国内主要製薬会社の2020年3月期第3四半期決算が出揃い、今期の着地が見えてきました。AnswersNewsが主要企業の業績予想を集計したところ、20年3月期の売上高は前期比0.2%減、営業利益は8.5%増となる見通し。主力製品が堅調に推移し、期初の予想を上回って着地する見込みです。
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武田 営業利益が黒字予想に
2020年3月期に連結売上高1000億円以上を予想する国内主要製薬会社12社の業績予想をAnswersNewsが集計したところ、売上高は前期比16.7%増、営業利益は12.4%減となりました。
シャイアー買収で大幅な増収・減益を見込む武田薬品工業を除くと、売上高は0.2%減、営業利益は8.5%増となる予想。今期は、主力製品の好調な推移を背景に業績予想を上方修正する企業が相次ぎ、期初の予想と比べると売上高は1.3%、営業利益は9.8%、それぞれ上振れして着地する見通しです(武田薬品を含めると売上高は0.6%、営業利益は46.4%上振れの見通し)。
期中に業績予想を3度修正した武田薬品は、最終的に売上高3兆2860億円(前期比56.7%増)、営業利益100億円(95.1%減)となる見込み。シャイアー買収が通期で貢献する上、潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンタイビオ」などの主力品が好調で、国内の製薬企業として初めて売上高3兆円を突破します。期初に1930億円の赤字としていた営業損益予想は、買収に伴う会計上の費用が減少したことで100億円の黒字に転じました。
アステラス製薬は、過活動膀胱治療薬「ベシケア」や抗がん剤「タルセバ」の特許切れで減収減益を見込んでいましたが、抗がん剤「イクスタンジ」や骨粗鬆症治療薬「イベニティ」などが売り上げを伸ばし、営業利益は7.8%の増益となる見通し。アジアで販売している3製品を第一三共に売却したことも業績を押し上げる要因となりました。
営業益1000億円 第一三共4期ぶり、エーザイ9期ぶり
第一三共は、国内外で抗凝固薬「リクシアナ」が好調に推移しており、売上高は4.3%の増収を予想。提携先の英アストラゼネカと抗がん剤トラスツズマブ デルクステカンの開発費をシェアしたこともあり、営業利益は61.3%増の1350億円となる見込みです。抗がん剤「レンビマ」が伸びるエーザイも営業利益を27.7%増の1100億円を予想。営業利益が1000億円を超えるのは、第一三共が4期ぶり、エーザイは9期ぶりです。
一方、塩野義製薬は抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」の落ち込みで業績予想を下方修正し、2.4%の減収予想に転じました。田辺三菱製薬は、多発性硬化症治療薬「ジレニア」のロイヤリティ支払いをめぐるスイス・ノバルティスとの係争の影響で、11.5%の減収、77.1%の営業減益を予想。キョーリン製薬ホールディングスは、抗アレルギー薬「デザレックス」の供給再開が遅れたことで、期初の増収増益予想から一転して27.6%の大幅な営業減益に沈む見通しです。
増税改定の国内 増収・減収半々
国内医療用医薬品の売上高は、通期予想を開示している8社の合計で2.8%の減少となる見通し。10月に行われた消費増税に伴う薬価改定も影響します。
エーザイは子会社エルメッドエーザイを売却し、後発品事業の売り上げがなくなったことで10.4%の大幅減収。喘息・COPD治療薬「シムビコート」などの販売提携が終了したアステラス製薬も9.4%の減収を見込みます。塩野義製薬はADHD治療薬「インチュニブ」が大きく伸びる一方、第3四半期までの累計で前年同期比96.2%減となっているゾフルーザの落ち込みで0.3%の増収にとどまる見通しです。
国内の通期予想を開示している8社の中で最も増収幅が大きいのは、6.0%増を予想する大日本住友製薬。糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」が伸びるほか、ノバルティスファーマとの販売提携でDPP-4阻害薬とその配合剤である「エクア」「エクメット」が売り上げに加わり、国内事業の減収に歯止めがかかる見込みです。
リクシアナなどの主力品が好調な第一三共は0.9%の増収を予想。ゾフルーザの販売が減少した影響により、抗インフルエンザウイルス薬「イナビル」が第3四半期累計で前年同期比158%増で推移しているほか、オーソライズド・ジェネリックも売り上げ増に貢献しています。
(前田雄樹)