルス薬が78%増、診断薬は46%増
会計年度ではこれまで15年度の10兆円8378億円が最高だった。統計には、政府が一括購入している新型コロナワクチンや一部の新型コロナ治療薬は含まない。
市場の内訳を見ると、▽病院(100床以上)5兆938億円(前年度比2.5%増)▽開業医(100床未満)2兆736億円(3.7%増)▽薬局その他3兆8014億円(2.2%増)――。2年連続で3市場ともプラスとなった。
薬効分類別では、「抗腫瘍剤」が1兆7839億円(6.2%増)で最大。2位は「糖尿病治療剤」(6759億円、5.0%増)、3位は「免疫抑制剤」(5724億円、6.9%増)だった。新型コロナの流行により「診断用検査試薬」が前年度比45.8%増の4508億円と伸び、順位も前年度の7位から4位に上昇。新型コロナ治療薬「ベクルリー」「ラゲブリオ」を含む「全身性抗ウイルス薬」も77.6%増加し、4年ぶりに上位10薬効に入った。10位の「その他の治療を目的とする薬剤」ではアストラゼネカの高カリウム血症治療薬「ロケルマ」が売り上げを大きく伸ばした。
23年1~3月期の市場は2兆5905億円で、前年同期比1.3%増。診断用検査試薬は13.5%減と大幅に減少した。
「オプジーボ」2年連続売り上げトップ
製品別売上高では、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が1589億円(26.7%増)を売り上げ、2会計年度連続でトップとなった。2位はMSDの同「キイトルーダ」(1346億円、12.6%増)、3位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」(1202億円、15.2%増)。新型コロナ治療薬ベクルリーは前年度比408.2%増の1077億円で6位だった。
23年1~3月期の製品売上高では、MSDの同ラゲブリオが188億円で10位にランクインした一方、ベクルリーはトップ10圏外となった。トップは398億円(前年同期比19.3%増)のオプジーボで、2位は353億円(21.8%増)のキイトルーダ、3位は288億円(15.0%増)のリクシアナだった。
販促会社レベルで中外が2年連続首位
企業別の売上高ランキングでは、販促会社レベル(MRによる情報提供活動を通じて販促活動を行っている企業)で中外製薬が初の首位となった21年度に続いてトップをキープ。売上高は5324億円で前年度から1.4%増加した。2位は武田薬品工業(4976億円、前年度比1.5%減)、3位はアストラゼネカ(4545億円、4.6%増)で、上位の顔ぶれは21年度から変わらず。ベクルリーが伸びたギリアド・サイエンシズは20位に入った。
販売会社レベル(卸に対して製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ企業)では武田薬品が7401億円(1.7%減)で1位。2位は第一三共、3位は中外だった。