国内主要製薬会社12社の2021年度の海外売上収益比率は、前年度から2.1ポイント上昇して64.2%となりました。武田薬品工業とアステラス製薬が80%を超え、自社創製の主力品が伸びるエーザイが6割、協和キリンが5割を突破。グローバル製品の好調な販売が業績を支えています。
アステラス 海外で初の1兆円
AnswersNewsが国内の主要製薬会社12社の業績を集計したところ、2021年度(21年12月期または22年3月期)の海外売上収益は12社の合計で前年度から14.3%増加しました。主力製品の販売が好調だった上、円安も追い風となり、12社中10社が2桁増収。海外売上収益比率は前年度から2.1ポイント上昇して64.2%に達しました。
海外売上収益が最も大きかったのは、2兆9100億円(前年度比10.3%増)を売り上げた武田薬品工業。帝人への糖尿病治療薬4製品の売却益1330億円を計上したことで国内の売上収益が膨らみ、売上収益全体に占める海外の比率は前年度比1.0ポイント減の81.5%となったものの、海外売上収益自体は前年度から2700億円ほど増加しました。主力の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」などが好調でした。
武田に次いで海外売上収益が大きかったアステラス製薬は、海外で前年度比6.9%増の1兆374億円を売り上げ、海外売上収益が初めて1兆円を突破。前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の販売が大きく伸び、海外売上収益比率は前年度から2.3ポイント上昇して80.0%に到達しました。
エーザイ8.6pt増、協和キリン6.3pt増
前年度から海外売上収益を2割以上増やしたのは、エーザイ(34.1%増)、中外製薬(29.7%増)、塩野義製薬(27.5%増)、協和キリン(25.4%増)、小野薬品工業(23.9%増)、第一三共(21.3%増)の6社。エーザイは主力の抗がん剤「レンビマ」が伸び、海外売上収益比率は前年度から8.6ポイント上昇しました。海外売上収益比率が6.3ポイント増となった協和キリンも低リン血症治療薬「クリースビータ」が好調で、4.9ポイント増の第一三共も抗がん剤「エンハーツ」の売り上げが倍増しました。
塩野義は抗HIV薬関連の、小野は抗PD-1抗体関連のロイヤリティ収入が大きく増加。中外は、自社創製の血友病治療薬「ヘムライブラ」のスイス・ロシュ向けの輸出が拡大しました。
イクスタンジとエンティビオ 5000億円突破
各社の海外事業を支えるグローバル製品は、円安の影響もあって好調でした。
武田のエンティビオは前年度比21.5%増の5218億円、アステラスのイクスタンジは16.6%増の5343億円を販売。そろって売上収益5000億円を突破しました。武田は遺伝性血管性浮腫治療薬「タクザイロ」が1000億円を超え、アステラスは新製品の抗がん剤「ゾスパタ」(42.9%増の341億円)や同「パドセブ」(69.5%増の217億円)も好調です。
エーザイのレンビマは、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(米メルク)との併用療法の広がりを追い風に前年度比43.6%増となる1923億円を販売。第一三共は、抗凝固薬「リクシアナ」が23.9%増の2056億円と初めて2000億円を突破しました。
中外は、ロシュを通じてグローバル展開している3つの自社創製品が引き続き好調です。ロシュの21年の決算によると、ヘムライブラは41%増の30億2200万スイスフラン(21年の平均レート換算で3626億円)、関節リウマチなどの治療薬「アクテムラ」は27%増の35億6200万スイスフラン(4274億円)、抗がん剤「アレセンサ」は18%増の13億5600万スイスフラン(1627億円)を販売。ヘムライブラのロシュ向け輸出は1000億円を超えました。大塚ホールディングス(HD)も、グローバル4製品と位置付ける▽抗精神病薬「エビリファイメンテナ」▽同「レキサルティ」▽利尿薬「サムスカ/ジンアーク」▽抗がん剤「ロンサーフ」――がそろって2桁増収。4製品の売上収益は計4898億円となり、前年度から14.0%増加しました。
各社のグローバル製品は今年度も好調を維持する見込みで、エンティビオは26.3%増の6590億円、イクスタンジは20.3%増の6425億円を予想。レンビマは13.3%増の2180億円を見込んでいます。
協和キリンのクリースビータが今年度1152億円(34.7%増)とブロックバスターとなる見通し。エンハーツも1284億円(96.4%増)と1000億円突破を予想しています。